嘘つき同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。【改稿版】

羽村 美海

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#3 まさかの延長戦

#2

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 無性に腹が立ってきて、何かを返したくとも、あの夜のことを言われてしまうと、その時の生々しいあれやこれやの光景が走馬灯のように蘇ってくる。腹立たしさよりも羞恥の方が勝ってしまう。

 真っ赤になって身を竦めていることしかできない有様だ。

 そんな私のことを窪塚は、満足そうに見下ろしながらに、私のちょうど右側の鎖骨辺りでシュシュによって束ねている、胸元までの長さの癖のない黒い髪に手をかけた。

 そうして、シュシュをスルリと髪から抜き取り、一房だけ手に取った窪塚がゆっくりと語り始めた声が私の耳に熱い吐息と共に流れ込んでくる。

「嫌いな俺の腕の中で、この、艶やかで絹糸みたいに綺麗な髪を振り乱して、可愛い声で喘ぎながら、乱れに乱れて。嫌いな俺に縋るようにしてギュッてしがみついてくる、その反応のどれもこれもが、普段の高梨からは想像もつかないくらい可愛い過ぎたもんだからさ。それ思い出しただけで、結構ヤバい。もう、俺、癖になりそうだわ」

 まさかそんな言葉が窪塚から返ってくるなんて夢にも思わなかった。驚きつつもなんとか放った声にも。

「////ーーこっ、この変態ッ!」

「そんな口をきけるのも今のうちだから、なんとでもいえよ。それに、ついこの前、可愛い痴態見たせいか、何か言われたところで、なんとも思わねーわ」

 私の髪を指に絡めて弄ぶ窪塚が心底愉しそうな表情で面白おかしく、羞恥に悶える私のことを揶揄うようなことを言ってくる。

 もう呆れ果てて開いた口が塞がらない。とはいえ、腹は立つ。

 チャラいと思ってたのを改めるつもりだったけど、あんなの撤回する。

 ーーコイツはチャラいどころか、どうしようもない変態クズ男だッ!

 時間差で、後から後から怒りが込み上げてくる。わなわなと怒りに打ち震え始めた拳を握りしめ、胸の内で窪塚に盛大な悪態をついていたその時。

「確かに。そういう意味では、変態なのかもなぁ。でも、俺のことをそういう風にしたのは高梨なんだからさ、責任もって相手してくんねーと。てことで、今から頼むわ。俺、オペの後はどうにも気持ちが昂ぶってヤバいんだわ」

 窪塚の口から、これまた信じられない言葉が飛び出してきたために、羞恥と怒りで真っ赤に色づいていたはずの私の顔が見る間に青ざめてゆく。

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