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唯一の出来ること
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「誰って……確か……そうだ、パメラの従妹とかいう女が言ったのよ。高くて手が出せないドレスを眺めていたらその従妹が『愛人と言えばフレン家に請求できる』って……。実際その通りにしたら上手くいったし、誰にも何も言われなかったの! パメラだってメグだって私と同じことやっていたのよ!? どうして私だけ責められるの!」
「は? パメラ嬢の……従妹?」
出てきたのは娘の幼馴染の従妹というこちらと面識がない人物。
これでまだ幼馴染のパメラに唆されたというのならばまだ分かる。だが、名前すら知らない他人が言ってきたことを疑いも無く信じるとは娘の頭はどうなっているのだろう……。
まさかここまで騙されやすく自分で考える頭が無いとは思わなかった。
「……そんな他人でしかない相手に唆されて、仕える家の財産を散財するようなみっともない真似をするなんて恥ずかしいわ! お前は何なの? 貴族令嬢の責務も果たさず遊んでばかり、弟の婚約も邪魔をする、挙句の果てに人様のお金に手を付けるなんて最低よ!」
「最低なんてひどいっ! なんでそんなことを言うのよ、お母様!」
「加害者が被害者面して泣かないでちょうだい! お前に泣く権利などありません!」
本当にどうしてこんな駄目な娘に育ってしまったのか……と夫人の目から涙が零れた。
貴族令嬢の義務である結婚すらせず遊び惚け、弟の婚約を邪魔する性根の悪い娘ではあったが、まさか人様のお金に手を付けておいてちっとも悪びれないような人の道に外れた行いをしているとは思わなかった。
「……フレン家からお前が使い込んだ資金の返却を求められています。お前はそれを返す気はあって?」
「えっ……返すの!?」
「何を驚いているのですか、勝手に使い込んだ分を返すのは当然のことでしょう?」
「で、でも……どれもお気に入りだし、返したくない……」
「何を勘違いしているのですか……。既に使って中古となった品を返すのではなく、使い込んだ分を金銭で支払えと言っているのですよ。で、返すアテはあるのかしら?」
「は……はあああ!? 金銭で? そんなお金あるわけないじゃない! 大体どうして今更返せって言ってくるのよ!?」
「……そんなの、今になってそれが発覚したからに決まっているではないですか。むしろ今まで気づかなかったことが恥ずかしいですよ。本来ならば財産没収のうえ一家全員死罪は免れないところ、お優しいフレン伯爵夫人は返金だけでいいとおっしゃってくださったのです」
「フレン伯爵夫人って……どうしてあの女の名がここで出てくるのよ!?」
「黙りなさい! フレン伯爵夫人への不敬は許しません! 慈悲深いあの御方は返金のみで許してくださるどころか、その返済分を肩代わりしてくださる先まで紹介してくださいました。お前はこの先一生フレン伯爵夫人の慈悲に感謝し、肩代わりしてくださった先方に尽くしなさい。それが何も出来ないお前の唯一出来ることです」
「は? 肩代わり? いったいどういうこと? 全然意味が分からないんだけど!」
「……分からないならそれで結構。向こうに行けば嫌でも分かるでしょう」
夫人がパン、と手を叩くと扉の向こうからダスター家の嫡男アレクがやってきた。
「は? パメラ嬢の……従妹?」
出てきたのは娘の幼馴染の従妹というこちらと面識がない人物。
これでまだ幼馴染のパメラに唆されたというのならばまだ分かる。だが、名前すら知らない他人が言ってきたことを疑いも無く信じるとは娘の頭はどうなっているのだろう……。
まさかここまで騙されやすく自分で考える頭が無いとは思わなかった。
「……そんな他人でしかない相手に唆されて、仕える家の財産を散財するようなみっともない真似をするなんて恥ずかしいわ! お前は何なの? 貴族令嬢の責務も果たさず遊んでばかり、弟の婚約も邪魔をする、挙句の果てに人様のお金に手を付けるなんて最低よ!」
「最低なんてひどいっ! なんでそんなことを言うのよ、お母様!」
「加害者が被害者面して泣かないでちょうだい! お前に泣く権利などありません!」
本当にどうしてこんな駄目な娘に育ってしまったのか……と夫人の目から涙が零れた。
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「……フレン家からお前が使い込んだ資金の返却を求められています。お前はそれを返す気はあって?」
「えっ……返すの!?」
「何を驚いているのですか、勝手に使い込んだ分を返すのは当然のことでしょう?」
「で、でも……どれもお気に入りだし、返したくない……」
「何を勘違いしているのですか……。既に使って中古となった品を返すのではなく、使い込んだ分を金銭で支払えと言っているのですよ。で、返すアテはあるのかしら?」
「は……はあああ!? 金銭で? そんなお金あるわけないじゃない! 大体どうして今更返せって言ってくるのよ!?」
「……そんなの、今になってそれが発覚したからに決まっているではないですか。むしろ今まで気づかなかったことが恥ずかしいですよ。本来ならば財産没収のうえ一家全員死罪は免れないところ、お優しいフレン伯爵夫人は返金だけでいいとおっしゃってくださったのです」
「フレン伯爵夫人って……どうしてあの女の名がここで出てくるのよ!?」
「黙りなさい! フレン伯爵夫人への不敬は許しません! 慈悲深いあの御方は返金のみで許してくださるどころか、その返済分を肩代わりしてくださる先まで紹介してくださいました。お前はこの先一生フレン伯爵夫人の慈悲に感謝し、肩代わりしてくださった先方に尽くしなさい。それが何も出来ないお前の唯一出来ることです」
「は? 肩代わり? いったいどういうこと? 全然意味が分からないんだけど!」
「……分からないならそれで結構。向こうに行けば嫌でも分かるでしょう」
夫人がパン、と手を叩くと扉の向こうからダスター家の嫡男アレクがやってきた。
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