141 / 161
第138話 二人の来客
しおりを挟むアウリン、セリス、ヴィヴィアンの三人は、ランプの明かりに照らされた部屋でユークの帰りを待っていた。
「ユーク、遅いね……」
セリスがぽつりとつぶやく。
「何かあったのかしら? もう日も暮れてるのに……」
ヴィヴィアンは頬に手を当て、不安そうな表情を浮かべる。
「はぁ……これは一度、きつく言っておかないとダメね……」
アウリンが椅子にもたれ、軽くため息をついた。
そのとき──玄関の扉をノックする音が響く。
セリスがぴくりと反応する。
「待って。私が出るわ」
アウリンが立ち上がり、玄関へと歩いていく。
扉を開くと、そこに立っていたのは、今にも泣き出しそうな顔をしたラピスと、体中に傷を負ったボルダーだった。
「ゆ、ユークさんがっ!」
ラピスが声を震わせて叫ぶ。
「っ……今すぐ中に入って! 詳しく話を聞かせて!」
すぐに事態の異常さを察したアウリンが、ふたりを家の中へと招き入れた。
リビングのテーブルを囲み、アウリン、セリス、ヴィヴィアン、ラピス、ボルダーが腰を下ろす。
「それで……いったい何があったの?」
アウリンが静かに問いかける。
セリスもヴィヴィアンも、ボルダーの傷だらけの姿に目を細めている。
「ボルダーさん……」
ラピスが彼の方を見つめた。
「ああ。実はな……」
ボルダーは重い口を開き、ゆっくりと経緯を語り始める。
──すべてを話し終えると、部屋の空気が一変した。
「……カルミア……っ! あいつ……!」
セリスが立ち上がり、怒りを押し殺した声で拳を握りしめる。
「ふふふ……ユーク君を攫うなんて……絶対に許さないわ……」
ヴィヴィアンは微笑みを浮かべたまま、手にしていた木のコップを静かに握りつぶす。
「ふたりとも、落ち着きなさい! ……ねえ、ボルダーさん」
アウリンはふたりをなだめながら、ボルダーに視線を向ける。
一見、冷静を装っていたが、彼女の前に置かれたコップの中の水は波打っている。
その揺れが、内に秘めた怒りと動揺を物語っていた。
「なんだ?」
ボルダーが目を向ける。
「“カルミア”ってヤツが現場に居たのは本当なのね?」
アウリンが真剣な表情でボルダーを見ながら問いかけた。
「……ああ。敵は二人いた。そのうちの一人が、女の声で“カルミア様”って呼んでた。それは間違いない」
ボルダーが答える。
「っ……意識があったなら、アナタが……っ!」
ヴィヴィアンが怒りに任せて何かを言いかけたが、途中で言葉を飲み込む。
「……すまねえ。一撃でわかっちまったんだ。俺じゃ……勝てねぇってな」
ボルダーはうつむき、悔しそうに頭を下げた。
「気にしないで。あなたが無事だったから、こうしてユークを連れ去った相手の正体が分かったんだもの」
アウリンは首を横に振って彼に言う。
「それより。仲間が失礼なこと言って、ごめんなさい」
そう言って静かに頭を下げた。
「いや、俺には何も聞こえなかったけどな?」
ボルダーが軽く笑って見せる。
「……ありがとう」
アウリンは小さな声で礼を言い、わずかに微笑んだ。
「それと……EXスキルがどうとか、言ってたな。すげえな、ユークの兄ちゃん……あの若さで、EXスキルなんて使えるのか」
何気ない一言のようだった。だが──
「えっ……!?」
アウリンは顔を強張らせた。
(まって。ユークがEXスキルを持ってるって、ラピスにもルチルさんにも言ってないはず……)
彼女の頭の中で、疑念と可能性が交錯する。
(もし、それを知ってる人間がいたとしたら──)
「……ギルド?」
思わず、その言葉が口をついて出た。
「アウリンちゃん……?」
ぽつりと漏らした言葉に、ヴィヴィアンが心配そうに顔をのぞきこむ。
(ギルドならユークのEXスキルを知る機会もあったはず……。あの火傷の男への尋問で聞き出したか、あるいはスキル鑑定のときに見られてたか……)
アウリンの思考は止まらない。
これまでギルドが行ってきた数々の不信行為が、彼女の心に疑念を植え付けていた。
「ギルドが……カルミアや博士とつながってる可能性があるわ」
静かながらも、鋭い言葉に、その場の空気が張り詰めた。
「「ええっ!?」」
全員が驚きの声をあげる。
「そう考えた理由を説明するわ……」
アウリンが推論を説明すると、ラピスを除いた全員が納得したようにうなずいた。
「まさか……ギルドがそんなことを……」
ラピスが俯き、震えた声を漏らす。
「いや、あり得るぜ。あいつらは、俺たち探索者を使い捨てみてえに扱うからな」
長年、探索者としてこの街で活動してきたボルダーの言葉には重みがあった。
「つまり、ギルドには頼れないってことかしら?」
ヴィヴィアンが確認するように聞く。
「たぶんね。言ったところで本気で動いてくれるとは思えないわ」
アウリンが低く答えた。
「どうせ“自己責任”で片づけられるだけだろうな」
ボルダーが続ける。
「……私たち、ギルドのためにどれだけ戦ってきたと……!」
セリスが感情を爆発させる。
「そりゃ、個人で恩義を感じてる奴はいるだろうけどよ、個人じゃあな……」
ボルダーが肩をすくめた。
「個人……ギルドじゃなくて……」
アウリンが口元に指を当て、何かを考えるように目を細めた。
「……いけるかもしれないわ。ユークを直接探すんじゃなくて、連れ去った相手の居場所を特定できれば、ユークもそこにいるはず」
そう言ってアウリンの目が向いたのは、ルチルから渡された魔道具──
転移封じの天蓋だった。
◆◆◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セリス(LV.33)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
備考:カルミアへの怒りに震えており、今にも飛び出しそうなほど感情が高ぶっている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アウリン(LV.34)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
備考:ユークが不在の今、代理のリーダーとして冷静さを保とうとしている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヴィヴィアン(LV.33)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
備考:ユークが攫われたという事実に心を大きく乱され、自分でもその動揺に驚いている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ボルダー(LV.??)
性別:男
ジョブ:??
スキル:??
備考:酔っていた自分がユークの足を引っ張ったのではないかと悔いており、強い罪悪感に苛まれている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ラピス(LV.30)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪テラーバースト≫
備考:あれほど強かったユークが簡単に攫われたことに、驚きと恐怖を隠せずにいる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
11
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる