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新たな魔法少女?
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東と西の戦いは、時間が経過するとともにヒートアップしていく。
戦ってる本人達はもちろん、観戦している陽菜や明里までもが、戦いから目を離せない。
誰もが戦いに集中していた為に、一人の少女が近付いている事に、誰も気付かなかった。
エリナと聖。
そして、ここあと美代子がお互いに攻撃を放った瞬間。
四人の攻撃が一筋の光に粉砕された。
「誰!?」
戦ってる四人は、一斉に同じ方向を見る。
観戦していた陽菜達も、同じ方向を見ると、そこには一人の少女が立っていた。
「どうして魔法少女同士で争っているのですか?」
まだ幼さの残る声。そして見た目は、自分達より年下だと思われる少女は、不思議そうに全員を見つめている。
「そして、どうして貴女達は止めずに観戦してるんですか?」
少女は、陽菜達を見て不思議そうな顔をしている。
「戦いは中止ね」
「仕方ないけど、邪魔が入ったし一時休戦って事でいい?」
「うちは、もっとやりたかったけど仕方ないにゃ」
「そうですね。先ずはあの少女が何者なのかを知る必要があります」
戦っていた四人は、陽菜達と合流すると東と西の戦いは一時休戦すると、そう宣言して戦いを終えた。
少女は不思議そうに、東と西?
同じ魔法少女だよね?
どうして争ってたの?
敵はダークメアじゃないの?
と立て続けに質問してきた。
「質問に答える前に、先ずは貴女は何者なの? 魔法少女?」
「聖さん。私達が知らない魔法少女なんて、この街にいるんですか?」
莉絵の質問は、誰もがしたい質問だった。同じ街に住んでいれば、お互いに魔法少女だよね? と、魔法少女の魔力を探知して存在を知る事が出来る。
だが目の前にいる少女の魔力は、初めて感じる魔力であり、そして力を抑えていると思われるが、それでも強大な魔力を有してる事は理解出来た。
聖は、私達は知らないわと答える。
「私達も知らないな。これだけの魔力を持ってるなら、絶対に気づくし」
エリナ達も知らないと答える。
ならこの少女は、違う土地から来た魔法少女と言う事になる。
「その可能性は高いですけど、この街以外には殆ど魔法少女はいませんよ」
美代子の言葉に、新米魔法少女の陽菜はそうなんですか? と聞いてしまう。
「陽菜だっけ? 君は魔法少女について殆ど知らないみたいだね」
エリナの言葉に、陽菜は素直に魔法少女になったばかりで、殆ど何も知らないんですと答える。
「私も知りたいわね」
明里も魔法少女について、教えて欲しい様だ。
七海は殆ど魔法少女については、明里に話さなかった。その為に明里も魔法少女については、殆ど無知と言ってもいい。
「取り敢えず教えるのは後にして、先ず君は私達の敵なのかな? それとも味方かい?」
答え次第では、可哀想だが消す必要があるとエリナは、少女を鋭く睨みつける。
「私は月って言うの。魔法少女とは、ちょっと違うけど敵じゃないよ。だって敵はダークメアでしょ」
月と名乗った少女は、自分は敵じゃないとある魔法少女を探して、ずっとずっと旅してるのだと、でも肝心の魔法少女の名前を思い出せなくて、世界中を旅して、この街に辿り着いたんだよと、小さな子供の様に無邪気に答える。
「聖、どう思うかにゃ? うちは敵には思えないんだけど」
「そうね。悪意は感じないし大丈夫じゃないかしら、エリナ達はどう思う?」
意見を求められたエリナ達は、自分達も敵とは思えないと、だが月の話してる内容はよくわからないとも答える。
月は、嘘じゃないんだよと本当なんだからと何度も訴えている。
「聖さん。私は信用しても大丈夫だと思います。月さんが、魔法少女じゃなくても味方ならいいと思いますし」
「私も陽菜ちゃんの意見に賛成かな。何かの事情で、記憶の一部を失ってるだけなんだと思うし」
陽菜と莉絵の言葉に明里も賛同した事で
ようやく聖達は、月の言ってる事を認める事にした。
「話は変わるけど、莉絵にゃん」
「はい。えっと一発殴る件ですよね。どうぞ何発でも」
「やっぱりいいにゃ。戦っていて、うちなりに七海が助けた理由が、少しわかったし」
そう言うと、ここあは宜しくねと手を差し出すので、莉絵はここあの手を握りながら宜しくお願いしますと頭を下げる。
手を握り合う二人を見て、エリナも美代子もそして、聖も最初からこうしてれば良かったのだと、そうすれば犠牲を少なく抑えられたのにと、後悔してしまう。
「えっと、月の探してる魔法少女知ってる? 月を作ってくれた魔法少女を」
作ってくれた? その言葉に全員が一斉に月を見る。
「どう言う事かしら? 月ちゃんだっけ? 貴女は人間じゃないの?」
明里が代表した形で質問した。
「えっと、月お腹空いたから、ご飯食べながらでいい?」
「それなら、私の家に行きましょう。ここからなら、一番近いので」
莉絵の家に行く事にして、魔法少女達と明里。そして月と名乗った少女は、戦いの場を後にした。
余程お腹が空いていたのか、月は宅配ピザを何これ? 美味しいんだけどと言いながら次々と完食していく。
「あの小さな身体の何処に入るんでしょうか?」
同じチビっ子である陽菜は、月の食欲に驚きを隠せない。
陽菜だけじょなくて、その場の全員が同じ意見の様だ。
「これも食べていい? この、えっと、なんか、赤いのつけるやつ」
「チキンナゲットね。どうぞ。そして、赤いのはケチャップよ」
どうやら月には、一般的な常識や知識が欠けている様に見えた。
美代子は、月を気に入ったのか甲斐甲斐しくお世話をしている。
「美代子の母性に火がついた」
「うん。美代子って、本当に年下の世話焼くの好きだよね」
エリナと莉絵が話しているのを聞きながら、聖は月を観察している。
あの小さい身体の何処に、あれ程の魔力が?
自分達四人の攻撃を、最も簡単に消し去ってしまった。
敵じゃなくて本当に良かった。
もし月が敵なら、かなり厄介な敵になってしまう。
新米の陽菜は抜かすとしても、自分達五人が協力しなければ、立ち向かうのは難しいと思われた。
「食べながらでいいんどけど、質問に答えてちょうだい」
聖の言葉に月は、うんうんと首を縦に振りながら黙々とピザとナゲットを食べている。
「月は何歳なの? 何処から来たの? そして作られたの意味を教えて」
食べる事に一段楽したのか、月は口の周りをケチャップだらけにして、質問に答えようとしたので、美代子が口を拭いてからねと月の口を綺麗にしてくれた。
「お姉ちゃんありがとう。えっと歳はわかんない。聞いてないから、何処からって、えっと目が覚めて、何か機械みたいのが沢山ある建物から来たの。そして作られたは本当だよ。月はじ、じ、じ、じ」
じ? 全員がじって何? って顔をしている。
月は必死にじの後を伝えようとするが、中々出てこない様で、じとひたすらに繰り返している。
そんな月を見ながら、明里がもしかして人工生命体じゃないと、物語ではよくあるでしょと言うと、月はそれっ! と元気良く答えた。
「えっと、名前思い出せないけど、月を作ってくれた魔法少女が、そう言ってた」
月が人工生命体?
俄には信じられない。
「月、ちょっと身体検査してもいいかな?」
「いいけど、痛いのは嫌いだよ」
「痛くはしないから、裸になって欲しいのよ」
魔法少女なら、刻印が刻まれているので、刻印があれば、月は魔法少女と言う事で、記憶を無くした魔法少女で解決すると、聖は月に服を脱ぐ様にお願いする。
恥ずかしさの概念が薄いのか、それとも同じ女の子同士だからなのかはわからないが、月はわかったと言うと、あっさりと裸になってしまった。
「美代子さん、刻印は見える?」
月の隣りにいる美代子に確認する。
美代子は、裸の月を隈なく確認していく。
まだ幼い乳房も、陰毛すら生えていない女の子の部分も、普通の女の子なら恥ずかしさで勘弁してくださいと、泣きたくなる位に隅々まで調べたが、月の身体には刻印はなかった。
「ありませんわ。どう言う事でしょうか?」
さすがの美代子も、驚きを隠せない様でかなり困惑している。
私が、うちが、私もと結局明里以外の全員が月の身体を隈なく調べたのだが、月には魔法少女の証である刻印はなかった。
魔法少女ではない明里は、刻印って胸の所にあるやつよねと、七海のを見ていたので、その程度の知識だけはある。
「はい。私達魔法少女は、必ず胸の所に刻印があります」
そう言うと、莉絵は自分も上半身裸になって、明里と月に刻印を見せる。
「莉絵ちゃんにも刻印はある。そして七海にもあったし、出来れば他の皆んなのも見せてくれないかしら」
明里は、疑う訳ではないがもしかしたら刻印がない魔法少女もいるのではと、その可能性も考えていた。
「構いませんけど、さすがに皆んなの前で脱ぐのは」
胸の小ささを気にしてる聖は、別の部屋でとお願いしたのだが、明里は敢えて拒否した。
「恥ずかしいのはわかるんだけど、魔法少女全員があるなら、それを月ちゃんに見せて、どうして月ちゃんにはないかを、もう一度聞きたいのよ。だからお願い」
明里のお願いに、聖以外はわかりましたと答えたのだが、聖だけは最後まで抵抗を試みたのだが、往生際が悪いにゃ! とここあに押さえつけられて、結局はエリナに脱がされてしまった。
無理矢理なんて酷いしと、落ち込む聖を無視して明里は、一人一人の刻印を確認して行く。
やはり全員に刻印は刻まれていた。
となると、月は魔法少女ではない。
人工生命体と言うのは、突飛過ぎるが聖達とは、また違う存在なのは確かだ。
「って私は思うんだけど、皆んなはどうかな?」
服を来た全員が、明里の意見に同意する。美代子も、いつまでも洋服を着ない月に洋服を着せながら、人工生命体である可能性はあると思いますと、ただ本当なら月を生み出した魔法少女は、とてつもない魔力の持ち主ですと付け加える。
そうなんですか? と何も知らない陽菜が美代子を見るので、美代子が分かり易く説明してくれた。
基本魔法少女は母親から、魔法少女としての力を受け継ぐ。
母親の魔力もあるが、本人のキャパ次第では強大な魔力を有する事も可能である。
しかし、新たな命をゼロから作り出すのは、不可能とは言わないが一人の魔法少女が持ちうる魔力では、現実的に不可能である。
生み出せたとしても、その魔法少女は確実に命を落とす事になる。
そして、魔法少女の歴史の中で魔力で新たな命を生み出したと言う話は、聞いた事がないと説明して、美代子は説明を終えた。
「朝比奈さん。わかった?」
「何となくですけど、つまりどんなに凄い魔法少女でも、一人では不可能って事で、もし複数いたら可能って事でいいんですよね?」
「それは、そうだねとは言えないんだよ新米ちゃん」
エリナが陽菜の意見を軽く否定する。
「どうしてですか? 例えば聖さんやエリナさんの様な魔法少女が、私を抜かして此処にいる魔法少女全員の魔力があれば、可能なんじゃないんですか?」
「確かに、生み出す事は可能かもしれないにゃ。でも、生み出した命を生かし続けるとなると話しは別にゃ」
ここあの話しで、陽菜はますますわからなくなってしまう。
キョロキョロと、皆んなを見やる陽菜に明里が助け舟を出してくれた。
「つまりは、生み出した魔法少女は、生み出してくれた魔法少女の魔力がないと、生きていけないって事よね」
そうですとここあが頷く。
「新米ちゃんが、生きて行くのに必要なのは食べ物とかの栄養だよね。それと同じで生み出された魔法少女は、常に魔力の供給を受けてないと死んでしまうって事」
陽菜を含めた人間は、食糧から栄養を吸収する事で、命を繋いでいく。それと同様で生み出された魔法少女は、魔力の供給で生きていける。
魔力の供給が途絶えれば、待っているのは死である。
理屈はわかったが、なら目の前にいる月と言う少女はどうして生きているのか、それがわからない。
「魔力の供給って、離れていても可能なんですか?」
魔法少女全員が首を横に振る。
結論は無理である。
魔力を供給するには、確実に供給する相手が見える範囲内にいなければ、供給する事は不可能である。
だから全員が悩んでいるのだ。
月が現れた時も、そして今も月の近くに他の魔法少女の気配も魔力もない。
「ならどうして、月さんは普通に生きてるんですか? 」
その答えがわかれば、こんなにも頭を悩ませないにゃと、ここあが溜め息を吐く。
ここあだけじゃなくて、全員が月って何者なの? 本当に生み出された存在なの?
それとも刻印を隠す事が出来るの?
魔法少女? それとも魔法少女とは違う存在なの? と頭を抱えてしまった。
そんな中当の本人だけが、これも食べていい? と今度はサラダに手を伸ばしていた。
結局答えは見つからずに、月は聖が預かる事にした。
聖の家には緋がいるので、聖達が学校の間も安心だと言う理由からである。
「取り敢えず、何かわかったら連絡して」
「わかったわ」
「やっと手を取り合う時が来たんですね。やっと七海さんに、七海さんの墓前に良い報告が出来ます」
「そうね。私も協力するから、何でも言ってね」
莉絵は明里に頭を下げる。
こうして、長年続いた東と西の争いは形の上では終止符を、言葉の上では休戦となった。
一つ片付けば、新たな問題が起きる。
今度は月と言う少女の事を知る必要が、もし月が本人の言う通りで、生み出された存在なら、月を生み出した魔法少女は強大な魔力の持ち主と言う事になる。
その魔法少女が、味方なのか、それとも敵なのか、それを知る必要もある。
聖は、月の手を握りながら、魔法少女にはいつ平穏な日々が訪れるのかしらねと、早く平穏になって、普通の女の子として恋愛したいわねと、陽菜を見ながら思ってしまった。
聖に見つめられた陽菜は、どうしました? と聖を見つめている。
「朝比奈さん。えっと、今から陽菜って呼ぶ事にするわ」
「本当ですか!? 」
「ええ、また不貞腐れられても面倒だし、魔法少女仲間として、信頼を込めてね」
「聖は、素直じゃないにゃ。本当は陽菜にゃんのパイパンに興味があるくせに」
「そ、それはここあでしょ! 」
「うちは興味津々だし、聖は興味がないのかにゃ? 」
「そ、それは……」
「パイパンって何?」
「月ちゃんは、まだ知らなくていいのよ。もう月ちゃんの前で、変な事言わないの! 」
「すいません」
明里に怒られてしまった。
「でも、陽菜ちゃんはパイパンなのね」
「明里さん?」
「興味深いわ。今度見せてね」
「明里さんこそ、何言ってるんですか! 」
いいじゃない見てみたいのよと、明里は陽菜にお願いねと陽菜の手を握る。
「み、見せるだけなら」
「約束よ! 絶対にだからね。陽菜ちゃんと月ちゃんの、ダブルパイパンなんて、夢のようだわ」
明里は、自分の世界に入ってしまった。
そんな明里を見ながら、こんな平和な時間が永遠に続けばいいなと、皆んなで楽しく過ごして行きたいと、そう思う陽菜だった。
戦ってる本人達はもちろん、観戦している陽菜や明里までもが、戦いから目を離せない。
誰もが戦いに集中していた為に、一人の少女が近付いている事に、誰も気付かなかった。
エリナと聖。
そして、ここあと美代子がお互いに攻撃を放った瞬間。
四人の攻撃が一筋の光に粉砕された。
「誰!?」
戦ってる四人は、一斉に同じ方向を見る。
観戦していた陽菜達も、同じ方向を見ると、そこには一人の少女が立っていた。
「どうして魔法少女同士で争っているのですか?」
まだ幼さの残る声。そして見た目は、自分達より年下だと思われる少女は、不思議そうに全員を見つめている。
「そして、どうして貴女達は止めずに観戦してるんですか?」
少女は、陽菜達を見て不思議そうな顔をしている。
「戦いは中止ね」
「仕方ないけど、邪魔が入ったし一時休戦って事でいい?」
「うちは、もっとやりたかったけど仕方ないにゃ」
「そうですね。先ずはあの少女が何者なのかを知る必要があります」
戦っていた四人は、陽菜達と合流すると東と西の戦いは一時休戦すると、そう宣言して戦いを終えた。
少女は不思議そうに、東と西?
同じ魔法少女だよね?
どうして争ってたの?
敵はダークメアじゃないの?
と立て続けに質問してきた。
「質問に答える前に、先ずは貴女は何者なの? 魔法少女?」
「聖さん。私達が知らない魔法少女なんて、この街にいるんですか?」
莉絵の質問は、誰もがしたい質問だった。同じ街に住んでいれば、お互いに魔法少女だよね? と、魔法少女の魔力を探知して存在を知る事が出来る。
だが目の前にいる少女の魔力は、初めて感じる魔力であり、そして力を抑えていると思われるが、それでも強大な魔力を有してる事は理解出来た。
聖は、私達は知らないわと答える。
「私達も知らないな。これだけの魔力を持ってるなら、絶対に気づくし」
エリナ達も知らないと答える。
ならこの少女は、違う土地から来た魔法少女と言う事になる。
「その可能性は高いですけど、この街以外には殆ど魔法少女はいませんよ」
美代子の言葉に、新米魔法少女の陽菜はそうなんですか? と聞いてしまう。
「陽菜だっけ? 君は魔法少女について殆ど知らないみたいだね」
エリナの言葉に、陽菜は素直に魔法少女になったばかりで、殆ど何も知らないんですと答える。
「私も知りたいわね」
明里も魔法少女について、教えて欲しい様だ。
七海は殆ど魔法少女については、明里に話さなかった。その為に明里も魔法少女については、殆ど無知と言ってもいい。
「取り敢えず教えるのは後にして、先ず君は私達の敵なのかな? それとも味方かい?」
答え次第では、可哀想だが消す必要があるとエリナは、少女を鋭く睨みつける。
「私は月って言うの。魔法少女とは、ちょっと違うけど敵じゃないよ。だって敵はダークメアでしょ」
月と名乗った少女は、自分は敵じゃないとある魔法少女を探して、ずっとずっと旅してるのだと、でも肝心の魔法少女の名前を思い出せなくて、世界中を旅して、この街に辿り着いたんだよと、小さな子供の様に無邪気に答える。
「聖、どう思うかにゃ? うちは敵には思えないんだけど」
「そうね。悪意は感じないし大丈夫じゃないかしら、エリナ達はどう思う?」
意見を求められたエリナ達は、自分達も敵とは思えないと、だが月の話してる内容はよくわからないとも答える。
月は、嘘じゃないんだよと本当なんだからと何度も訴えている。
「聖さん。私は信用しても大丈夫だと思います。月さんが、魔法少女じゃなくても味方ならいいと思いますし」
「私も陽菜ちゃんの意見に賛成かな。何かの事情で、記憶の一部を失ってるだけなんだと思うし」
陽菜と莉絵の言葉に明里も賛同した事で
ようやく聖達は、月の言ってる事を認める事にした。
「話は変わるけど、莉絵にゃん」
「はい。えっと一発殴る件ですよね。どうぞ何発でも」
「やっぱりいいにゃ。戦っていて、うちなりに七海が助けた理由が、少しわかったし」
そう言うと、ここあは宜しくねと手を差し出すので、莉絵はここあの手を握りながら宜しくお願いしますと頭を下げる。
手を握り合う二人を見て、エリナも美代子もそして、聖も最初からこうしてれば良かったのだと、そうすれば犠牲を少なく抑えられたのにと、後悔してしまう。
「えっと、月の探してる魔法少女知ってる? 月を作ってくれた魔法少女を」
作ってくれた? その言葉に全員が一斉に月を見る。
「どう言う事かしら? 月ちゃんだっけ? 貴女は人間じゃないの?」
明里が代表した形で質問した。
「えっと、月お腹空いたから、ご飯食べながらでいい?」
「それなら、私の家に行きましょう。ここからなら、一番近いので」
莉絵の家に行く事にして、魔法少女達と明里。そして月と名乗った少女は、戦いの場を後にした。
余程お腹が空いていたのか、月は宅配ピザを何これ? 美味しいんだけどと言いながら次々と完食していく。
「あの小さな身体の何処に入るんでしょうか?」
同じチビっ子である陽菜は、月の食欲に驚きを隠せない。
陽菜だけじょなくて、その場の全員が同じ意見の様だ。
「これも食べていい? この、えっと、なんか、赤いのつけるやつ」
「チキンナゲットね。どうぞ。そして、赤いのはケチャップよ」
どうやら月には、一般的な常識や知識が欠けている様に見えた。
美代子は、月を気に入ったのか甲斐甲斐しくお世話をしている。
「美代子の母性に火がついた」
「うん。美代子って、本当に年下の世話焼くの好きだよね」
エリナと莉絵が話しているのを聞きながら、聖は月を観察している。
あの小さい身体の何処に、あれ程の魔力が?
自分達四人の攻撃を、最も簡単に消し去ってしまった。
敵じゃなくて本当に良かった。
もし月が敵なら、かなり厄介な敵になってしまう。
新米の陽菜は抜かすとしても、自分達五人が協力しなければ、立ち向かうのは難しいと思われた。
「食べながらでいいんどけど、質問に答えてちょうだい」
聖の言葉に月は、うんうんと首を縦に振りながら黙々とピザとナゲットを食べている。
「月は何歳なの? 何処から来たの? そして作られたの意味を教えて」
食べる事に一段楽したのか、月は口の周りをケチャップだらけにして、質問に答えようとしたので、美代子が口を拭いてからねと月の口を綺麗にしてくれた。
「お姉ちゃんありがとう。えっと歳はわかんない。聞いてないから、何処からって、えっと目が覚めて、何か機械みたいのが沢山ある建物から来たの。そして作られたは本当だよ。月はじ、じ、じ、じ」
じ? 全員がじって何? って顔をしている。
月は必死にじの後を伝えようとするが、中々出てこない様で、じとひたすらに繰り返している。
そんな月を見ながら、明里がもしかして人工生命体じゃないと、物語ではよくあるでしょと言うと、月はそれっ! と元気良く答えた。
「えっと、名前思い出せないけど、月を作ってくれた魔法少女が、そう言ってた」
月が人工生命体?
俄には信じられない。
「月、ちょっと身体検査してもいいかな?」
「いいけど、痛いのは嫌いだよ」
「痛くはしないから、裸になって欲しいのよ」
魔法少女なら、刻印が刻まれているので、刻印があれば、月は魔法少女と言う事で、記憶を無くした魔法少女で解決すると、聖は月に服を脱ぐ様にお願いする。
恥ずかしさの概念が薄いのか、それとも同じ女の子同士だからなのかはわからないが、月はわかったと言うと、あっさりと裸になってしまった。
「美代子さん、刻印は見える?」
月の隣りにいる美代子に確認する。
美代子は、裸の月を隈なく確認していく。
まだ幼い乳房も、陰毛すら生えていない女の子の部分も、普通の女の子なら恥ずかしさで勘弁してくださいと、泣きたくなる位に隅々まで調べたが、月の身体には刻印はなかった。
「ありませんわ。どう言う事でしょうか?」
さすがの美代子も、驚きを隠せない様でかなり困惑している。
私が、うちが、私もと結局明里以外の全員が月の身体を隈なく調べたのだが、月には魔法少女の証である刻印はなかった。
魔法少女ではない明里は、刻印って胸の所にあるやつよねと、七海のを見ていたので、その程度の知識だけはある。
「はい。私達魔法少女は、必ず胸の所に刻印があります」
そう言うと、莉絵は自分も上半身裸になって、明里と月に刻印を見せる。
「莉絵ちゃんにも刻印はある。そして七海にもあったし、出来れば他の皆んなのも見せてくれないかしら」
明里は、疑う訳ではないがもしかしたら刻印がない魔法少女もいるのではと、その可能性も考えていた。
「構いませんけど、さすがに皆んなの前で脱ぐのは」
胸の小ささを気にしてる聖は、別の部屋でとお願いしたのだが、明里は敢えて拒否した。
「恥ずかしいのはわかるんだけど、魔法少女全員があるなら、それを月ちゃんに見せて、どうして月ちゃんにはないかを、もう一度聞きたいのよ。だからお願い」
明里のお願いに、聖以外はわかりましたと答えたのだが、聖だけは最後まで抵抗を試みたのだが、往生際が悪いにゃ! とここあに押さえつけられて、結局はエリナに脱がされてしまった。
無理矢理なんて酷いしと、落ち込む聖を無視して明里は、一人一人の刻印を確認して行く。
やはり全員に刻印は刻まれていた。
となると、月は魔法少女ではない。
人工生命体と言うのは、突飛過ぎるが聖達とは、また違う存在なのは確かだ。
「って私は思うんだけど、皆んなはどうかな?」
服を来た全員が、明里の意見に同意する。美代子も、いつまでも洋服を着ない月に洋服を着せながら、人工生命体である可能性はあると思いますと、ただ本当なら月を生み出した魔法少女は、とてつもない魔力の持ち主ですと付け加える。
そうなんですか? と何も知らない陽菜が美代子を見るので、美代子が分かり易く説明してくれた。
基本魔法少女は母親から、魔法少女としての力を受け継ぐ。
母親の魔力もあるが、本人のキャパ次第では強大な魔力を有する事も可能である。
しかし、新たな命をゼロから作り出すのは、不可能とは言わないが一人の魔法少女が持ちうる魔力では、現実的に不可能である。
生み出せたとしても、その魔法少女は確実に命を落とす事になる。
そして、魔法少女の歴史の中で魔力で新たな命を生み出したと言う話は、聞いた事がないと説明して、美代子は説明を終えた。
「朝比奈さん。わかった?」
「何となくですけど、つまりどんなに凄い魔法少女でも、一人では不可能って事で、もし複数いたら可能って事でいいんですよね?」
「それは、そうだねとは言えないんだよ新米ちゃん」
エリナが陽菜の意見を軽く否定する。
「どうしてですか? 例えば聖さんやエリナさんの様な魔法少女が、私を抜かして此処にいる魔法少女全員の魔力があれば、可能なんじゃないんですか?」
「確かに、生み出す事は可能かもしれないにゃ。でも、生み出した命を生かし続けるとなると話しは別にゃ」
ここあの話しで、陽菜はますますわからなくなってしまう。
キョロキョロと、皆んなを見やる陽菜に明里が助け舟を出してくれた。
「つまりは、生み出した魔法少女は、生み出してくれた魔法少女の魔力がないと、生きていけないって事よね」
そうですとここあが頷く。
「新米ちゃんが、生きて行くのに必要なのは食べ物とかの栄養だよね。それと同じで生み出された魔法少女は、常に魔力の供給を受けてないと死んでしまうって事」
陽菜を含めた人間は、食糧から栄養を吸収する事で、命を繋いでいく。それと同様で生み出された魔法少女は、魔力の供給で生きていける。
魔力の供給が途絶えれば、待っているのは死である。
理屈はわかったが、なら目の前にいる月と言う少女はどうして生きているのか、それがわからない。
「魔力の供給って、離れていても可能なんですか?」
魔法少女全員が首を横に振る。
結論は無理である。
魔力を供給するには、確実に供給する相手が見える範囲内にいなければ、供給する事は不可能である。
だから全員が悩んでいるのだ。
月が現れた時も、そして今も月の近くに他の魔法少女の気配も魔力もない。
「ならどうして、月さんは普通に生きてるんですか? 」
その答えがわかれば、こんなにも頭を悩ませないにゃと、ここあが溜め息を吐く。
ここあだけじゃなくて、全員が月って何者なの? 本当に生み出された存在なの?
それとも刻印を隠す事が出来るの?
魔法少女? それとも魔法少女とは違う存在なの? と頭を抱えてしまった。
そんな中当の本人だけが、これも食べていい? と今度はサラダに手を伸ばしていた。
結局答えは見つからずに、月は聖が預かる事にした。
聖の家には緋がいるので、聖達が学校の間も安心だと言う理由からである。
「取り敢えず、何かわかったら連絡して」
「わかったわ」
「やっと手を取り合う時が来たんですね。やっと七海さんに、七海さんの墓前に良い報告が出来ます」
「そうね。私も協力するから、何でも言ってね」
莉絵は明里に頭を下げる。
こうして、長年続いた東と西の争いは形の上では終止符を、言葉の上では休戦となった。
一つ片付けば、新たな問題が起きる。
今度は月と言う少女の事を知る必要が、もし月が本人の言う通りで、生み出された存在なら、月を生み出した魔法少女は強大な魔力の持ち主と言う事になる。
その魔法少女が、味方なのか、それとも敵なのか、それを知る必要もある。
聖は、月の手を握りながら、魔法少女にはいつ平穏な日々が訪れるのかしらねと、早く平穏になって、普通の女の子として恋愛したいわねと、陽菜を見ながら思ってしまった。
聖に見つめられた陽菜は、どうしました? と聖を見つめている。
「朝比奈さん。えっと、今から陽菜って呼ぶ事にするわ」
「本当ですか!? 」
「ええ、また不貞腐れられても面倒だし、魔法少女仲間として、信頼を込めてね」
「聖は、素直じゃないにゃ。本当は陽菜にゃんのパイパンに興味があるくせに」
「そ、それはここあでしょ! 」
「うちは興味津々だし、聖は興味がないのかにゃ? 」
「そ、それは……」
「パイパンって何?」
「月ちゃんは、まだ知らなくていいのよ。もう月ちゃんの前で、変な事言わないの! 」
「すいません」
明里に怒られてしまった。
「でも、陽菜ちゃんはパイパンなのね」
「明里さん?」
「興味深いわ。今度見せてね」
「明里さんこそ、何言ってるんですか! 」
いいじゃない見てみたいのよと、明里は陽菜にお願いねと陽菜の手を握る。
「み、見せるだけなら」
「約束よ! 絶対にだからね。陽菜ちゃんと月ちゃんの、ダブルパイパンなんて、夢のようだわ」
明里は、自分の世界に入ってしまった。
そんな明里を見ながら、こんな平和な時間が永遠に続けばいいなと、皆んなで楽しく過ごして行きたいと、そう思う陽菜だった。
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