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豹変
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「レイチェル様……」
「は、はい!」
突然こちらを向いて至近距離まで顔を近づけてくるので声が裏返ってしまった。
こんな時なのに顔がいい。彼の顔面が整い過ぎて辛い。
「その日は僕も王宮へお供します」
「へっ……? リヒャルト様も?」
「はい。僕と貴女が不仲だという情報が原因なら、それは間違いだと知ってもらえばよろしい。二人の仲は何人たりとも裂けないのだと理解してもらいましょう」
「えーっと…………つまり、王宮で私達が仲睦まじくする様を見せつけるということですか?」
自信満々に頷くリヒャルトに唖然としてしまった。
実際に不仲だったことは間違いないし、何ならさっきまで離縁の話も出ていたくらいだし。何人たりとも二人の仲を裂けないというほど良い仲ではないよ?
「そんなことをしたくらいで諦めるような単純な方ではないと思うのですが……」
まだ確定ではないが、私達夫婦が不仲と聞きつけてこれ幸いと自分の息子を押し付けようとする女が仲の良い様を見せつけたくらいで諦めるとは思えない。
「そうですか? 貴女が僕無しでは生きられない体だと知れば諦めると思いません?」
「王宮で何をするおつもりですか…………?」
何だその含みのある言い方は……。
あ、ちょっと、どさくさに紛れて私の手にキスするんじゃない!
「大丈夫です。公序良俗に反する行いは致しません」
「その発言からして不安しかありません! だいたいどうして急にこんな態度が豹変したのです!? 貴方は私に冷たかったではありませんか?」
「恥ずかしながらその通りです。従者にも指摘されましたが、僕の態度は紳士的ではなかったうえにシスカ家の婿としても相応しくなかった。貴女を傷つけてしまったことをとても後悔しております……」
眉根を寄せて悔恨の表情を見せるリヒャルトにまた胸が高鳴った。
もう、その顔だけで全てを許したくなる。
「従者に言われました、シスカ家の婿としてすべきことは当主である貴女に尽くすことだと。僕もその通りだと自分の反抗的な行いを反省しました。もし……貴女が僕を許してくださったのなら、今後は貴女に尽くして生きていこうと決意したのです」
これだけのイケメンにこんなことを言われてときめかない女っているのだろうか。
少なくとも私は違う。もう、ときめき過ぎて胸が痛い。
「それと同時に僕だけが貴女に触れる権利があるのだと気づきました。伴侶として選ばれた僕は美しい貴女に好き放題できるのだと」
おや? 何やら雲行きがあやしくなってきた。
何だかイケメンの口から出ちゃいけない言葉が飛び出たような気がする。
「こんなにも美しく、そして魅惑的な肢体を持った女性が自分の妻。その事実に気づいたらもう……欲が抑えられなくなってしまって……」
「前述のくだりは関係ありませんでしたね!? 単に貴方が私にムラムラするというだけの話ですよね? せっかくいい感じになりかけていたのに台無しですよ!」
こいつ……こんな清楚な見た目をしているのに中身は性欲の塊だよ!
もっとそこは隠してよ! 色々残念過ぎる!
「ええ、僕が発情するのは貴女だけです。僕の欲は生涯貴女だけに受け止めてほしい」
凛とした顔つきで迷いなくそう告げるリヒャルト。
台詞さえなければ乙女ゲームのスチル並に絵になるよ。
でも台詞で全てが台無しだよ。極上のイケメン顔が台無しだよ、リヒャルト。
そしてそんな最低な台詞にドキドキしている私が一番駄目だよ!
顔か? 顔で全て許してしまっているのか? イケメン無罪ってやつか?
自分の感情に困惑していると、突然体を引き寄せられた。
「え? あ、あの……リヒャルト様……?」
彼に抱き締められたと理解した瞬間、顔が沸騰しそうなほど熱くなった。
あれだけのセクハラ発言をされたというのにどうしてこんなに胸が高鳴ってしまうのだろう。
認めたくないが、私は彼の事を……
「レイチェル様、いい匂い……」
彼の声が耳をくすぐる度にビクッと体が反応する。
いや、おかしいでしょう。甘い言葉で口説かれたわけでもないのにこんなの……。
「リヒャルト様……お話がまだ終わっていません。一旦体を離してください」
「この状態で話せばよいのでは?」
出来るか! 心臓に悪いわ! こんな顔も声も近い状態で話なんて無理!
おかしい……。私は最初リヒャルトに離縁を少し待ってもらおうとしただけなのに、なんでこんなことになっているのだろう?
離縁なんてしたら王妃様が陛下や父の反対を押し切ってまで再婚相手に第二王子を押してくるだろうから、しばらく籍を入れたままにしてほしいと頼むだけだったのに。その間に陛下にさっさと第二王子を同盟国に婿入りさせるよう進言するつもりだったのに。どうして……
どうして押し倒されているんだよ!?
「ちょっと! 何ですかこの体勢は!?」
「え? だってレイチェル様が体を離してくれって……」
「確かに離れていますけど! 押し倒す必要はないでしょう!?」
考えているうちにいつの間にかソファーに押し倒されていた。
どうして押し倒したかと理由を聞かなくとも分かる。
だってリヒャルトの顔がとんでもなくエロいことになっているから!
「すみません……そろそろ我慢が限界で……」
「そこはもう少し頑張ってください! とにかく話を……あ、ちょっと!」
もう彼の息遣いがハアハアと荒い。目が完全に獣のそれだ。
そしてそんな姿もしつこいようだがとんでもなく絵になる。
一枚絵として出せるくらい美しい。
こんな何をしても美しい人が私の夫だと思うと、悔しいが嬉しくなる。
「駄目! こんな場所でお止めくださいリヒャルト様!」
「寝所の方がよかったですか? ソファーの上というのも趣があっていいと思うのですが……」
「その趣は理解したくありません……!」
もう何を言っても無駄な気がする。
どんな発言をしようがそっち方面にもっていかれている……。
「貴女が僕に触れられて吐き気がするほど悍ましいとおっしゃるのでしたら止めます」
「え!? い、いえ……そんな事を思うはずがありません」
「でしたら、よいのでは? 僕達は夫婦ですし、貴女が嫌でないのなら何の問題もないはずです」
そういう問題ではない気がする……。
でも、彼にされようとしていることを嫌かと聞かれれば、決してそんなことはないと断言できる。
むしろ、どこか期待してしまっている。彼に触れてもらえることを……。
「は、はい!」
突然こちらを向いて至近距離まで顔を近づけてくるので声が裏返ってしまった。
こんな時なのに顔がいい。彼の顔面が整い過ぎて辛い。
「その日は僕も王宮へお供します」
「へっ……? リヒャルト様も?」
「はい。僕と貴女が不仲だという情報が原因なら、それは間違いだと知ってもらえばよろしい。二人の仲は何人たりとも裂けないのだと理解してもらいましょう」
「えーっと…………つまり、王宮で私達が仲睦まじくする様を見せつけるということですか?」
自信満々に頷くリヒャルトに唖然としてしまった。
実際に不仲だったことは間違いないし、何ならさっきまで離縁の話も出ていたくらいだし。何人たりとも二人の仲を裂けないというほど良い仲ではないよ?
「そんなことをしたくらいで諦めるような単純な方ではないと思うのですが……」
まだ確定ではないが、私達夫婦が不仲と聞きつけてこれ幸いと自分の息子を押し付けようとする女が仲の良い様を見せつけたくらいで諦めるとは思えない。
「そうですか? 貴女が僕無しでは生きられない体だと知れば諦めると思いません?」
「王宮で何をするおつもりですか…………?」
何だその含みのある言い方は……。
あ、ちょっと、どさくさに紛れて私の手にキスするんじゃない!
「大丈夫です。公序良俗に反する行いは致しません」
「その発言からして不安しかありません! だいたいどうして急にこんな態度が豹変したのです!? 貴方は私に冷たかったではありませんか?」
「恥ずかしながらその通りです。従者にも指摘されましたが、僕の態度は紳士的ではなかったうえにシスカ家の婿としても相応しくなかった。貴女を傷つけてしまったことをとても後悔しております……」
眉根を寄せて悔恨の表情を見せるリヒャルトにまた胸が高鳴った。
もう、その顔だけで全てを許したくなる。
「従者に言われました、シスカ家の婿としてすべきことは当主である貴女に尽くすことだと。僕もその通りだと自分の反抗的な行いを反省しました。もし……貴女が僕を許してくださったのなら、今後は貴女に尽くして生きていこうと決意したのです」
これだけのイケメンにこんなことを言われてときめかない女っているのだろうか。
少なくとも私は違う。もう、ときめき過ぎて胸が痛い。
「それと同時に僕だけが貴女に触れる権利があるのだと気づきました。伴侶として選ばれた僕は美しい貴女に好き放題できるのだと」
おや? 何やら雲行きがあやしくなってきた。
何だかイケメンの口から出ちゃいけない言葉が飛び出たような気がする。
「こんなにも美しく、そして魅惑的な肢体を持った女性が自分の妻。その事実に気づいたらもう……欲が抑えられなくなってしまって……」
「前述のくだりは関係ありませんでしたね!? 単に貴方が私にムラムラするというだけの話ですよね? せっかくいい感じになりかけていたのに台無しですよ!」
こいつ……こんな清楚な見た目をしているのに中身は性欲の塊だよ!
もっとそこは隠してよ! 色々残念過ぎる!
「ええ、僕が発情するのは貴女だけです。僕の欲は生涯貴女だけに受け止めてほしい」
凛とした顔つきで迷いなくそう告げるリヒャルト。
台詞さえなければ乙女ゲームのスチル並に絵になるよ。
でも台詞で全てが台無しだよ。極上のイケメン顔が台無しだよ、リヒャルト。
そしてそんな最低な台詞にドキドキしている私が一番駄目だよ!
顔か? 顔で全て許してしまっているのか? イケメン無罪ってやつか?
自分の感情に困惑していると、突然体を引き寄せられた。
「え? あ、あの……リヒャルト様……?」
彼に抱き締められたと理解した瞬間、顔が沸騰しそうなほど熱くなった。
あれだけのセクハラ発言をされたというのにどうしてこんなに胸が高鳴ってしまうのだろう。
認めたくないが、私は彼の事を……
「レイチェル様、いい匂い……」
彼の声が耳をくすぐる度にビクッと体が反応する。
いや、おかしいでしょう。甘い言葉で口説かれたわけでもないのにこんなの……。
「リヒャルト様……お話がまだ終わっていません。一旦体を離してください」
「この状態で話せばよいのでは?」
出来るか! 心臓に悪いわ! こんな顔も声も近い状態で話なんて無理!
おかしい……。私は最初リヒャルトに離縁を少し待ってもらおうとしただけなのに、なんでこんなことになっているのだろう?
離縁なんてしたら王妃様が陛下や父の反対を押し切ってまで再婚相手に第二王子を押してくるだろうから、しばらく籍を入れたままにしてほしいと頼むだけだったのに。その間に陛下にさっさと第二王子を同盟国に婿入りさせるよう進言するつもりだったのに。どうして……
どうして押し倒されているんだよ!?
「ちょっと! 何ですかこの体勢は!?」
「え? だってレイチェル様が体を離してくれって……」
「確かに離れていますけど! 押し倒す必要はないでしょう!?」
考えているうちにいつの間にかソファーに押し倒されていた。
どうして押し倒したかと理由を聞かなくとも分かる。
だってリヒャルトの顔がとんでもなくエロいことになっているから!
「すみません……そろそろ我慢が限界で……」
「そこはもう少し頑張ってください! とにかく話を……あ、ちょっと!」
もう彼の息遣いがハアハアと荒い。目が完全に獣のそれだ。
そしてそんな姿もしつこいようだがとんでもなく絵になる。
一枚絵として出せるくらい美しい。
こんな何をしても美しい人が私の夫だと思うと、悔しいが嬉しくなる。
「駄目! こんな場所でお止めくださいリヒャルト様!」
「寝所の方がよかったですか? ソファーの上というのも趣があっていいと思うのですが……」
「その趣は理解したくありません……!」
もう何を言っても無駄な気がする。
どんな発言をしようがそっち方面にもっていかれている……。
「貴女が僕に触れられて吐き気がするほど悍ましいとおっしゃるのでしたら止めます」
「え!? い、いえ……そんな事を思うはずがありません」
「でしたら、よいのでは? 僕達は夫婦ですし、貴女が嫌でないのなら何の問題もないはずです」
そういう問題ではない気がする……。
でも、彼にされようとしていることを嫌かと聞かれれば、決してそんなことはないと断言できる。
むしろ、どこか期待してしまっている。彼に触れてもらえることを……。
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