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拷問して吐かせますよ
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「貴女はご令嬢方どれかの家の間者なのでしょう。家臣であれば主家に侍女を推薦することも可能と言えば可能よね。ああ、どの家かまでは言わなくていいわ。どのみち罪は変わらないもの。それにしても……雇い主も貴女もこんな杜撰な計画で上手くいくと思っていたの? 奥様が旦那様に話せば貴方達はおしまいじゃない」
まあ、話さなかったから上手くいったようだが。それも二度も。
「私も杜撰な計画だとは思ったのです……。ですがあの頃、旦那様は御当主の座についたばかりでお忙しくされておりまして……。何日も屋敷を不在にされることも多く……奥様も寂しい想いをされておりました。そこにご令嬢方が屋敷を訪れて自分は旦那様の恋人だと告げ……不安だった奥様はそれを信じてしまったのです」
「ああ……確かにあの頃は慣れない当主の仕事に奔走していて、何日も屋敷に帰ってこないなんてザラだった。そうかそれで……前の妻は私が彼女達と不貞を犯していると信じてしまったのか……」
過去を悔やみ項垂れるレイモンド。
幼馴染みの策略とはいえ、自分がもっと妻に寄り添っていればと後悔が押し寄せる。
「まって頂戴。それだけなの? それだけでは奥様の御父君が離婚を申立たりしないでしょう?」
旦那の幼馴染がウザイからという理由だけでは奥方の父親が離婚の申し立てをするとは思えない。むしろ自分の娘に毅然とあしらうよう叱るはずだ。少なくともシスティーナの父はそうだ。さらにそこに失望と侮蔑まで混ぜてくる。
「それは……」
よほど言いにくいことなのか、侍女長は俯いたまま答えようとしない。
その様子に埒が明かないと考えたシスティーナはこう告げた。
「侍女長、答えなさい。今すぐに答えないのなら、拷問して吐かせますよ」
可憐で儚げな容姿からは想像もつかないほどの苛烈な発言。
驚いた侍女長は一瞬システィーナと目が合い、その言葉が本気だと分かるとすぐに口を開いた。
「お嬢様方は……旦那様のお名前で……ドレスや宝飾品を買いました」
「はあっ!? 私の名で? どういうことだ!」
侍女長の話によると、令嬢達は店に行き、レイモンドの名でドレスや宝飾品を買いあさる。そしてそれを、まるで彼が彼女達にプレゼント贈っていると見えるように偽装したらしい。
だがそんなことが可能なのだろうか。
客に『〇〇家に支払いを請求して』と言われ、店側がハイそうですかと素直に聞くだろうか。余程の常連でもない限り無理だし、ましてや今まで明るみに出ていないこともおかしい。
「普通のお店なら無理でしょう。ですが、先代伯爵様からご贔屓にしていた店ならばそれも可能です。何も疑われませんでしたよ。先代様も全く同じことをなさっていたらしいので……」
「父上の贔屓の店だと……? ああ、そうか、そういうことか……」
レイモンドによると、彼の亡くなった父である先代伯爵は大層女好きで愛人が何人もいたそうだ。生前、彼は贔屓の店に愛人を連れ、そこで購入した品の請求書を邸に回すということ日常的に行っていた。
「先代伯爵様がそのようなことを……。貴族としてよくあることですが、あまり褒められたことではありませんわね」
「ああ、全くだ。父のその悪癖のせいで伯爵家は困窮し、母も心労で倒れて儚くなってしまった……。そんな父を軽蔑し、私は絶対に愛人なぞ持たないと決めていた。なのに……」
私は使用人達に父と同類だと思われていたんだな、とレイモンドは寂しそうに呟いた。
「先代様がそうだったから、その子息である旦那様も同様に女好きで愛人を侍らせていると決めつけたのね。奥様までもが」
勝手に決めつけた使用人と奥方が悪いように思えるが、誤解させるような言動をとったレイモンドにも問題がある。
初めから幼馴染み達をきちんと線引きしていればよかったのだ。
邸に入り浸ることを許したりしなければ、彼女達を愛人だと誤解されたりしなかっただろうに。
まあ、話さなかったから上手くいったようだが。それも二度も。
「私も杜撰な計画だとは思ったのです……。ですがあの頃、旦那様は御当主の座についたばかりでお忙しくされておりまして……。何日も屋敷を不在にされることも多く……奥様も寂しい想いをされておりました。そこにご令嬢方が屋敷を訪れて自分は旦那様の恋人だと告げ……不安だった奥様はそれを信じてしまったのです」
「ああ……確かにあの頃は慣れない当主の仕事に奔走していて、何日も屋敷に帰ってこないなんてザラだった。そうかそれで……前の妻は私が彼女達と不貞を犯していると信じてしまったのか……」
過去を悔やみ項垂れるレイモンド。
幼馴染みの策略とはいえ、自分がもっと妻に寄り添っていればと後悔が押し寄せる。
「まって頂戴。それだけなの? それだけでは奥様の御父君が離婚を申立たりしないでしょう?」
旦那の幼馴染がウザイからという理由だけでは奥方の父親が離婚の申し立てをするとは思えない。むしろ自分の娘に毅然とあしらうよう叱るはずだ。少なくともシスティーナの父はそうだ。さらにそこに失望と侮蔑まで混ぜてくる。
「それは……」
よほど言いにくいことなのか、侍女長は俯いたまま答えようとしない。
その様子に埒が明かないと考えたシスティーナはこう告げた。
「侍女長、答えなさい。今すぐに答えないのなら、拷問して吐かせますよ」
可憐で儚げな容姿からは想像もつかないほどの苛烈な発言。
驚いた侍女長は一瞬システィーナと目が合い、その言葉が本気だと分かるとすぐに口を開いた。
「お嬢様方は……旦那様のお名前で……ドレスや宝飾品を買いました」
「はあっ!? 私の名で? どういうことだ!」
侍女長の話によると、令嬢達は店に行き、レイモンドの名でドレスや宝飾品を買いあさる。そしてそれを、まるで彼が彼女達にプレゼント贈っていると見えるように偽装したらしい。
だがそんなことが可能なのだろうか。
客に『〇〇家に支払いを請求して』と言われ、店側がハイそうですかと素直に聞くだろうか。余程の常連でもない限り無理だし、ましてや今まで明るみに出ていないこともおかしい。
「普通のお店なら無理でしょう。ですが、先代伯爵様からご贔屓にしていた店ならばそれも可能です。何も疑われませんでしたよ。先代様も全く同じことをなさっていたらしいので……」
「父上の贔屓の店だと……? ああ、そうか、そういうことか……」
レイモンドによると、彼の亡くなった父である先代伯爵は大層女好きで愛人が何人もいたそうだ。生前、彼は贔屓の店に愛人を連れ、そこで購入した品の請求書を邸に回すということ日常的に行っていた。
「先代伯爵様がそのようなことを……。貴族としてよくあることですが、あまり褒められたことではありませんわね」
「ああ、全くだ。父のその悪癖のせいで伯爵家は困窮し、母も心労で倒れて儚くなってしまった……。そんな父を軽蔑し、私は絶対に愛人なぞ持たないと決めていた。なのに……」
私は使用人達に父と同類だと思われていたんだな、とレイモンドは寂しそうに呟いた。
「先代様がそうだったから、その子息である旦那様も同様に女好きで愛人を侍らせていると決めつけたのね。奥様までもが」
勝手に決めつけた使用人と奥方が悪いように思えるが、誤解させるような言動をとったレイモンドにも問題がある。
初めから幼馴染み達をきちんと線引きしていればよかったのだ。
邸に入り浸ることを許したりしなければ、彼女達を愛人だと誤解されたりしなかっただろうに。
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