どうして許されると思ったの?

わらびもち

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選ばせてもらっている

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「それと何か勘違いなさっているようだけど、別に貴方が納得しようがしまいがどうでもいいの。納得すれば横領分の返済だけで済み、納得できなければ裁判というだけだもの。もこちらは済んでいるから好きな方を選んで構わなくてよ」

 ゼット男爵は遅まきながら気づかされる。選ぶ側ではなく、側だということに。

 目の前の女王のような人にとっては主家に仇成す家臣などどうなっても構わないのだ。
 主家の金を横領するような不忠者は問答無用で処罰しても構わないのに、こうやって救いの手を差し伸べてくれている。

 その手を払いのければ待っているのは悲惨な未来だ。
 これだけの証拠を覆すような証拠なんて悔しいが用意できそうもない。
 そうなれば一家全員死罪となってしまう。

 ちら、とゼット男爵はシスティーナに視線を向ける。
 他者を処罰することに何の躊躇いもなさそうな冷酷な瞳、処罰を言い渡すことに慣れているであろう雰囲気。どう見ても逆らってはいけない側の人間だ。

「……………………」

 それでも心のどこかに悔しいという気持ちが残っている。
 自分の子よりも遥かに年下の小娘に従わねばならないという悔しさが。

「……ゼット男爵、貴殿も当主の身ならばいい加減現実を見ろ。娘の名誉というが、それを晴らす自信はあるか? おそらくだが……娘達は本当にやってしまっているよ」

「なっ……ダスター卿! 娘の潔白を信じないとは貴殿それでも父親か!?」

「なら好きにすればいい……と言いたいところだがそうはいかん。貴殿が娘の潔白を証明するために裁判などすればこちらの娘の罪まで公になってしまう。フレン伯爵夫人、此度は娘達がとんでもないことをしでかし申し訳ございません。恥を承知でご厚情を賜らせていただきたく存じます」

 娘の潔白よりも少しでも罰を軽くしたいダスター男爵は床に額をつけてシスティーナに赦しを請うた。もはやゼット男爵の意見など聞いていられない。

「そう、ならば横領分の返済だけで済ませましょう。ところで貴方がたはこの金額を払えるのかしら?」

 資料に提示された金額を再び確認すると目玉が飛び出そうなほど高額だった。
 少なくとも男爵家の資産では賄えないほどに。

「あ、あの……分割なら、おそらくは……」

「それでも構わないけど、おそらくは次代まで支払いが続くと思うわよ? そんな借金背負っていたらご嫡男が妻を迎えることに支障をきたしかねないのではなくて? ただでさえ縁談先が見つからなくて苦労していると聞いたわよ」

 そこまで内情を知られているのかとダスター男爵は唖然とした。
 実は男爵の息子はもう何度も婚約を解消されていて、三十路近い今は縁談のアテもない。
 
 それというのも意地の悪い小姑アリーが婚約者に難癖をつけて追い払ってしまうからだ。それもあって嫡男はアリーを蛇蝎の如く嫌っているというのに、ここで更に横領の話までしてはどうなってしまうか……。
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