初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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早朝の来客

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「おはようございます、旦那様。清々しい朝でございますね」

 爽やかな顔で朝の支度にやってきたメイド達にエリオットは恨みがましい目を向けた。
 主人が一睡も出来ず散々な状態だというのに、呑気なものだと。

「あら、目の下にクマが出来ていらっしゃいますよ? 如何なされましたか?」

「……遅くまでセシリアを待っていたからな。結局来なかったが……」

 苛々した態度を隠さずそう言うと、メイドの表情は蔑んだものへと変わる。

「はあ……ですが、旦那様も奥様に同じことをなさったではありませんか? しかも初夜という夫婦にとって大切な晩に。それで文句を言うのはお門違いでは?」

「ッ…………!!」

 メイドの言葉がエリオットの胸に突き刺さる。
 
 確かにその通りだ。初夜の晩にセシリアをいつまでも、それこそ一晩中待たせるような真似をしたのはエリオットである。それなのにいざ自分が同じ目に遭わされたら文句を言うなどお門違いだ。他のメイド達も「妻にはやっておいて、自分がやられたら文句を言うなんて……」「器が小っさいわねえ……」と好き勝手にエリオットを罵る。

「もう、いい! 支度はいいから出て行ってくれ!」

「ですが、旦那様……寝間着姿で食堂へ行くおつもりですか?」

 朝の身支度をした後、食堂で朝食をとるのがこの国の貴族の一般的な習慣だ。
 いくら家の中といえども寝間着姿で食事をとることははしたないとされている。

「朝食はいらな……あ、いや、セシリアは食堂に来ているか?」

 朝食はいらない、と言おうとして止めた。
 セシリアが来ているならそこで話が出来るかもしれないと気づいたから。

「はい、奥様は既にいらしております」

「そうか! なら、急いで身支度を整えてくれ!」

 今度こそ妻と話が出来る、と喜んだエリオットにメイドが「あ、それと」と付け加えた。

「伯父君のガーネット公爵閣下も同席されております」

「………………は?」

 言っている意味が分からずエリオットはその場で固まってしまった。

「……待て、どうしてそこで伯父上の名が出てくる……?」

「どうして……と言われましても、私はありのままの事実をお伝えしたまでですが……?」

 何言ってんだコイツ、と言わんばかりの目を向けるメイドにエリオットの苛立ちはピークを迎えた。
「そうじゃない! なんでこんな朝早くに伯父上が来てるのか聞いているんだ! 用件は聞いているのだろう!?」

 散歩がてら来ちゃった、などというのはたとえ親族間でも滅多にないのが貴族である。
 こんな朝早くから他家を訪れるというのは滅多にあることではない。
 それなのにいるということは、何か火急の用件があったとしか思えないからだ。

「はい、勿論。奥様がお呼びしたと伺っております」

「セシリアが!?」

 もう何が何だか分からなかった。とにかく、あの煩い伯父を待たせてはいけないとエリオットは急いで身支度を整え、食堂へと向かう。

 食堂の扉を開けるとそこには結婚式以来一度も顔を合わせていない妻のセシリアと、幼い頃から苦手な伯父が座っていた……。
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