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陽菜の考え
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綺麗に身体を拭いてもらうと、下着を身に付けながら、陽菜は自分の考えを頭の中で整理する。
聖達に、自分の考えを話してもきっと見向きもされないとは思うが、ダークメアと言う人間を脅かす存在を駆逐する為には、魔法少女同士が争っている場合ではない。
その事だけは伝えたいのだが、もしまた二人の怒りを買ってしまい、恥ずかしい思いや痛い思いをするかもしれないと、そう考えると中々口に出せない。
折角認めてくれたのだから、仲間になったのだから、自分の意見位は二人に述べるべきなのだが、どうしても先程の辱めとここあから受けた攻撃の痛みを思い出すと、口が開いてくれない。
辱めも嫌だが、痛い思いをする位ならまだ辱めを受ける方が、きっといいよねと陽菜は勇気を振り絞って、二人に話し掛ける。
「あ、あの聞いて欲しい事が」
「何かなにゃ?」
「焦らなくてもいいわよ。先ずはちゃんとショーツを履きなさい」
聖に言われて、自分の下半身を見ると何故かショーツが中途半端に、片方しか脚が入っていないと言う状態である。
「陽菜にゃんは、小さい子供なのかにゃ? それならこれからは、お風呂もトイレもお姉さんが教えてあげようかにゃ」
ここあの瞳が嫌らしく光る。
「ここあは、陽菜の身体に興味があるだけでしょ」
「聖だってあるくせに。パイパンなんて、中々お目にかかれないから、中身も見たいくせに」
「そ、それは……」
口を噤んでしまった聖を余所に、中々ショーツを直せない陽菜を、ここあが本当に可愛いにゃとか言いながら、お手伝いしてショーツを履かせてくれた。
お恥ずかしい所を見せましたと、二人に頭を下げてから、陽菜は二人に自分の考えを語り始めた。
「私は、西の魔法少女を知りませんから、勝手な事は言えませんけど、どうして争っているのかもわからないけど、今は協力すべきなんじゃないですか?」
「どう言う意味にゃ」
ここあの表情が一瞬で怒りと不快さを隠さない表情になる。
陽菜は思わず、ごめんなさいと言いながら自分の頭を守る。
「もうここあ。朝比奈さんが怯えてるじゃない」
大丈夫だから続けてと言われて、陽菜はここあの顔色を窺う。
相変わらず不機嫌である。
「続けるにゃ。叩いたりなんてしないから、陽菜にゃんの意見を聞かせるにゃ」
陽菜は聖の後ろに隠れながらも、自分の考えを再び述べる。
「争う理由は、後で教えてください。でも、今はダークメアを駆逐して、人間の安全を確保する方が大切で、優先すべき事だって思います」
「やってるにゃ。やりながら、向こうと争ってるんだにゃ」
「それはわかってますけど、でも協力した方が早いと言いますか、あの、その、魔法少女が命を落とす確率が減ると思うんです」
確かに魔法少女同士で歪みあってる位なら、協力した方が生き残る確率は数段上がる。
そんな事は新米の陽菜に言われなくても、二人はわかってはいるのだ。
それでも、譲れないのだ。
どうしても許せないのだ。
「それに、ダークメアがどうして生まれたのか、どうして魔法少女が誕生したのか、私は知りたいんです」
もしかしたら、西側の魔法少女の中には、その情報を持っている魔法少女がいるかもしれないと、陽菜は考えている。
「ダークメアが現れたのは、千年前って言われてるわ。そして、最初の魔法少女達が誕生したのもね」
「聖さんは、何かを知ってるんですか?」
「今話した程度よ。ただ最初の魔法少女達は、とても強かったって、お母様が言ってたわ」
初代魔法少女達は、時代もあってなのか今の魔法少女達より遥かに強い力を、能力とメンタルを持っていた。
聖の母親も、自分の母親から聞いたと以前話していた。
代々受け継がれている話しの様だ。
「ただ、ダークメアが何故誕生してしまったのかは、それについては今でも不明なのよ」
「そうですか」
あの時、女神様が自分を魔法少女にして生き返らせてくれた時に、もっとしっかりと話しを聞いておくべきだった。
魔法少女の事もダークメアの事も、そうすれば違ったのかもしれないと、陽菜は今さらながらに後悔する。
「なら尚更歪みあってる場合じゃないんじゃないですか。協力してダークメアが、どうして生まれたしまうのかを、それを調べる必要があるんじゃないんですか?」
「煩いにゃ……それ以上言うなら我慢ならないにゃ」
「ヒッ! ご、ごごご」
「陽菜にゃんには、教育が必要だと思うにゃ。二度と西側と協力しようなんて言わない様に」
ここあの怒りは頂点らしく、陽菜に鋭い眼光を向けている。
「ここあ。落ち着きなさいって、朝比奈さんは事情を知らないのよ」
「知らなくても、言ってもいい事と悪い事があるにゃ」
「ここあ。西側の事を先ずは教えてあげましょう。それで朝比奈さんにはゆっくり考えてもらいましょう」
聖の後ろでガタガタと震えている陽菜を一瞥してから、仕方ないにゃと言ってここあは振り上げた拳をやっと下ろしてくれた。
ここあに怯える陽菜に、聖は大丈夫だからと言いながら、西側の魔法少女について教えてくれる。
西側のリーダーは沢城エリナと呼ばれる魔法少女で、実力は聖にも引けを取らないレベルであり、頭脳明晰で見た目も聖同様に誰もが憧れる美少女である。
主なメンバーとしては、田辺美代子と愛川莉絵の二人が常にエリナと行動を共にしている様だ。
他にもメンバーはいるが、普段エリナと行動を共にするのは、美代子と莉絵であり他のメンバーは、エリナを慕っているが、魔法少女同士の争いでは、戦力外である。
田辺美代子は、エリナの幼馴染であり実力は、ここあと同レベル程度なので魔法少女としては上位である。
穏やかな性格らしいが、エリナの事になると周りが見えなくなってしまう程に、エリナ大好き少女である。
愛川莉絵は、二人の一つ後輩にあたるが、幼い頃から二人と触れ合っていた。
家が近所なのだ。
その為に、二人を良く熟知しており的確なサポートをする。
おっとりタイプに見えるが、戦いになれば容赦しない一面を持っている可愛い系の女の子である。
西側のメインメンバーは三人。
ならこちら側は?
「西側がエリナさんって人を中心にしている事と、メインはエリナさん、美代子さん、莉絵さんの三人だとわかりましたけど、こちらは聖さんとここあさん以外にいるんですか?」
向こうで気をつけるのは、エリナたち三人だとしても、こちらにも最低三人はいないと厳しい。
新米の自分は完全にノーカンである。
「今は私とここあだけよ。もちろん他にもいるけど、魔法少女同士で戦うとなれば、戦力外ね」
「あいつらが、あいつらが騙し討ちしたに決まってるにゃ! 騙し討ちに遭わなければ七海は死ななかったにゃ!」
騙し討ち?
一体何があったんですか?
興奮するここあを宥めながら、ここあが西側の魔法少女をここまで憎む理由を教えてくれた。
「一年前までは、三人で活動してたのよ」
聖とここあ。そして、四ノ宮七海と言う同級生と共に、ダークメアを駆逐していた。
当時から、西側とは仲は悪かったのだが今程歪みあってる訳ではなかった。
「西側とはね。もうずっと昔からなの。お母様の時代よりも、もっと前からね」
「どうしてなんですか? 私にはわかりませんけど、昔はきっと協力してたと思うんです」
「そうね。でも、いつの間にか派閥争いって言うのか、勢力争いみたいな事が起きて、それでって、そんな事をお母様も言ってたけど、事実はわからないわ」
事実はどうあれ、歪みあってるのは確かな様で、陽菜はどうすればいいのと悩んでしまう。
「それでね。一年前にある事件と言うか、七海が亡くなったのよ」
ここあも死ななかったと言っていたから、七海さんはもういないのだと思っていた。
もしその七海さんが、存命ならきっとこの場所にもいる筈だし、ここあの騙し討ちと言うフレーズが気になっていた。
「ここあさんは、さっき西側の魔法少女が騙し討ちをしたと言ってましたけど、どう言う意味ですか?」
「言葉の通りにゃ。あいつらは卑怯な手を使って、七海を殺したんだにゃ」
「えっと、七海さんは西側の魔法少女に殺されたんですか?」
自分を見る陽菜に、聖は違うわよと首を振る。
「違わないにゃ! あいつらが騙し討ちしなければ七海が死ぬ筈ないにゃ! 七海は七海はうちなんかより、ずっと強い魔法少女だったんだにゃ!」
だから絶対に西側の連中が嵌めたんだと、七海を陥れたんだと、ここあは感情を昂らせながら、怒りをぶち撒ける。
これ以上ここあがいたのでは、話しにならないと聖は緋を呼んで、一度ここあを部屋から連れ出してもらう。
普通の人間の緋だが、格闘技の経験もありそして、ここあの扱いに慣れている様で、興奮するここあを難なく連れ出してしまう。
「ごめんなさいね。ここあは、七海の事になると歯止めが利かなくて」
「いいえ。それで、本当に七海さんは西側の魔法少女に殺されたんですか?」
「違うわ。七海の傷はダークメアにやられたものだったし、それが原因で数日後に亡くなったのよ」
捕食を主とするダークメアは、鋭い牙や鋭い爪で攻撃してくるが、魔法少女は魔法を使って攻撃する。
その為に、肉体に刻まれる傷でダークメアによるものなのか、魔法少女によるものなのか判断出来る。
「ここあさんは、どうしてあそこまで頑なに西側のせいにするんですか?」
「それには理由があるのよ。私達が七海の元に駆けつけた時には、七海は重傷だった。七海しかいなかったけど、七海以外の血痕もあったから、聞き込みをしたのよ」
現場には明らかに七海以外の血痕もあり、二人は聞き込みを開始。
その聞き込みの中で、傷を負いながら歩いていた魔法少女らしき女の子がいたと、そう情報を得たのだ。
ここあは、七海は西側の魔法少女にやられたと、嵌められて殺されたと信じ込む様になり、それからは西側の魔法少女を恨む様になった。
「私達は、確かに西側とは歪みあってるけど、恨みはないのよ。代々受け継がれてきたからってだけ」
「でもここあさんにとっては、ダークメア以上に許せない敵になってしまったって、そう言う事なんですね」
ええと聖が辛そうに頷く。
四ノ宮七海を殺したのは、間違いなくダークメアだと思う。
ただ現場に残っていた七海以外の血痕が、本当に西側の魔法少女のものなのか?
「聖さん、その血痕は本当に西側の魔法少女のなんですか? 例えばですけど人間が襲われていて、七海さんが助けに入ったとは考えられませんか?」
十分に考えられるのだが、聖はそれを否定する。
「もしそうなら、酷い話しだけど、現場に人間の遺体の一部がある筈なの」
七海がダークメアと刺し違えたのだとしても、先に襲われていた人間は、七海が見つけて助けに入った時点で、ほぼ捕食されていると考えられた。
それなら遺体の一部があってもおかしくないのだが、現場には捕食された後も遺体の一部もなかった。
話しを聞いて、ここあの怒りはわかったが、先ずは真実を知る必要があるのではないかと、陽菜はそう考えた。
「西側の魔法少女と接触させてください」
「何を言ってるの? 向こうも新しい魔法少女が誕生したとわかっているのよ」
「そうかもしれません。でも、私だとは思わないと思いますし、私みたいな弱い魔法少女に興味は持たないと思いますよ」
「絶対に駄目よ! 絶対に……」
「聖……さん?」
声を荒げる聖に、陽菜は何も言えなくなってしまう。
「お願いだから、一人で危険な事はしないで、七海と同じ事はしないで」
「どう言う事ですか?」
聖は、お茶を用意するから待っててと言うと、一度席を立つ。
聖自身が冷静になる時間が欲しかった。
戻って来た聖は、陽菜を見据えるとゆっくりと話し始めた。
七海と言う魔法少女について。
聖達に、自分の考えを話してもきっと見向きもされないとは思うが、ダークメアと言う人間を脅かす存在を駆逐する為には、魔法少女同士が争っている場合ではない。
その事だけは伝えたいのだが、もしまた二人の怒りを買ってしまい、恥ずかしい思いや痛い思いをするかもしれないと、そう考えると中々口に出せない。
折角認めてくれたのだから、仲間になったのだから、自分の意見位は二人に述べるべきなのだが、どうしても先程の辱めとここあから受けた攻撃の痛みを思い出すと、口が開いてくれない。
辱めも嫌だが、痛い思いをする位ならまだ辱めを受ける方が、きっといいよねと陽菜は勇気を振り絞って、二人に話し掛ける。
「あ、あの聞いて欲しい事が」
「何かなにゃ?」
「焦らなくてもいいわよ。先ずはちゃんとショーツを履きなさい」
聖に言われて、自分の下半身を見ると何故かショーツが中途半端に、片方しか脚が入っていないと言う状態である。
「陽菜にゃんは、小さい子供なのかにゃ? それならこれからは、お風呂もトイレもお姉さんが教えてあげようかにゃ」
ここあの瞳が嫌らしく光る。
「ここあは、陽菜の身体に興味があるだけでしょ」
「聖だってあるくせに。パイパンなんて、中々お目にかかれないから、中身も見たいくせに」
「そ、それは……」
口を噤んでしまった聖を余所に、中々ショーツを直せない陽菜を、ここあが本当に可愛いにゃとか言いながら、お手伝いしてショーツを履かせてくれた。
お恥ずかしい所を見せましたと、二人に頭を下げてから、陽菜は二人に自分の考えを語り始めた。
「私は、西の魔法少女を知りませんから、勝手な事は言えませんけど、どうして争っているのかもわからないけど、今は協力すべきなんじゃないですか?」
「どう言う意味にゃ」
ここあの表情が一瞬で怒りと不快さを隠さない表情になる。
陽菜は思わず、ごめんなさいと言いながら自分の頭を守る。
「もうここあ。朝比奈さんが怯えてるじゃない」
大丈夫だから続けてと言われて、陽菜はここあの顔色を窺う。
相変わらず不機嫌である。
「続けるにゃ。叩いたりなんてしないから、陽菜にゃんの意見を聞かせるにゃ」
陽菜は聖の後ろに隠れながらも、自分の考えを再び述べる。
「争う理由は、後で教えてください。でも、今はダークメアを駆逐して、人間の安全を確保する方が大切で、優先すべき事だって思います」
「やってるにゃ。やりながら、向こうと争ってるんだにゃ」
「それはわかってますけど、でも協力した方が早いと言いますか、あの、その、魔法少女が命を落とす確率が減ると思うんです」
確かに魔法少女同士で歪みあってる位なら、協力した方が生き残る確率は数段上がる。
そんな事は新米の陽菜に言われなくても、二人はわかってはいるのだ。
それでも、譲れないのだ。
どうしても許せないのだ。
「それに、ダークメアがどうして生まれたのか、どうして魔法少女が誕生したのか、私は知りたいんです」
もしかしたら、西側の魔法少女の中には、その情報を持っている魔法少女がいるかもしれないと、陽菜は考えている。
「ダークメアが現れたのは、千年前って言われてるわ。そして、最初の魔法少女達が誕生したのもね」
「聖さんは、何かを知ってるんですか?」
「今話した程度よ。ただ最初の魔法少女達は、とても強かったって、お母様が言ってたわ」
初代魔法少女達は、時代もあってなのか今の魔法少女達より遥かに強い力を、能力とメンタルを持っていた。
聖の母親も、自分の母親から聞いたと以前話していた。
代々受け継がれている話しの様だ。
「ただ、ダークメアが何故誕生してしまったのかは、それについては今でも不明なのよ」
「そうですか」
あの時、女神様が自分を魔法少女にして生き返らせてくれた時に、もっとしっかりと話しを聞いておくべきだった。
魔法少女の事もダークメアの事も、そうすれば違ったのかもしれないと、陽菜は今さらながらに後悔する。
「なら尚更歪みあってる場合じゃないんじゃないですか。協力してダークメアが、どうして生まれたしまうのかを、それを調べる必要があるんじゃないんですか?」
「煩いにゃ……それ以上言うなら我慢ならないにゃ」
「ヒッ! ご、ごごご」
「陽菜にゃんには、教育が必要だと思うにゃ。二度と西側と協力しようなんて言わない様に」
ここあの怒りは頂点らしく、陽菜に鋭い眼光を向けている。
「ここあ。落ち着きなさいって、朝比奈さんは事情を知らないのよ」
「知らなくても、言ってもいい事と悪い事があるにゃ」
「ここあ。西側の事を先ずは教えてあげましょう。それで朝比奈さんにはゆっくり考えてもらいましょう」
聖の後ろでガタガタと震えている陽菜を一瞥してから、仕方ないにゃと言ってここあは振り上げた拳をやっと下ろしてくれた。
ここあに怯える陽菜に、聖は大丈夫だからと言いながら、西側の魔法少女について教えてくれる。
西側のリーダーは沢城エリナと呼ばれる魔法少女で、実力は聖にも引けを取らないレベルであり、頭脳明晰で見た目も聖同様に誰もが憧れる美少女である。
主なメンバーとしては、田辺美代子と愛川莉絵の二人が常にエリナと行動を共にしている様だ。
他にもメンバーはいるが、普段エリナと行動を共にするのは、美代子と莉絵であり他のメンバーは、エリナを慕っているが、魔法少女同士の争いでは、戦力外である。
田辺美代子は、エリナの幼馴染であり実力は、ここあと同レベル程度なので魔法少女としては上位である。
穏やかな性格らしいが、エリナの事になると周りが見えなくなってしまう程に、エリナ大好き少女である。
愛川莉絵は、二人の一つ後輩にあたるが、幼い頃から二人と触れ合っていた。
家が近所なのだ。
その為に、二人を良く熟知しており的確なサポートをする。
おっとりタイプに見えるが、戦いになれば容赦しない一面を持っている可愛い系の女の子である。
西側のメインメンバーは三人。
ならこちら側は?
「西側がエリナさんって人を中心にしている事と、メインはエリナさん、美代子さん、莉絵さんの三人だとわかりましたけど、こちらは聖さんとここあさん以外にいるんですか?」
向こうで気をつけるのは、エリナたち三人だとしても、こちらにも最低三人はいないと厳しい。
新米の自分は完全にノーカンである。
「今は私とここあだけよ。もちろん他にもいるけど、魔法少女同士で戦うとなれば、戦力外ね」
「あいつらが、あいつらが騙し討ちしたに決まってるにゃ! 騙し討ちに遭わなければ七海は死ななかったにゃ!」
騙し討ち?
一体何があったんですか?
興奮するここあを宥めながら、ここあが西側の魔法少女をここまで憎む理由を教えてくれた。
「一年前までは、三人で活動してたのよ」
聖とここあ。そして、四ノ宮七海と言う同級生と共に、ダークメアを駆逐していた。
当時から、西側とは仲は悪かったのだが今程歪みあってる訳ではなかった。
「西側とはね。もうずっと昔からなの。お母様の時代よりも、もっと前からね」
「どうしてなんですか? 私にはわかりませんけど、昔はきっと協力してたと思うんです」
「そうね。でも、いつの間にか派閥争いって言うのか、勢力争いみたいな事が起きて、それでって、そんな事をお母様も言ってたけど、事実はわからないわ」
事実はどうあれ、歪みあってるのは確かな様で、陽菜はどうすればいいのと悩んでしまう。
「それでね。一年前にある事件と言うか、七海が亡くなったのよ」
ここあも死ななかったと言っていたから、七海さんはもういないのだと思っていた。
もしその七海さんが、存命ならきっとこの場所にもいる筈だし、ここあの騙し討ちと言うフレーズが気になっていた。
「ここあさんは、さっき西側の魔法少女が騙し討ちをしたと言ってましたけど、どう言う意味ですか?」
「言葉の通りにゃ。あいつらは卑怯な手を使って、七海を殺したんだにゃ」
「えっと、七海さんは西側の魔法少女に殺されたんですか?」
自分を見る陽菜に、聖は違うわよと首を振る。
「違わないにゃ! あいつらが騙し討ちしなければ七海が死ぬ筈ないにゃ! 七海は七海はうちなんかより、ずっと強い魔法少女だったんだにゃ!」
だから絶対に西側の連中が嵌めたんだと、七海を陥れたんだと、ここあは感情を昂らせながら、怒りをぶち撒ける。
これ以上ここあがいたのでは、話しにならないと聖は緋を呼んで、一度ここあを部屋から連れ出してもらう。
普通の人間の緋だが、格闘技の経験もありそして、ここあの扱いに慣れている様で、興奮するここあを難なく連れ出してしまう。
「ごめんなさいね。ここあは、七海の事になると歯止めが利かなくて」
「いいえ。それで、本当に七海さんは西側の魔法少女に殺されたんですか?」
「違うわ。七海の傷はダークメアにやられたものだったし、それが原因で数日後に亡くなったのよ」
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その為に、肉体に刻まれる傷でダークメアによるものなのか、魔法少女によるものなのか判断出来る。
「ここあさんは、どうしてあそこまで頑なに西側のせいにするんですか?」
「それには理由があるのよ。私達が七海の元に駆けつけた時には、七海は重傷だった。七海しかいなかったけど、七海以外の血痕もあったから、聞き込みをしたのよ」
現場には明らかに七海以外の血痕もあり、二人は聞き込みを開始。
その聞き込みの中で、傷を負いながら歩いていた魔法少女らしき女の子がいたと、そう情報を得たのだ。
ここあは、七海は西側の魔法少女にやられたと、嵌められて殺されたと信じ込む様になり、それからは西側の魔法少女を恨む様になった。
「私達は、確かに西側とは歪みあってるけど、恨みはないのよ。代々受け継がれてきたからってだけ」
「でもここあさんにとっては、ダークメア以上に許せない敵になってしまったって、そう言う事なんですね」
ええと聖が辛そうに頷く。
四ノ宮七海を殺したのは、間違いなくダークメアだと思う。
ただ現場に残っていた七海以外の血痕が、本当に西側の魔法少女のものなのか?
「聖さん、その血痕は本当に西側の魔法少女のなんですか? 例えばですけど人間が襲われていて、七海さんが助けに入ったとは考えられませんか?」
十分に考えられるのだが、聖はそれを否定する。
「もしそうなら、酷い話しだけど、現場に人間の遺体の一部がある筈なの」
七海がダークメアと刺し違えたのだとしても、先に襲われていた人間は、七海が見つけて助けに入った時点で、ほぼ捕食されていると考えられた。
それなら遺体の一部があってもおかしくないのだが、現場には捕食された後も遺体の一部もなかった。
話しを聞いて、ここあの怒りはわかったが、先ずは真実を知る必要があるのではないかと、陽菜はそう考えた。
「西側の魔法少女と接触させてください」
「何を言ってるの? 向こうも新しい魔法少女が誕生したとわかっているのよ」
「そうかもしれません。でも、私だとは思わないと思いますし、私みたいな弱い魔法少女に興味は持たないと思いますよ」
「絶対に駄目よ! 絶対に……」
「聖……さん?」
声を荒げる聖に、陽菜は何も言えなくなってしまう。
「お願いだから、一人で危険な事はしないで、七海と同じ事はしないで」
「どう言う事ですか?」
聖は、お茶を用意するから待っててと言うと、一度席を立つ。
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