いじわるドクター

羽村美海

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episodo:7

#11

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「……だ…だい…じょぶ…だよ」


余りの至近距離…


海翔さんの整いすぎてる綺麗な顔が、


何もかも見透かされてしまいそうな綺麗に澄んだ濃いブラウンの瞳が


私の全てを捕らえたまま、魅了されたままで動けない。



ーー『大丈夫だよ』


なんて言っておいて


全然、大丈夫じゃない……。



極度の緊張状態によるプチ脳内パニック。



言葉で簡単に表すとそんな状態。



そんなことを知る筈もない海翔さん。



「芽依?」


「/////」



尚も、距離を縮めてくる。



そんなに近づかれてしまったら、


茹でダコ状態になってしまってる顔が見えちゃうよ……。



しかも、


息の掛かりそうな程の、


超がいくつもつきそうな程の…至近距離。



もう、絶対にバレちゃってるよ。



さりげなく、


ゆっくり少しずつ…


後ろに後ずさっていると



「芽依、逃げることないだろ。

俺のことが怖いのか?」



思いもよらない言葉が……


海翔さんから私に降ってきた。



切なく身体に響いてくるような、とても寂しそうな声。



そこで、


やっと…


海翔さんに包み込むようにして抱きしめられてることに気づいた。



「海翔さんのこと怖いなんて思わないよ。恥ずかしかっただけだよ」


「……そうか。だったらいいんだ」



私を包むように抱きしめている腕に、


ギュッと力を込めて抱きしめながら…


ふう…っと安心したように静かに息を吐く海翔さん。



あったかい海翔さんの腕の中から、


海翔さんの表情を伺うべく…



「海翔さん」


「ん?」



呼べば、


真っ直ぐに私の顔を覗き込んでくる。



いつも向けてくれる優しい眼差しに、


ホッ…と安心することができた。



そんなことなんかで不安にさせたくないから。



……ねぇ、海翔さん。


自惚れても良いんだよね?



そんなに、心配になるくらい、


私のことを好きになってくれてるって。



あぁ、ダメだ…。



嬉しすぎて、泣いちゃいそうだよ……。



胸のどこか奥のほうから、


想いが溢れて止められそうにない。



「好き」


「あぁ、俺も…」



いつも、そうやって、


"好き"


って、滅多に言ってくれない海翔さんだけど。



"言ってくれない"んじゃなくて、


きっと、言えないんだよね?



でも、


そんな不器用な海翔さんのことが…



「大好きって言っても足りないくらい、好き」


「芽依?」



それだけ告げて、


長身を屈めてる海翔さんの形のいい唇に


ソッ…と軽く自分の唇を重ね合わせた。



海翔さんへの想いを添えて……。



つま先立ちのバランスの悪い私の身体を支えてくれた海翔さんは、


さっきよりも強く抱きしめてくれた。



私の想いに応えるようにして……。




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