46 / 201
episodo:6
#2
しおりを挟む
***
休憩時間間際の更衣室
「なになに、寝不足?」
朝からの工場の巡回を済ませ、
会社の更衣室で着替えていると、
開発室で新しい商品の試作品を作っていたであろう……優も着替えるためにやって来た。
私が眠そうに大きなアクビをしたのを見て。
意味ありげにうっすらと笑みを浮かべて、
顔を覗き込むようにして声を掛けてきた。
「……え、うん。ちょっとね…」
***
今朝は、
あの後…
海翔さんの部屋でシャワーを浴びて。
戻ると…
海翔さんが朝食の用意をしてくれていた。
簡単なものしか作れないとか言いながら、
プレーンオムレツと野菜たっぷりのスープを作ってくれた。
料理なんてしないっていうより、
料理なんてできないって思っていたのに……。
テーブルに並べられたものは、
どれも美味しそうな見映えだけじゃなくって。
とっても美味しかったことに、
軽くショックを受けてしまった。
神様って不公平だよね?
『天は二物を与えず』なんてよく言うけれど、
海翔さんには、二物も三物も与えてるんだから……。
それに比べ、
私はというと…
せめて片付けぐらいはって、思っていたのに。
仕事に行くのが遅くなるからしなくていい……って言われてしまい。
結局なんにもさせては貰えなかった。
海翔さんは、
気にするな……って言ってくれたんだけど。
海翔さんに与えて貰うばっかりじゃなくって…。
海翔さんのために少しでも、何かをしてあげたいって思っていたのに……。
今夜は、何か作って持ってってあげようかなぁ?
美味しいって言ってくれるかな?
どうしようかなぁ?
やっぱり、やめとこーかなぁ?
海翔さんとアパートの前で別れてから、
そんなことばっかりが頭の中を行ったり来たりを繰り返している。
***
「ねぇ、芽依。
ここ、例の獣医さんにつけられたの?」
「……え?」
「だ・か・ら、こーこ。
キスマークのことっ!」
「へ?」
私は、
朝のことを色々考えていて、
優がニヤニヤしながら言ってきた言葉にすぐには気づけなくて。
もう一度、
聞き返された言葉でやっと理解することになり、
驚いて変な声をあげてしまった。
そんな私に、
とどめをさすように、
ここ、ここって……人差し指で、
緩く髪を結っている近くのうなじをツン…とつつかれて。
またまた驚いてしまった私は、
びくん…と肩が跳ね上がってしまった。
「びっくりしたぁ!
み、見えてたんだね…」
うわぁ…最悪。
主任とかにも見られちゃってたかも……。
「うん、だって、幾つもついてるし。すごいね?こっちが恥ずかしいじゃんっ。もう!」
何やら恥ずかしそうに、
身体をクネクネさせながら、
頬を赤く染めた優にバシッと背中を叩かれてしまったけど……。
イッター!
って……痛がってる場合じゃないんだってばぁ!!
「うそっ?!そんなについてんの?」
「うっそー。1つだけだよっ!」
驚いて聞き返した私に、
面白そうに笑いながら…
悪びれもせずに言ってくる優に、
すかさず冷たい視線を送っておいた。
優には、全然…こたえてないみたいだったけど……。
休憩時間間際の更衣室
「なになに、寝不足?」
朝からの工場の巡回を済ませ、
会社の更衣室で着替えていると、
開発室で新しい商品の試作品を作っていたであろう……優も着替えるためにやって来た。
私が眠そうに大きなアクビをしたのを見て。
意味ありげにうっすらと笑みを浮かべて、
顔を覗き込むようにして声を掛けてきた。
「……え、うん。ちょっとね…」
***
今朝は、
あの後…
海翔さんの部屋でシャワーを浴びて。
戻ると…
海翔さんが朝食の用意をしてくれていた。
簡単なものしか作れないとか言いながら、
プレーンオムレツと野菜たっぷりのスープを作ってくれた。
料理なんてしないっていうより、
料理なんてできないって思っていたのに……。
テーブルに並べられたものは、
どれも美味しそうな見映えだけじゃなくって。
とっても美味しかったことに、
軽くショックを受けてしまった。
神様って不公平だよね?
『天は二物を与えず』なんてよく言うけれど、
海翔さんには、二物も三物も与えてるんだから……。
それに比べ、
私はというと…
せめて片付けぐらいはって、思っていたのに。
仕事に行くのが遅くなるからしなくていい……って言われてしまい。
結局なんにもさせては貰えなかった。
海翔さんは、
気にするな……って言ってくれたんだけど。
海翔さんに与えて貰うばっかりじゃなくって…。
海翔さんのために少しでも、何かをしてあげたいって思っていたのに……。
今夜は、何か作って持ってってあげようかなぁ?
美味しいって言ってくれるかな?
どうしようかなぁ?
やっぱり、やめとこーかなぁ?
海翔さんとアパートの前で別れてから、
そんなことばっかりが頭の中を行ったり来たりを繰り返している。
***
「ねぇ、芽依。
ここ、例の獣医さんにつけられたの?」
「……え?」
「だ・か・ら、こーこ。
キスマークのことっ!」
「へ?」
私は、
朝のことを色々考えていて、
優がニヤニヤしながら言ってきた言葉にすぐには気づけなくて。
もう一度、
聞き返された言葉でやっと理解することになり、
驚いて変な声をあげてしまった。
そんな私に、
とどめをさすように、
ここ、ここって……人差し指で、
緩く髪を結っている近くのうなじをツン…とつつかれて。
またまた驚いてしまった私は、
びくん…と肩が跳ね上がってしまった。
「びっくりしたぁ!
み、見えてたんだね…」
うわぁ…最悪。
主任とかにも見られちゃってたかも……。
「うん、だって、幾つもついてるし。すごいね?こっちが恥ずかしいじゃんっ。もう!」
何やら恥ずかしそうに、
身体をクネクネさせながら、
頬を赤く染めた優にバシッと背中を叩かれてしまったけど……。
イッター!
って……痛がってる場合じゃないんだってばぁ!!
「うそっ?!そんなについてんの?」
「うっそー。1つだけだよっ!」
驚いて聞き返した私に、
面白そうに笑いながら…
悪びれもせずに言ってくる優に、
すかさず冷たい視線を送っておいた。
優には、全然…こたえてないみたいだったけど……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
789
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる