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#9 純愛ラプソディ。
#8
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窪塚の腕の中で、これでもかと小さく身を竦ませて猛省し、謝罪の言葉を繰り返すことしかできないでいる。
そんな有様だった私の背中を窪塚はそっと優しく撫で続けてくれていた。
そこへ、窪塚の落ち着いた低い声音が身体を通してあたたかなぬくもりと一緒にじんわりと伝わってくる。
「まぁ、確かに。長年片想いしてきた相手に言われた言葉は、どんなモノであろうと特別だからな。相当ショックだったのは確かだ」
ーーそりゃ、そうだよね。
私だったら、そんなこと言われちゃったら、立ち直れないもん。
「ホントに……ごめんなさい」
私は尚も小さくなって、謝罪の言葉を呪文のように唱えることしかできないでいる。
すると今度は、さっきまでの嬉しそうだったものとは違って、やけに真面目な口調で話し始めた窪塚の言葉に、まだ他にも何かあるのだと悟った私は、そこでようやく顔を上げることとなった。
「否、俺は別に謝って欲しくて話した訳じゃないんだ。だから、いつまでもそんなに落ち込まなくていいからさ、俺の話を最後まで聞いてくれないか?」
「……わかった」
窪塚のことを真っ直ぐに見つめ返しつつ答えてみせた私の言葉を皮切りに窪塚の話は再開されたのだった。
「いくらショックだったからって、いくら兄貴の結婚式があったからって、あんな場所に鈴を一人置き去りにして、こんなにも拗らせたのは俺のせいだ。
俺が意気地がなかったばっかりに、嘘を重ねて、嫌な思いさせてしまって本当に悪かった。それに、親父さんとの約束にしたって、いくら見合いを回避するためだったとはいえ、鈴の意見無視して……本当に悪かった」
けれどもそれは、窪塚からの謝罪の言葉だったので、私は即座に異議申し立て、再び謝罪を述べたことにより、いつもの押し問答が繰り広げられることとなった。
「何言ってんのよ? 元々、私が招いちゃったことじゃない。ずっと好きだった人にそんなこと言われちゃったら、私だったらショックで立ち直れないわよ。父親のことだって私のためだったんだし。こっちこそ変なことに巻き込んじゃって、本当にごめんなさい」
「だからそれは、鈴のせいじゃない。俺が悪かったって言ってんじゃん」
「違うッ! ずっとずっと窪塚のこと好きなことにも気づかないでいた私のせいだってば。挙げ句、この歳で処女だって思われるのが嫌だったからって、あんなこと言ってたなんて。本当にごめんなさい」
その押し問答がどこまでも続くのかと思いきや……。
いつもの如く、酔ったときもそうだったようだけれど、言わなくてもいいような、余計な一言を喋ってしまうクセがあるらしい私の『処女だった』発言によって、風向きが変わることと相成ってしまい。
「へぇ、処女だったんだなぁ。てことは、俺と一緒じゃん」
途端に、喜色満面でニヤついた顔の窪塚が嬉しそうな声音で、そんなことを言ってきたもんだから。
「////……そ、そうよ。あの夜まで、キス以上の経験なんてない、正真正銘の処女だったわよ。笑ってもいいわよ? 笑われても仕方ないこと散々やらかしちゃったんだからッ」
たちまち、カアッと顔どころか全身真っ赤に紅潮させつつも、口では相も変わらず可愛げのないことを放つという、安定の可愛げのなさだ。
けれども窪塚は、そんな私の背中をやっぱり宥めるように優しく撫でつつも、切れ長の双眸を眇めた、殊の外優しい眼差しで、私のことを愛おしそうに見つめてくる。
「バーカ。笑うわけねーだろ? 知らなかったとは言え、あんなところで鈴の初めてもらったのは悪かったと思うけど。嬉しくて嬉しくてどうしようもねーよ。ずっとずっと好きで好きでどうしようもなかった鈴のことを、念願叶ってようやく独り占めできたってことなんだからさぁ。これ以上に嬉しいことはねーよ」
そうしてあの時のことを詫びてきたあとで、なんの臆面もなく、聞かされるこっちが面映ゆくなってしまうことをしれしれっと言ってのけるのだ。
ーーもう、なんなのよ。
今日は、逢って早々、開口一番から、『すっげー逢いたかった』とか、『好きで好きでどうしようもない』とか、甘いことばっかり言ってきて、メチャクチャ嬉しいけど、言われなさ過ぎて、どう反応したらいいかわからないんですけど。
窪塚から立て続けにお見舞いされる情熱的な甘い言葉によって、これでもかと羞恥を煽られてしまい。
私は、いつにも増して可愛げのない言葉を炸裂させてしまうのだった。
「////ーーもーッ! ちょっと、窪塚。アンタ、何回好きだって言ったら気が済むのよッ! 恥ずかしいでしょーがッ! それに、やっぱりバカって言うしッ」
「だってさ、恥じらって突っかかってくる鈴のことが可愛くて可愛くて堪んねーし。もう好きで好きでどうしようもねーんだからさ、しょーがねーじゃん。それに、口の悪い俺のことも好きなんだろ?」
「////ーーばっ、ばば、バッカじゃないのッ!」
「だからさ、そうやってムキになって、すーぐ真っ赤になるとことかマジで可愛いんだって」
「////ーーそんなジッと見ないでってばーッ! もー! ヤダーーッ!」
可愛げのないはずの私のことを窪塚は、尚も愛おしそうに眇めた、熱くて甘い眼差しでマジマジと見つめつつ、私の羞恥をさらに煽ろうとしてか、情事の時にだけ発動させるはずの意地悪なドS発言まで繰り出してきた。
それに対抗して、私も負けじと、可愛げのない言葉で応戦をしていたのだが。
おそらく、端から見れば、ただのバカップルにしか見えないだろう。
どれくらいの間、そうやってイチャついていただろうか。
とうとう本気で怒り始めた私のことをやんわりと宥めにかかった窪塚の次の言葉によって、わーわーと騒がしくもお花畑全開で、幸せピンク一色と化していた部屋の甘やかな雰囲気が通常モードへと徐々に切り替わっていった。
「わかったわかった。じゃれるのはここまでにして。正式に交際を申し込む前に、一つだけ、確かめておきたいことがあるんだ」
「……」
そうして、急に部屋の雰囲気同様に取って代わった、怖いくらいに真剣な表情と眼差しとを窪塚から向けられてしまった私は、たちまち緊張感に襲われてゴクリと喉を鳴らした直後に、思いもしなかった話を聞かされることとなる。
そんな有様だった私の背中を窪塚はそっと優しく撫で続けてくれていた。
そこへ、窪塚の落ち着いた低い声音が身体を通してあたたかなぬくもりと一緒にじんわりと伝わってくる。
「まぁ、確かに。長年片想いしてきた相手に言われた言葉は、どんなモノであろうと特別だからな。相当ショックだったのは確かだ」
ーーそりゃ、そうだよね。
私だったら、そんなこと言われちゃったら、立ち直れないもん。
「ホントに……ごめんなさい」
私は尚も小さくなって、謝罪の言葉を呪文のように唱えることしかできないでいる。
すると今度は、さっきまでの嬉しそうだったものとは違って、やけに真面目な口調で話し始めた窪塚の言葉に、まだ他にも何かあるのだと悟った私は、そこでようやく顔を上げることとなった。
「否、俺は別に謝って欲しくて話した訳じゃないんだ。だから、いつまでもそんなに落ち込まなくていいからさ、俺の話を最後まで聞いてくれないか?」
「……わかった」
窪塚のことを真っ直ぐに見つめ返しつつ答えてみせた私の言葉を皮切りに窪塚の話は再開されたのだった。
「いくらショックだったからって、いくら兄貴の結婚式があったからって、あんな場所に鈴を一人置き去りにして、こんなにも拗らせたのは俺のせいだ。
俺が意気地がなかったばっかりに、嘘を重ねて、嫌な思いさせてしまって本当に悪かった。それに、親父さんとの約束にしたって、いくら見合いを回避するためだったとはいえ、鈴の意見無視して……本当に悪かった」
けれどもそれは、窪塚からの謝罪の言葉だったので、私は即座に異議申し立て、再び謝罪を述べたことにより、いつもの押し問答が繰り広げられることとなった。
「何言ってんのよ? 元々、私が招いちゃったことじゃない。ずっと好きだった人にそんなこと言われちゃったら、私だったらショックで立ち直れないわよ。父親のことだって私のためだったんだし。こっちこそ変なことに巻き込んじゃって、本当にごめんなさい」
「だからそれは、鈴のせいじゃない。俺が悪かったって言ってんじゃん」
「違うッ! ずっとずっと窪塚のこと好きなことにも気づかないでいた私のせいだってば。挙げ句、この歳で処女だって思われるのが嫌だったからって、あんなこと言ってたなんて。本当にごめんなさい」
その押し問答がどこまでも続くのかと思いきや……。
いつもの如く、酔ったときもそうだったようだけれど、言わなくてもいいような、余計な一言を喋ってしまうクセがあるらしい私の『処女だった』発言によって、風向きが変わることと相成ってしまい。
「へぇ、処女だったんだなぁ。てことは、俺と一緒じゃん」
途端に、喜色満面でニヤついた顔の窪塚が嬉しそうな声音で、そんなことを言ってきたもんだから。
「////……そ、そうよ。あの夜まで、キス以上の経験なんてない、正真正銘の処女だったわよ。笑ってもいいわよ? 笑われても仕方ないこと散々やらかしちゃったんだからッ」
たちまち、カアッと顔どころか全身真っ赤に紅潮させつつも、口では相も変わらず可愛げのないことを放つという、安定の可愛げのなさだ。
けれども窪塚は、そんな私の背中をやっぱり宥めるように優しく撫でつつも、切れ長の双眸を眇めた、殊の外優しい眼差しで、私のことを愛おしそうに見つめてくる。
「バーカ。笑うわけねーだろ? 知らなかったとは言え、あんなところで鈴の初めてもらったのは悪かったと思うけど。嬉しくて嬉しくてどうしようもねーよ。ずっとずっと好きで好きでどうしようもなかった鈴のことを、念願叶ってようやく独り占めできたってことなんだからさぁ。これ以上に嬉しいことはねーよ」
そうしてあの時のことを詫びてきたあとで、なんの臆面もなく、聞かされるこっちが面映ゆくなってしまうことをしれしれっと言ってのけるのだ。
ーーもう、なんなのよ。
今日は、逢って早々、開口一番から、『すっげー逢いたかった』とか、『好きで好きでどうしようもない』とか、甘いことばっかり言ってきて、メチャクチャ嬉しいけど、言われなさ過ぎて、どう反応したらいいかわからないんですけど。
窪塚から立て続けにお見舞いされる情熱的な甘い言葉によって、これでもかと羞恥を煽られてしまい。
私は、いつにも増して可愛げのない言葉を炸裂させてしまうのだった。
「////ーーもーッ! ちょっと、窪塚。アンタ、何回好きだって言ったら気が済むのよッ! 恥ずかしいでしょーがッ! それに、やっぱりバカって言うしッ」
「だってさ、恥じらって突っかかってくる鈴のことが可愛くて可愛くて堪んねーし。もう好きで好きでどうしようもねーんだからさ、しょーがねーじゃん。それに、口の悪い俺のことも好きなんだろ?」
「////ーーばっ、ばば、バッカじゃないのッ!」
「だからさ、そうやってムキになって、すーぐ真っ赤になるとことかマジで可愛いんだって」
「////ーーそんなジッと見ないでってばーッ! もー! ヤダーーッ!」
可愛げのないはずの私のことを窪塚は、尚も愛おしそうに眇めた、熱くて甘い眼差しでマジマジと見つめつつ、私の羞恥をさらに煽ろうとしてか、情事の時にだけ発動させるはずの意地悪なドS発言まで繰り出してきた。
それに対抗して、私も負けじと、可愛げのない言葉で応戦をしていたのだが。
おそらく、端から見れば、ただのバカップルにしか見えないだろう。
どれくらいの間、そうやってイチャついていただろうか。
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「わかったわかった。じゃれるのはここまでにして。正式に交際を申し込む前に、一つだけ、確かめておきたいことがあるんだ」
「……」
そうして、急に部屋の雰囲気同様に取って代わった、怖いくらいに真剣な表情と眼差しとを窪塚から向けられてしまった私は、たちまち緊張感に襲われてゴクリと喉を鳴らした直後に、思いもしなかった話を聞かされることとなる。
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