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プロローグ
無職ニートは発見する
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その日、鈴城真人は変な女子高生に出会った。女子高生と話したことなど生涯で一度もない真人ニートが、特に面識のないJKをstrangeと断定するのは中々滑稽だと思われるかもしれない。しかしそう表現するに足るほど、異質な身なりをした女子高生が居たのだ。
ピンク色のカーディガンを着こなし、ピンク色の鞄を背負い、ピンク色のスカートを履いて、ピンク色の靴下を身につけていた。何なら白シャツの襟部分にもピンク色で刺繍が入っているし、手首に巻いているミサンガらしきものもピンク色だった。どこからどう見ても、普通の女子高生じゃない。もしや原宿などではこう言ったファッションがチヤホヤされているのかもしれない。世界最先端をいくナウでヤングな流行りを理解するなど万年引きこもりの真人には酷な話だった。
しかしここは渋谷でも原宿でもニューヨークでもない。東海地方の田舎街だ。イオンにババア服しか売っていないような街だ。そんな十数年遅れて流行が入ってくるような田舎町に、その女子高生の格好はポツンと、まるで違う世界を生きている人のように写っていた。
久しぶりに電車に乗って街に出たので、一瞬だけだが真人の脳内にはこれが女子高生のスタンダードなのかと認識しかけた。でも違う。改札近くのエレベーターで話している女子高生は、紺のスカートに白シャツだ。ピンクのピの字もない。やはり変だ。変な女子高生に出会った。改札を出てバスのターミナルに乗り換えようと階段に足をかけた午後5時。半分地平線に沈んだ太陽が冬の予告をしていたそんな時に、
「すみません!」
大きな声が聞こえた。ターミナルへ向けて階段を登ろうとしていた真人は、その声に反応して足を止めてしまった。しかし、その構内には他に数人居たのだが、誰1人としては足を止めなかった。見て見ぬ振りをしたのだろうか?確かに彼女の見た目では、そうしたくなる気持ちもわかるが。
しかしそうして足を止めてしまったのが全ての始まりであり、全ての終わりだった。サラリーマンや子連れの主婦なんて全く見ようともせず、ピンクJKはぐんぐんとこちらに近づいてきた。真人は正直逃げたかった。でも彼にとって、家族以外の人に話しかけられたのは本当に久し振りだったから、驚きが勝って硬直してしまったのだ。
「すみません!!!聞こえてますよね???聞こえてますよね???■■■■■■!!!」
何で言ったのだろう。脳がノイズをかけたかのように、その名前だけ全く聞こえなかった。真人は手を掴まれて、そのまま階段から下ろされた。階段わきには、今は使われていないエレベータがある。廃線をきっかけに三角コーンが置かれているが、その手前で2人は向かい合った。
「■■■■■■!!!!!■■■■■■!!!覚えていませんか?覚えていないんですか??」
真人は混乱して何も言えないまま目をうつろに動かしていた。あわあわと言葉にならない何かを発していた。いやそれはいつも通りかもしれない。
「覚えていないみたいですね……」
「どっどっどなた……」
ようやくどなたですかと聞こうとしたその時に、ピンク色の少女は真人の首に手をまわしてきた。真正面から少女の顔を見た。二重に長いまつ毛に少し鼻先についたそばかす。雀卵斑があるのに、美人だなと真人は思った。だけどその顔に覚えはなかった。真人の覚えている女性なんて、母親以外いないのだが。
少女は徐々に顔を近づけてきた。このペースなら、ものの数秒で唇が触れてしまう。
「え?ちょっと、やめ……」
「お願い」
少女は有無を言わさなかった。
「お願い。キスしてあげるから、この世界を救って」
そう言った少女の顔を再度確認する暇もないまま、真人の視界は暗転してしまった。
ピンク色のカーディガンを着こなし、ピンク色の鞄を背負い、ピンク色のスカートを履いて、ピンク色の靴下を身につけていた。何なら白シャツの襟部分にもピンク色で刺繍が入っているし、手首に巻いているミサンガらしきものもピンク色だった。どこからどう見ても、普通の女子高生じゃない。もしや原宿などではこう言ったファッションがチヤホヤされているのかもしれない。世界最先端をいくナウでヤングな流行りを理解するなど万年引きこもりの真人には酷な話だった。
しかしここは渋谷でも原宿でもニューヨークでもない。東海地方の田舎街だ。イオンにババア服しか売っていないような街だ。そんな十数年遅れて流行が入ってくるような田舎町に、その女子高生の格好はポツンと、まるで違う世界を生きている人のように写っていた。
久しぶりに電車に乗って街に出たので、一瞬だけだが真人の脳内にはこれが女子高生のスタンダードなのかと認識しかけた。でも違う。改札近くのエレベーターで話している女子高生は、紺のスカートに白シャツだ。ピンクのピの字もない。やはり変だ。変な女子高生に出会った。改札を出てバスのターミナルに乗り換えようと階段に足をかけた午後5時。半分地平線に沈んだ太陽が冬の予告をしていたそんな時に、
「すみません!」
大きな声が聞こえた。ターミナルへ向けて階段を登ろうとしていた真人は、その声に反応して足を止めてしまった。しかし、その構内には他に数人居たのだが、誰1人としては足を止めなかった。見て見ぬ振りをしたのだろうか?確かに彼女の見た目では、そうしたくなる気持ちもわかるが。
しかしそうして足を止めてしまったのが全ての始まりであり、全ての終わりだった。サラリーマンや子連れの主婦なんて全く見ようともせず、ピンクJKはぐんぐんとこちらに近づいてきた。真人は正直逃げたかった。でも彼にとって、家族以外の人に話しかけられたのは本当に久し振りだったから、驚きが勝って硬直してしまったのだ。
「すみません!!!聞こえてますよね???聞こえてますよね???■■■■■■!!!」
何で言ったのだろう。脳がノイズをかけたかのように、その名前だけ全く聞こえなかった。真人は手を掴まれて、そのまま階段から下ろされた。階段わきには、今は使われていないエレベータがある。廃線をきっかけに三角コーンが置かれているが、その手前で2人は向かい合った。
「■■■■■■!!!!!■■■■■■!!!覚えていませんか?覚えていないんですか??」
真人は混乱して何も言えないまま目をうつろに動かしていた。あわあわと言葉にならない何かを発していた。いやそれはいつも通りかもしれない。
「覚えていないみたいですね……」
「どっどっどなた……」
ようやくどなたですかと聞こうとしたその時に、ピンク色の少女は真人の首に手をまわしてきた。真正面から少女の顔を見た。二重に長いまつ毛に少し鼻先についたそばかす。雀卵斑があるのに、美人だなと真人は思った。だけどその顔に覚えはなかった。真人の覚えている女性なんて、母親以外いないのだが。
少女は徐々に顔を近づけてきた。このペースなら、ものの数秒で唇が触れてしまう。
「え?ちょっと、やめ……」
「お願い」
少女は有無を言わさなかった。
「お願い。キスしてあげるから、この世界を救って」
そう言った少女の顔を再度確認する暇もないまま、真人の視界は暗転してしまった。
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