【R18】ありえない恋。

羽村美海

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episoudo:9

#2

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 あんなこと言っちゃったけど、直樹が私のことを求めてくれるのが凄く嬉しいクセに……。
 
 どうしても、恥ずかしさの方が勝ってしまって、直樹のあったかい大きな胸に素直に甘えることができなくて。

 言い放ってしまってから、いくら後悔したって、なかったことになんてならないのに。

 直樹に可愛くないことを言い放ってしまった私は、心の中でウジウジと後悔ばかりを繰り返すことしかできないでいた。

 直樹と深い関係になれたら、少しは恥ずかしさにも慣れて。

 可愛くはできないにしても、少しは素直になれるかもって思っていたのに……。

 やっと、望み通りに深い大人な関係になれたのに……。

 こんなんじゃ、直ぐに愛想つかされて嫌われてしまう。

 悲しいのを通り越して泣きたくなってきた。

 そうやって、ウジウジしている私の耳には、


「愛、ごめん。俺、つい嬉しくて、調子に乗りすぎた。もう愛の嫌がるようなことはしないし、言わねぇから、そんな泣きそうな顔するなって、な?」


シュンと沈んだ表情を浮かべた、いつも俺様で偉そうな直樹らしくない凄く申し訳無さそうな声が流れ込んできた。

 まさか直樹に、そんなふうに思われていたなんて思いもしなかった私は。

 直樹のことを嫌だなんて思っていないと伝えたくて。

 心配そうに私の表情を見つめている直樹の首へと、


「違うっ! 恥ずかしかっただけで、全然、イヤじゃないっ!」


勢いに任せてシッカリと抱きついた。

 直樹の首めがけて飛びつくようにして抱きついた私を、グラつきもせずに力強くシッカリとあったかいその胸に抱きとめてくれた直樹。


「直樹のこと、イヤなんて思うわけないっ」

「愛、解ったから、落ち着けって、な?」


 興奮気味の私に優しく囁きかけながら。

 まるで、小さな子供を優しくあやすみたいに、優しく背中を何度もトントンしてくれる。

 そんな直樹の優しさが、心にじんわり染みてきて、感極まってしまった私は泣いてしまいそうだ。

 今まで、恋愛初心者でしかもトラウマ持ちの処女だった私は、彼氏である直樹に恥ずかしさだけじゃなく。

 どう思われるかがどうしようもなく不安で、どう甘えればいいのかよく解らなかった。

 でも、直樹も同じように、私の気持ちが解らなくて不安だったんだ……。

 やっぱり思ってるだけじゃなくて、言葉にしないと伝わらないんだ……。

 だったら、恥ずかしいなんて言ってないで、これからは少しでも直樹へ自分の想いを伝えて、直樹の私に対する不安要素なんて取り除いてあげたい。

 ――もっともっと深い絆で結ばれていたい……。

 やっと、そう思えるようになった私は、


「ちょっと恥ずかしいけど、私も直樹と昨夜みたいに繋がってたい……。それくらい、直樹が好きっ!」


抱きついてる直樹の首から少しだけ身体を離すと。

 直樹の形の良い柔らかな唇にそっとくちづけた。

 少しでも、私が直樹のことを想うこの想いを伝えたくて……。

 ただ夢中でくちづけた私は、いつも直樹にそうされてるように、くちづけた直樹の唇のその僅かな隙間に、見様見真似で自分の舌を恐る恐る滑りこませた。

 いつも直樹にされるがままの私が、まさかそんなことするなんて思ってなかっただろう直樹は。

 はじめ驚いていたのか硬直したままで、大きく見開いたビックリ眼で私を見つめたまんまピクリとも動かなかった。

 けれど、私がたどたどしく舌を忍ばせた途端に、まるで水を得た魚のごとく。

 あっという間に私の身体をベッドへ押し倒し、私の遠慮がちな舌先を逃さないとばかりに。

 自分の熱い舌で絡めとるようにして捕らえると、私の全てを奪いつくさんばかりに吸い付いて。

 その深まった熱いくちづけに、私は息をつく間も与えてもらえずに、ただただ直樹の身体にしがみつくことしかできない。

 穏やかに朝のお日様の淡い光が射しこむ静かな部屋の中。

 ふたりが夢中でくちづけを交わすたび、奏でられる甘くて熱い悩ましげな吐息と。

 ふたりの乱れ合う息づかいと水音が響いていた。


 週末、念願だった直樹との甘く濃厚なひとときを過ごしてからというもの。

仕事とプライベートはキッチリしてないと気が済まない、そんなクソが付くほど真面目な私らしくもない有様が続いてしまっている。

 週があけてからも、どこか夢心地で、ふわふわとしてて。

 まだ夢の中で居るような、そんな浮かれモードに浸ってしまっていた。

 だから、私は思いもしなかったのかも知れない。

 直樹と付き合う前までは、あんなに気になっていた筈の色々な物事。

 例えば、6つ違いの歳の差だとか。

 上司と部下であるとういう直樹と私の立場の違いだとか。

 現社長の息子である直樹が、いずれは次期社長になることが当然な御曹司であることとか。

 その他諸々の物事のことなんて頭のなかから抜け落ちてしまっていた。

 直樹との絆が、より一層深まったことが何より嬉しかった幸せ一色の私は。

 今と変わらず直樹の傍でいつまでも幸せで居られるって思っていた。

 どこにでも居る普通の恋人たちと同じように……。
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