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西の判断と東の判断
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エリナからの罰で、身体は殆ど言う事を聞かないが、これで構わない。
全ては覚悟の上だったのだから、今までの私は、ただエリナ達を守りたい。それだけで同じ魔法少女とも争っていたが、今は全ての魔法少女を守りたいに変わった。
力のない人間は、私達魔法少女に守られている。
なら、私達魔法少女は、誰が守ってくれるのか?
誰もいないではないか。
なら、一人位同じ魔法少女を守りたいと思ったって、罰は当たらない。
そうですよね? 七海さん。
痛む身体を引き摺りながら、階段を降りてリビングに向かう。
相変わらず暗い。
今日も帰って来ないんだ。
もう何日帰って来てないのだろうか?
お金を置いて行ってくれるから、食べるのにも遊ぶのにも困らないけど、偶には帰って来て一緒に食事してもいいのに。
両親が共に忙しいのはわかっている。
わかってはいるが、本当に偶には年に何回かでもいいから、一緒に食事をしたい。
もうどの位一緒に食べていないのかな? 莉絵は一人コンビニのお弁当を温めると、食べながら、早く陽菜ちゃんに接触しなければと考えていた。
きっとエリナは、陽菜ちゃんを潰す。
殺しはしないだろうけど、魔法少女として二度と立ち上がれない位に、徹底的に痛めつける。
そんなのは、絶対に駄目だ!
何としても守らないと、陽菜ちゃんも東の魔法少女も、西の魔法少女も私が守るんだと、七海の意思は私が受け継ぐんだと莉絵は一人寂しく食事をしながら、決意を新たにしていた。
「やり過ぎよ! 莉絵ちゃん可愛そうじゃない」
珍しく美代子が怒りを露わにしている。
普段は、とても穏やかで温厚な美代子だが、エリナと莉絵の事になると、感情を爆発させる時もある。
「仕方ないじゃん。裏切ろうとしたらこうなるんだって、周りにもわからせる必要あったんだし」
「だからって、あそこまでやらなくても。莉絵ちゃんじゃなかったら、死んでたかもしれないのよ」
見た目以上にタフな莉絵だからこそ耐えられたが、他の魔法少女なら失神して最悪命を落としていた可能性すらあったのだ。
美代子の怒りは収まらずに、反省するまではエッチ禁止ですからねと、そっぽを向いてしまった。
「ちょっ、それはないよ~」
猫撫で声で、勘弁してよと反省してるからと、エリナが美代子にすりすりしているが、美代子は知らないと、可愛い妹を苛めた罰ですと、エリナに厳しい。
「やり過ぎたとは思ってるよ。でも、莉絵が心変わりしたのが悲しかったんだよ」
自分でもやり過ぎたとは反省している。
だけど、莉絵の心変わりが悲しくて許せなかったのも本音である。
「わかるわよ。本当にどうしたの? って聞きたいし、莉絵ちゃんに何があったのか私だって知りたいんですから」
知りたいけれど、莉絵はいくら罰を与えても言わないだろう。
昔から、そう言うところがあった。
一人で何でも抱え込んでしまう癖が莉絵にはあったから、付き合いの長い二人はそれも理解している。
「両親の事も、全然言ってくれなかったし」
莉絵の両親は忙しいを理由に、殆ど家に帰って来ない。
莉絵はいつも一人で、寂しく過ごしていたのにも関わらず二人には、一切話していなかった。
おかしいと感じた二人が、莉絵に聞くまでは何も話さなかった。
だから今回も話さないだろう。
「寂しいけど仕方ありませんわ」
「うん。だから、今回の争いは莉絵は外すし話さない事にしようと思ってる」
争いたくない莉絵を巻き込みたくはない。そんな気持ちで、無理矢理参加させても、莉絵が心身共に傷付くだけだと、エリナは莉絵には内緒で行動すると、美代子に自分の気持ちを話した。
美代子は、参加させなくても争う事だけは莉絵にも伝えましょうと、お互いの為にと言ってくれたので、エリナもそれに同意して二人で、莉絵の家へと向かった。
鍵が掛けられていないのを知ってるので、お邪魔するよと言ってから、エリナは莉絵の家に入る。
美代子は、相変わらず不用心ですわねと言いつつも、エリナに続いて、莉絵の家にお邪魔する。
リビングに灯りが付いていたので、二人はそのままリビングに入ると、相変わらず莉絵は一人で食事をしていた。
「どうしたの? 二人して」
二人が入って来た事には、気付いてはいたのだが、身体中が痛いので今日は玄関にお出迎えはしなかった。
「怪我は痛む? 莉絵ちゃん我慢するから心配で」
「莉絵。やり過ぎたごめん」
「別に大丈夫だし、罰は受けないといけないし」
莉絵は、痛むけど問題はないと罰は受けて仕方ないと、謝るエリナに謝る必要はないと告げると、食べ終えた空の弁当箱をゴミ箱に捨てる。
部屋に行こうと、莉絵は二人を部屋に招き入れると、東との争いについてだよね? と二人が来た理由をわかっていた様だ。
「そう。東との争いは、今は止められない。向こうの考えもわからないしね。それで、今回は莉絵は外す事にしたから」
「戦わないから? 役に立たないからいても邪魔って事?」
「莉絵ちゃん。そうじゃなくて、怪我もしてるし、戦いたくないのに無理矢理は嫌だから」
美代子が説明してくれる。
「そう。私は戦わないし、東が不利だと判断したら、東を助けるかもよ。それでもエリナと美代子は、どうしても戦いたいの?」
もういい加減敵だ味方だは、終わりにしてもいいんじゃない? 私達魔法少女の敵はあくまでも、ダークメアなんだよと、莉絵は再度訴える。
莉絵の言葉に、美代子は多少なりとも理解を示すが、リーダーであるエリナは、それでも今は戦うと戦いの意志を示した。
「エリナ。私はエリナとは戦いたくないし……だからお願いだから、争いじゃなくて話し合いで解決しようよ」
「莉絵ごめん。一度戦わないと駄目なんだ。そうしてからじゃないと、話し合いは無理なんだよ」
どうして? どうして無理なの? と聞く莉絵にエリナは、ケジメだからと、その一言にエリナの考えの全てが集約されていた。
「莉絵ちゃん。莉絵ちゃんの気持ちはわかるわ。でも、これは私達のケジメでもあるのよ」
今まで争っていたのに、いきなり話し合いをしようと言っても、向こうも納得しないし疑うだけだ。
だから一度戦わないといけない。
戦ってから、頃合いを見て話し合いを持ちかける。
和平交渉に持っていく。それが、エリナと美代子の判断だった。
「私達は、馬鹿だから莉絵の気持ちを理解したくても出来ないから、でも魔法少女同士が争うなんてのは、馬鹿げてるとは思ってるんだよ」
「莉絵ちゃんの言った通りで、敵はダークメア。本当は魔法少女は協力しなくてはいけないと、ずっとわかってはいたのよ」
わかってはいたが、止めるに止められない状況にまで来ていた。
ずっと争いを続けていたから、簡単には止められない。
それがリーダーであるエリナと、エリナを補佐する美代子の判断だった。
「でも、向こうは三人なんだよ。こっちはエリナと美代子の二人なんだよ」
「いいや。二人対二人だよ。新しい魔法少女は、数には入らないさ。経験がないんだからね」
エリナの言う通りで、魔法少女との戦いはおろか、ダークメアとの戦いすら殆ど経験してない陽菜は、頭数には入らなかった。
「なら新しい魔法少女は潰さない?」
「約束するよ。攻撃してきたら反撃はするけれどね」
「約束するわ。可愛い妹の莉絵ちゃんを悲しませたくないから」
二人の言葉に莉絵は、やっと安心する事が出来た。
ケジメとしての争いなら、もう止める事は出来ない。
自分は、お互いが行き過ぎない様に見守る。
行き過ぎてると判断したら、身体を張ってでも争いを止める。
そう心に決めた。
エリナ達西側が判断を下したのと、同じ頃。
東も判断に迫られていた。
その理由は、陽菜が不貞腐れたからだった。
「聖さんもここあさんも、どうしても争いたいんですか? どうしてもと言うなら、私は参加せずに見守りますし、行き過ぎてると判断したら、全力で止めますから、どうせ私の言う事なんて聞いてくれないし」
と陽菜が不貞腐れた事で、聖とここあは争うのかの判断を、早急にしなくてはいけなくなってしまった。
「陽菜にゃん。そう不貞腐れないで」
「いいんですよ。どうせ私は役に立たないし、この前も怖くて泣き出したし、ここあさんに脅されてお漏らしはするし」
「もう! 朝比奈さん。そんなに投げやりにならなくても」
「いいんです。いいんです。聖さんは、いつまで経っても朝比奈さんって呼ぶし、陽菜って呼んでくれないし、お風呂だって一緒に入るのに、ここあさんとばかり楽しそうにするし」
どうしたらいいの? と二人は正直困ってしまった。
そんな二人に助け船が、救世主明里の登場である。
「陽菜ちゃんどうしたの? 何か拗ねてない?」
二人は明里に事情を説明する。
「そう言う事。なら早く判断してあげないと、陽菜ちゃんは戦って欲しくない。だけど二人には戦う理由がある。なら、その理由もちゃんと説明してあげなさい」
そう二人に助言すると、明里はヨシヨシと陽菜を慰める。
「どうして、聖さんもここあさんも西側との争いに拘るんですか? 七海さんの事が理由ですか?」
「私は違うわ。何て言うか一度戦ってから、話し合いをするのが、ケジメだって思ってるのよ」
聖の考えはエリナ達と同じで、長年争ってきている以上は、一度は拳を交える必要があると、その後に話し合いをして協定を結べばいいと考えている。
陽菜が、ならここあさんは? と聞くのでここあは仕方なく考えを述べる。
「うちは、七海の件は半信半疑だけど真実は知りたい。七海が亡くなった場所は、境界線ギリギリで西側だったから、真実を知れたら西側が嵌めたんじないって、それがわかったら争いをやめて話し合いをするにゃ」
真実を知ってる明里は、この場でここあに教えてあげたかったが、莉絵は自分から話したいと言っていたので、明里はなら一度だけ戦いなさいと、その後は話し合いをしなさいと、間には自分が入るからと言うので、さすがにそれは危ないですからと、聖とここあは止める。
「私は明里さんに、間に入って貰った方がいいと思います。魔法少女じゃない明里さんだからこそ、隔たりみたいのもないですし、向こうの魔法少女も納得してくれると、私は思いますけど」
陽菜の意見に二人は、首を縦には振れない。
振ってしまって、明里に何かあれば七海に申し訳が立たない。
七海との約束を守れなくなってしまう。
それだけは、絶対に避けなければいけないのだ。
「大丈夫よ。私の事は、陽菜ちゃんが守ってくれるんでしょ?」
「は、はい! 全力でお守りします」
「なら問題はなしと、二人が駄目って言っても私も一緒に行くから」
これは、もう何を言っても無駄だと二人は諦めて、わかりましたと了承するしかなかった。
東の魔法少女から、手紙が届いた。
その手紙には、戦いの場所と日時が記されていた。
争ってはいるが、不意打ちなどの卑怯な手をお互いに使った事はない。
必ず場所と日時を指定して争うのが、昔からの決まりである。
手紙を読みながら、莉絵はとうとう陽菜ちゃんに会えなかったと、出来るのなら争いの前に会いたかったと、でもきっと陽菜ちゃんなら、自分と同じで争いには参加しない筈。
二人で頃合いを見て、争いを止めよう。
そして話し合いをして、これからは仲良くしていくんだ。
七海さんの為にも。
その為には、真実を一年前の事を話さないといけない。
東の魔法少女から恨まれてもいい。
自分を恨んでもいいから、どうか魔法少女同士手を取り合って欲しい。
ダークメアが共通の敵なのだから、私達の敵はダークメアであり、同じ魔法少女ではない。
莉絵同様に、陽菜も共通の敵はダークメアであり魔法少女ではないと、だから今回を最後にして手を取り合う。
それが陽菜にとっての最大の目的であった。
争いが始まるまで、あと三日。
お互いに嫌でも緊張が高まっていく。
東と西の魔法少女が争う街に、一人の少女が足を踏み入れた。
「ここにいるのですか? 気配は感じますが、近しい気配もあって判断出来ません。取り敢えずは、色々と調べる事にします」
そう言うと、幼い見た目の魔法少女と思しき少女はゆっくりと、歩を進めて行った。
全ては覚悟の上だったのだから、今までの私は、ただエリナ達を守りたい。それだけで同じ魔法少女とも争っていたが、今は全ての魔法少女を守りたいに変わった。
力のない人間は、私達魔法少女に守られている。
なら、私達魔法少女は、誰が守ってくれるのか?
誰もいないではないか。
なら、一人位同じ魔法少女を守りたいと思ったって、罰は当たらない。
そうですよね? 七海さん。
痛む身体を引き摺りながら、階段を降りてリビングに向かう。
相変わらず暗い。
今日も帰って来ないんだ。
もう何日帰って来てないのだろうか?
お金を置いて行ってくれるから、食べるのにも遊ぶのにも困らないけど、偶には帰って来て一緒に食事してもいいのに。
両親が共に忙しいのはわかっている。
わかってはいるが、本当に偶には年に何回かでもいいから、一緒に食事をしたい。
もうどの位一緒に食べていないのかな? 莉絵は一人コンビニのお弁当を温めると、食べながら、早く陽菜ちゃんに接触しなければと考えていた。
きっとエリナは、陽菜ちゃんを潰す。
殺しはしないだろうけど、魔法少女として二度と立ち上がれない位に、徹底的に痛めつける。
そんなのは、絶対に駄目だ!
何としても守らないと、陽菜ちゃんも東の魔法少女も、西の魔法少女も私が守るんだと、七海の意思は私が受け継ぐんだと莉絵は一人寂しく食事をしながら、決意を新たにしていた。
「やり過ぎよ! 莉絵ちゃん可愛そうじゃない」
珍しく美代子が怒りを露わにしている。
普段は、とても穏やかで温厚な美代子だが、エリナと莉絵の事になると、感情を爆発させる時もある。
「仕方ないじゃん。裏切ろうとしたらこうなるんだって、周りにもわからせる必要あったんだし」
「だからって、あそこまでやらなくても。莉絵ちゃんじゃなかったら、死んでたかもしれないのよ」
見た目以上にタフな莉絵だからこそ耐えられたが、他の魔法少女なら失神して最悪命を落としていた可能性すらあったのだ。
美代子の怒りは収まらずに、反省するまではエッチ禁止ですからねと、そっぽを向いてしまった。
「ちょっ、それはないよ~」
猫撫で声で、勘弁してよと反省してるからと、エリナが美代子にすりすりしているが、美代子は知らないと、可愛い妹を苛めた罰ですと、エリナに厳しい。
「やり過ぎたとは思ってるよ。でも、莉絵が心変わりしたのが悲しかったんだよ」
自分でもやり過ぎたとは反省している。
だけど、莉絵の心変わりが悲しくて許せなかったのも本音である。
「わかるわよ。本当にどうしたの? って聞きたいし、莉絵ちゃんに何があったのか私だって知りたいんですから」
知りたいけれど、莉絵はいくら罰を与えても言わないだろう。
昔から、そう言うところがあった。
一人で何でも抱え込んでしまう癖が莉絵にはあったから、付き合いの長い二人はそれも理解している。
「両親の事も、全然言ってくれなかったし」
莉絵の両親は忙しいを理由に、殆ど家に帰って来ない。
莉絵はいつも一人で、寂しく過ごしていたのにも関わらず二人には、一切話していなかった。
おかしいと感じた二人が、莉絵に聞くまでは何も話さなかった。
だから今回も話さないだろう。
「寂しいけど仕方ありませんわ」
「うん。だから、今回の争いは莉絵は外すし話さない事にしようと思ってる」
争いたくない莉絵を巻き込みたくはない。そんな気持ちで、無理矢理参加させても、莉絵が心身共に傷付くだけだと、エリナは莉絵には内緒で行動すると、美代子に自分の気持ちを話した。
美代子は、参加させなくても争う事だけは莉絵にも伝えましょうと、お互いの為にと言ってくれたので、エリナもそれに同意して二人で、莉絵の家へと向かった。
鍵が掛けられていないのを知ってるので、お邪魔するよと言ってから、エリナは莉絵の家に入る。
美代子は、相変わらず不用心ですわねと言いつつも、エリナに続いて、莉絵の家にお邪魔する。
リビングに灯りが付いていたので、二人はそのままリビングに入ると、相変わらず莉絵は一人で食事をしていた。
「どうしたの? 二人して」
二人が入って来た事には、気付いてはいたのだが、身体中が痛いので今日は玄関にお出迎えはしなかった。
「怪我は痛む? 莉絵ちゃん我慢するから心配で」
「莉絵。やり過ぎたごめん」
「別に大丈夫だし、罰は受けないといけないし」
莉絵は、痛むけど問題はないと罰は受けて仕方ないと、謝るエリナに謝る必要はないと告げると、食べ終えた空の弁当箱をゴミ箱に捨てる。
部屋に行こうと、莉絵は二人を部屋に招き入れると、東との争いについてだよね? と二人が来た理由をわかっていた様だ。
「そう。東との争いは、今は止められない。向こうの考えもわからないしね。それで、今回は莉絵は外す事にしたから」
「戦わないから? 役に立たないからいても邪魔って事?」
「莉絵ちゃん。そうじゃなくて、怪我もしてるし、戦いたくないのに無理矢理は嫌だから」
美代子が説明してくれる。
「そう。私は戦わないし、東が不利だと判断したら、東を助けるかもよ。それでもエリナと美代子は、どうしても戦いたいの?」
もういい加減敵だ味方だは、終わりにしてもいいんじゃない? 私達魔法少女の敵はあくまでも、ダークメアなんだよと、莉絵は再度訴える。
莉絵の言葉に、美代子は多少なりとも理解を示すが、リーダーであるエリナは、それでも今は戦うと戦いの意志を示した。
「エリナ。私はエリナとは戦いたくないし……だからお願いだから、争いじゃなくて話し合いで解決しようよ」
「莉絵ごめん。一度戦わないと駄目なんだ。そうしてからじゃないと、話し合いは無理なんだよ」
どうして? どうして無理なの? と聞く莉絵にエリナは、ケジメだからと、その一言にエリナの考えの全てが集約されていた。
「莉絵ちゃん。莉絵ちゃんの気持ちはわかるわ。でも、これは私達のケジメでもあるのよ」
今まで争っていたのに、いきなり話し合いをしようと言っても、向こうも納得しないし疑うだけだ。
だから一度戦わないといけない。
戦ってから、頃合いを見て話し合いを持ちかける。
和平交渉に持っていく。それが、エリナと美代子の判断だった。
「私達は、馬鹿だから莉絵の気持ちを理解したくても出来ないから、でも魔法少女同士が争うなんてのは、馬鹿げてるとは思ってるんだよ」
「莉絵ちゃんの言った通りで、敵はダークメア。本当は魔法少女は協力しなくてはいけないと、ずっとわかってはいたのよ」
わかってはいたが、止めるに止められない状況にまで来ていた。
ずっと争いを続けていたから、簡単には止められない。
それがリーダーであるエリナと、エリナを補佐する美代子の判断だった。
「でも、向こうは三人なんだよ。こっちはエリナと美代子の二人なんだよ」
「いいや。二人対二人だよ。新しい魔法少女は、数には入らないさ。経験がないんだからね」
エリナの言う通りで、魔法少女との戦いはおろか、ダークメアとの戦いすら殆ど経験してない陽菜は、頭数には入らなかった。
「なら新しい魔法少女は潰さない?」
「約束するよ。攻撃してきたら反撃はするけれどね」
「約束するわ。可愛い妹の莉絵ちゃんを悲しませたくないから」
二人の言葉に莉絵は、やっと安心する事が出来た。
ケジメとしての争いなら、もう止める事は出来ない。
自分は、お互いが行き過ぎない様に見守る。
行き過ぎてると判断したら、身体を張ってでも争いを止める。
そう心に決めた。
エリナ達西側が判断を下したのと、同じ頃。
東も判断に迫られていた。
その理由は、陽菜が不貞腐れたからだった。
「聖さんもここあさんも、どうしても争いたいんですか? どうしてもと言うなら、私は参加せずに見守りますし、行き過ぎてると判断したら、全力で止めますから、どうせ私の言う事なんて聞いてくれないし」
と陽菜が不貞腐れた事で、聖とここあは争うのかの判断を、早急にしなくてはいけなくなってしまった。
「陽菜にゃん。そう不貞腐れないで」
「いいんですよ。どうせ私は役に立たないし、この前も怖くて泣き出したし、ここあさんに脅されてお漏らしはするし」
「もう! 朝比奈さん。そんなに投げやりにならなくても」
「いいんです。いいんです。聖さんは、いつまで経っても朝比奈さんって呼ぶし、陽菜って呼んでくれないし、お風呂だって一緒に入るのに、ここあさんとばかり楽しそうにするし」
どうしたらいいの? と二人は正直困ってしまった。
そんな二人に助け船が、救世主明里の登場である。
「陽菜ちゃんどうしたの? 何か拗ねてない?」
二人は明里に事情を説明する。
「そう言う事。なら早く判断してあげないと、陽菜ちゃんは戦って欲しくない。だけど二人には戦う理由がある。なら、その理由もちゃんと説明してあげなさい」
そう二人に助言すると、明里はヨシヨシと陽菜を慰める。
「どうして、聖さんもここあさんも西側との争いに拘るんですか? 七海さんの事が理由ですか?」
「私は違うわ。何て言うか一度戦ってから、話し合いをするのが、ケジメだって思ってるのよ」
聖の考えはエリナ達と同じで、長年争ってきている以上は、一度は拳を交える必要があると、その後に話し合いをして協定を結べばいいと考えている。
陽菜が、ならここあさんは? と聞くのでここあは仕方なく考えを述べる。
「うちは、七海の件は半信半疑だけど真実は知りたい。七海が亡くなった場所は、境界線ギリギリで西側だったから、真実を知れたら西側が嵌めたんじないって、それがわかったら争いをやめて話し合いをするにゃ」
真実を知ってる明里は、この場でここあに教えてあげたかったが、莉絵は自分から話したいと言っていたので、明里はなら一度だけ戦いなさいと、その後は話し合いをしなさいと、間には自分が入るからと言うので、さすがにそれは危ないですからと、聖とここあは止める。
「私は明里さんに、間に入って貰った方がいいと思います。魔法少女じゃない明里さんだからこそ、隔たりみたいのもないですし、向こうの魔法少女も納得してくれると、私は思いますけど」
陽菜の意見に二人は、首を縦には振れない。
振ってしまって、明里に何かあれば七海に申し訳が立たない。
七海との約束を守れなくなってしまう。
それだけは、絶対に避けなければいけないのだ。
「大丈夫よ。私の事は、陽菜ちゃんが守ってくれるんでしょ?」
「は、はい! 全力でお守りします」
「なら問題はなしと、二人が駄目って言っても私も一緒に行くから」
これは、もう何を言っても無駄だと二人は諦めて、わかりましたと了承するしかなかった。
東の魔法少女から、手紙が届いた。
その手紙には、戦いの場所と日時が記されていた。
争ってはいるが、不意打ちなどの卑怯な手をお互いに使った事はない。
必ず場所と日時を指定して争うのが、昔からの決まりである。
手紙を読みながら、莉絵はとうとう陽菜ちゃんに会えなかったと、出来るのなら争いの前に会いたかったと、でもきっと陽菜ちゃんなら、自分と同じで争いには参加しない筈。
二人で頃合いを見て、争いを止めよう。
そして話し合いをして、これからは仲良くしていくんだ。
七海さんの為にも。
その為には、真実を一年前の事を話さないといけない。
東の魔法少女から恨まれてもいい。
自分を恨んでもいいから、どうか魔法少女同士手を取り合って欲しい。
ダークメアが共通の敵なのだから、私達の敵はダークメアであり、同じ魔法少女ではない。
莉絵同様に、陽菜も共通の敵はダークメアであり魔法少女ではないと、だから今回を最後にして手を取り合う。
それが陽菜にとっての最大の目的であった。
争いが始まるまで、あと三日。
お互いに嫌でも緊張が高まっていく。
東と西の魔法少女が争う街に、一人の少女が足を踏み入れた。
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