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#5 予期せぬ事態
#1
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久々のデートということで、張り切っていた彩の願いが届いたのか、今日は急患もなく、就業時間を小一時間ほど過ぎたものの比較的早い時間に業務を終えることができた。
そうして午後七時を過ぎた頃。
仕事からあがって彩と共に更衣室で白衣から私服に着替えていた時のことだ。
「ちょっと。鈴ってば、せっかく彼氏ができたんだからさぁ。もうちょっとメイクに気を配るとかできないわけ?」
「そんなこと言われても……仕方ないでしょ。毎晩毎晩テキスト見ながらいつの間にか寝落ちしてて、気づいたら出勤する時間まであと十分もないっていうのが最近のルーティーンで。そんな暇ないんだから」
「勉強も大事だけどさ。うちらまだ二十六のうら若き乙女なんだから。もっとこう、仕事も恋愛もエンジョイしなきゃもったいないってッ!」
「うら若き乙女……って。それ、いつの時代の話しよ」
「いーからいーから。ほら、ちょっとこっち来て座ってみなって。やったげるから」
「えー、ヤダッ! 彩は可愛いから似合ってるけど、私なんかがそんなもん塗りたくってたら、キモいだけだってばッ」
「なに言ってんのよ? 鈴は元がいいんだから、もったいないって言ってるの。すぐ済むから、ほら、じっとしてなさい」
「……分かったわよ」
既に着替えも終わり、これからのデートに備えて入念にメイク直しを始めた彩が、女子力の乏しい私のほぼほぼスッピンに近い顔をマジマジと眺めてダメ出ししてきたことにより、何故か帰宅するだけの私までメイク直しさせられることになってしまっている。
そうして、女子力の高い彩の手にかかれば、すっぴん同然だった私は、五分もしないうち、これは誰ですか? ってくらいの変貌を遂げていた。
「……彩、ちょっとこれ、やり過ぎなんじゃない?」
「それは、鈴がいっつも面倒だからって、オールインワンのクッションファンデと色つきリップで済ませて、マスカラもつけないからそう見えるだけしょ?」
「……そうかなぁ。なんか変じゃない?」
「なーにいってんのよ。メチャクチャ可愛いから大丈夫だってば。それに、今日は服も、前に私が選んであげたティアード袖の可愛いチュニック着てるんだからバッチリじゃん。もっと自信持ちなさいって。心配なら、今から窪塚に写真送って感想訊いてみる?」
「……いえ、結構です」
「もう、そんな照れてないで、写真送ったついでに一緒に帰ればいいのに」
「……今日は疲れてるからヤダ。それに照れてないからッ」
「はいはい、分かった分かった。まぁ、鈴のそういう素直じゃないところも可愛いんだけどさ。たまには素直になってあげたら、窪塚メチャクチャ喜ぶと思うんだけどなぁ……。あいつ、いっつもポーカーフェイス決めてるけど、鈴のことになると人が変わっちゃうみたいだし」
「……どういう意味よ?」
「あっ、ヤッバ、もうこんな時間。いっくん待たせちゃう。鈴、ごめん。先帰るね」
「……あぁ、うん、気をつけてね」
「ありがと、じゃあね~」
彩とのやりとりの中で、窪塚のことで何やら気になる言葉が飛び出してきたものの、気づけばいつの間にかデートの待ち合わせの時間が迫っていたために、彩が慌ただしく帰り支度を始めてしまったことで、結局は聞けず終いとなってしまい。
すっきりしないながらも、窪塚と表面上のカレカノになってからというもの、なんでもかんでも恋愛ごとに結びつけようとする彩の言動に、連日のように付き合わされていたもんだから、少々飽き飽きしていたこともあり、特に気にとめることもなく、彩がいなくなってすぐに私も更衣室を後にしたのだった。
そうして午後七時を過ぎた頃。
仕事からあがって彩と共に更衣室で白衣から私服に着替えていた時のことだ。
「ちょっと。鈴ってば、せっかく彼氏ができたんだからさぁ。もうちょっとメイクに気を配るとかできないわけ?」
「そんなこと言われても……仕方ないでしょ。毎晩毎晩テキスト見ながらいつの間にか寝落ちしてて、気づいたら出勤する時間まであと十分もないっていうのが最近のルーティーンで。そんな暇ないんだから」
「勉強も大事だけどさ。うちらまだ二十六のうら若き乙女なんだから。もっとこう、仕事も恋愛もエンジョイしなきゃもったいないってッ!」
「うら若き乙女……って。それ、いつの時代の話しよ」
「いーからいーから。ほら、ちょっとこっち来て座ってみなって。やったげるから」
「えー、ヤダッ! 彩は可愛いから似合ってるけど、私なんかがそんなもん塗りたくってたら、キモいだけだってばッ」
「なに言ってんのよ? 鈴は元がいいんだから、もったいないって言ってるの。すぐ済むから、ほら、じっとしてなさい」
「……分かったわよ」
既に着替えも終わり、これからのデートに備えて入念にメイク直しを始めた彩が、女子力の乏しい私のほぼほぼスッピンに近い顔をマジマジと眺めてダメ出ししてきたことにより、何故か帰宅するだけの私までメイク直しさせられることになってしまっている。
そうして、女子力の高い彩の手にかかれば、すっぴん同然だった私は、五分もしないうち、これは誰ですか? ってくらいの変貌を遂げていた。
「……彩、ちょっとこれ、やり過ぎなんじゃない?」
「それは、鈴がいっつも面倒だからって、オールインワンのクッションファンデと色つきリップで済ませて、マスカラもつけないからそう見えるだけしょ?」
「……そうかなぁ。なんか変じゃない?」
「なーにいってんのよ。メチャクチャ可愛いから大丈夫だってば。それに、今日は服も、前に私が選んであげたティアード袖の可愛いチュニック着てるんだからバッチリじゃん。もっと自信持ちなさいって。心配なら、今から窪塚に写真送って感想訊いてみる?」
「……いえ、結構です」
「もう、そんな照れてないで、写真送ったついでに一緒に帰ればいいのに」
「……今日は疲れてるからヤダ。それに照れてないからッ」
「はいはい、分かった分かった。まぁ、鈴のそういう素直じゃないところも可愛いんだけどさ。たまには素直になってあげたら、窪塚メチャクチャ喜ぶと思うんだけどなぁ……。あいつ、いっつもポーカーフェイス決めてるけど、鈴のことになると人が変わっちゃうみたいだし」
「……どういう意味よ?」
「あっ、ヤッバ、もうこんな時間。いっくん待たせちゃう。鈴、ごめん。先帰るね」
「……あぁ、うん、気をつけてね」
「ありがと、じゃあね~」
彩とのやりとりの中で、窪塚のことで何やら気になる言葉が飛び出してきたものの、気づけばいつの間にかデートの待ち合わせの時間が迫っていたために、彩が慌ただしく帰り支度を始めてしまったことで、結局は聞けず終いとなってしまい。
すっきりしないながらも、窪塚と表面上のカレカノになってからというもの、なんでもかんでも恋愛ごとに結びつけようとする彩の言動に、連日のように付き合わされていたもんだから、少々飽き飽きしていたこともあり、特に気にとめることもなく、彩がいなくなってすぐに私も更衣室を後にしたのだった。
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