嘘つき同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。【改稿版】

羽村 美海

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#9 純愛ラプソディ。

#7

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 そのことがきっかけとなって、私への想いは伏せたままで。

『高梨が俺の彼女になってくれたら、ビッチなんてこと絶対に言わせたりしない』

『幼馴染みを吹っ切るために付き合って欲しい』

一か八か、私にそう持ちかけたらしいのだが。

 酔っていたとはいえ、その頃窪塚のことを敵視していた私は素直には応じず、いつもの押し問答を繰り広げていたらしい。

 そのうち、私のことを腕に包み込んでいた窪塚は、童貞だったこともあってか、私の身体とピッタリと密着していたことで思いがけず欲情してしまい。

 始めこそ驚いていた私は、何を思ったのか、いきなり、

『……これって、窪塚が私のことを女として見てくれてるってことだよね?』

そんなことを訊いてきたらしい。

『////……まっ、まあな。そうでなきゃ付き合おうなんて言わねーよ』

『だったらいいよ。私もたまには羽目外したいし。慰めてあげる』

 私の問いかけに躊躇いつつも応えた窪塚に対して、信じられないことを口にした私の言葉に、どうしてこんなことになっているのかの状況が掴めず動揺し、ジリジリと後退りする窪塚に向けて。

『何逃げてんのよ? 付き合わないかって、アンタが言ってきたんでしょうが。男だったら、怖じ気づいてないでさっさとやんなさいよッ!』

 またまた私は信じられないことを口にして、盛大な啖呵を切り、そのまま背後のベッドに、あろうことか、窪塚のことを押し倒してしまったというのだ。

「ーーええッ!? うっそ。私が窪塚のことを押し倒しちゃったってことは、ほとんど私のせいっていうか、全部私のやらかしが原因だったってことじゃないッ」

「まぁ、そういうことになるな」

「////ーーヤダッ。信じらんないッ」

 そりゃあ、童貞だった窪塚からすると、そんなことを言う私が、まさか処女だなんて思わないだろうし。

 私にしてみれば、言い訳にはなってしまうが、ビッチなんて言われているにもかかわらず、実際はキスの経験しかなく、処女も大事にしてきた訳でもなかったので、おそらく、『脱処女』を果たすのにいいチャンスだとでも考えてしまったに違いない。

 事に至るまでの自分の言動のアレコレに得心できはしたが。

 恥ずかしいやら、呆れるやらで、もう大パニックだ。

 窪塚の広い胸にこれでもかと顔をぐいぐいくっつけて、身悶えることしかできないでいる。

 いくら酔ってたからって、何ヤッちゃってんの私。

 ーーもう嫌だ。今すぐ消え去ってしまいたい。

 そうして再開された直後に、聞かされたのは、いよいよ事が及んでからのことだ。

 私に組み敷かれてしまった窪塚は、酷くショックを受けていたらしい。

 勿論それは、元彼である藤堂のことを引き摺っているとは思っていたが、まさか、そのことを吹っ切るために、嫌いであるはずの自分と事に及ぼうとしている私に対してで。

 そんな窪塚の心情は、最早ヤケクソ状態。

 そんなに藤堂のことを吹っ切りたいなら、俺が忘れさせてやるよ。

 明日になって、酔いが醒めたときに、猛烈に後悔したって知らないからな。

 童貞とはいえ、幾度となく途中までの経験もあり、窪塚のことを押し倒した私の身体を瞬時に組み敷いて、スムーズに事は運んだらしい。

 けれど、私が途中で酷く痛がった際も心配した窪塚のかける言葉にも。

『だっ、大丈夫だから。早くして』

 一貫して、急かすように、そう応えていたらしかった。

 それと童貞だったせいか、はたまたお酒のせいか、意外とあっさり事は終了してしまったらしいのだが。

 その際に、私が放ったこの言葉にも、相当なショックを受けてしまったらしかった。

『なんだ。思ってたより早かったね』

 そうして目覚めた際にも、私は酷いことを口走ってしまっていたらしいのだ。

『ギャッ!? どうして窪塚がこんなとこにいるのよ。てか、酔った私のことこんなとこに連れ込むなんてサイテーッ!』

 窪塚は、まったくといっていいほど前日のアレコレを覚えていなかった私の態度に、殊の外ショックを受けたらしいのだが。

 あたかもそこへ追い打ちでもかけるようにして、事後に耳にしてしまった、私の『なんだ。思ってたより早かったね』発言が鮮明に脳裏に蘇ってきたのだという。

 その発言に対して、元彼である藤堂と比較されたと思い込み、いくらお酒が入っていたとはいえ、プライドをことごとく打ち砕かれてしまったことで。

 そのリベンジをどうしても果たしたい。

 そういう想いが心の中に蠢いていたせいか、あの、セフレ発言へと繋がったらしいのだ。

 そこまで聞き終えた私が、いくら酔っていたとはいえ、窪塚にずいぶんと酷い仕打ちをしていたことを猛省し。

「……く、窪塚。酔って色々とやらかしちゃったうえに、酷いこと言っちゃって……本当に、なんて言ったらいいか。兎に角、ごめんなさい」

  これ以上に小さくなりようがないというくらいに窪塚の腕の中で身体を縮こめつつ兎にも角にも私は謝るしかなった。

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