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真実は②
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「アリッサから聞いた話によりますと、何でもフロンティア子爵がヘブンズ伯爵のご息女のサラ嬢に異国の友人を結婚相手として紹介したとか。それで互いに意気投合し、サラ嬢はご友人の国へ嫁がれた。ここまでは合っていますね。フロンティア子爵とヘブンズ伯爵二人と確認がとれていますので」
合っている、ということは間違っていることをこれから話すということだろうか……。何も言えず国王はただ皇子の話に耳を傾けた。
「そして嫁いで一年後、王家主催の夜会でご夫君が平民の愛人をパートナーに選び、妻であるサラ嬢に一人で来るよう命じた。社交のパートナーに妻である自分ではなく愛人、しかも平民を選んだことに耐えがたい屈辱を覚え王宮のバルコニーから身を投げた……。件の事件の概要はこれで合っておりますか?」
「はあ……。そう聞いておりますが……」
「ふむ……。陛下はこの話に違和感があると思いませんか?」
「え? 違和感ですか?」
「はい。王家主催の夜会ともなれば警備は厳重で、招待客も会場入りする前に念入りな検査をされるもの。貴国もそうではありませんか?」
「あ、ああ……確かにそうですな」
確かにこの国でも王族が同席する場に招待客が危険物を持ち込んでいないか、また招待客に成りすました暗殺者が紛れ込んでいないか、それらを入念に調べたうえで会場入りさせている。そうでもしないと暗殺し放題になってしまうからだ。
「そんな場所に招待されていない者が来たらどのような対応をしますか?」
「そうですね……不審者とみなして拘束するかと」
「そうでしょう? 下手をすれば王族を害しようとしたと疑われてもおかしくない。それは貴族であれば誰でも分かっていることです。そんな場所に招待されていない愛人を連れていくなど考えられない。仮に愛人をサラ嬢と偽って会場入りしたとしても、後から本物のサラ嬢が来れば一発で偽物だとバレてしまう。そうなればご夫君と愛人は拘束され、サラ嬢も事情聴取のため連行されてしまうでしょう。こんな状態では身投げするなど困難だ。つまり、これ自体有り得ない状況なのですよ」
「た、たしかに…………」
「最初にこの違和感に気づいたのはこちらにいるシーグラス翁です。それで私に彼の国へ直接赴き、当時の事件の記録を閲覧するよう頼まれました。王家主催の夜会に招待客以外が堂々と混じっていたことや、王宮のバルコニーから貴族夫人が身投げするという大きな事件なら必ず記録が残っているはずですからね」
「は!? わざわざその国まで足を運んだのですか?」
「ええ。皇帝陛下の書状を持参しましたら快く承諾してくださいました」
皇帝陛下の書状持って行ったらどの国もそうなるよ……。
どの国も帝国に比べたら吹けば飛ぶような存在だもの。いきなり押し掛けられてもそりゃ承諾しちゃうよ。今の我が国のように……。
「そうしてあちらの担当者に当時の記録を探ってもらったところ、やはりそんな事実は無かったとの回答を頂きました。おまけに貴国へそのような報告をしたという記録も抗議したという記録もありませんでした」
「そんな馬鹿な……。あちらが事実を隠しているのではないですか!?」
「いえ、そもそもその当時は王太后様が亡くなられ、その喪に一年は服さなければならず夜会等の催し物は開催されていなかったそうです。つまり、サラ嬢が参加したという王家主催の夜会さえ無かったのですよ」
「そんな……では、何故こちらにはそんな偽の報告が入ったのですか!? それにその話が本当ならサラ嬢は生きていると?」
「いえ、残念ながらサラ嬢は既に亡くなっています。それで彼女の死亡記録を拝見させてもらったのですが、驚くべきことに彼女は何者かの手によって殺されていました」
「は? 殺されていた……?」
「はい、ご夫君と共に本邸で亡くなっていたところを出入りの業者に発見されて事件が発覚したそうです。使用人も全て同じように殺されており、すぐに王宮騎士団が捜査したところご夫君の愛人が容疑者にあがったようですが……こちらも自宅で事切れていたようです」
「え? は? なんだそれは……! ちょっと待ってくれ、そんな事件があれば我が国にも報せがあるはずだろう!? ヘブンズ伯爵! 其方はこのことを知っていたのか!?」
顔色の悪いヘブンズ伯爵に詰め寄ると、彼は力なく頭を横に振った。
こんな話をしているのに被害者の父親が取り乱さないのはおかしい。もしかして既に彼等から全て聞いているのだろか。
「彼の国はきちんと使者を立ててこの件を報せたそうですよ。何せ異国から来た貴族夫人が無残な事件の被害者になったんだ。速やかに遺族にこの事を報せなくてはとすぐに使者を貴国に向かわせた。その時の記録が残っていたのですが、使者は当時の国王と謁見し直接報告したとありました」
「……ちょっと待ってくれ! それではまるで亡くなった我が父が事実を捻じ曲げたみたいではないか!?」
「ええ、そう考えた方が自然ですね」
あまりにも衝撃的な展開に頭が追い付かない。
亡くなった父は彼の国から真実を聞いていたのにそれを捻じ曲げて伝えていた?
いったいどうして? 何の為に?
そのようなことをして何になるというんだ?
合っている、ということは間違っていることをこれから話すということだろうか……。何も言えず国王はただ皇子の話に耳を傾けた。
「そして嫁いで一年後、王家主催の夜会でご夫君が平民の愛人をパートナーに選び、妻であるサラ嬢に一人で来るよう命じた。社交のパートナーに妻である自分ではなく愛人、しかも平民を選んだことに耐えがたい屈辱を覚え王宮のバルコニーから身を投げた……。件の事件の概要はこれで合っておりますか?」
「はあ……。そう聞いておりますが……」
「ふむ……。陛下はこの話に違和感があると思いませんか?」
「え? 違和感ですか?」
「はい。王家主催の夜会ともなれば警備は厳重で、招待客も会場入りする前に念入りな検査をされるもの。貴国もそうではありませんか?」
「あ、ああ……確かにそうですな」
確かにこの国でも王族が同席する場に招待客が危険物を持ち込んでいないか、また招待客に成りすました暗殺者が紛れ込んでいないか、それらを入念に調べたうえで会場入りさせている。そうでもしないと暗殺し放題になってしまうからだ。
「そんな場所に招待されていない者が来たらどのような対応をしますか?」
「そうですね……不審者とみなして拘束するかと」
「そうでしょう? 下手をすれば王族を害しようとしたと疑われてもおかしくない。それは貴族であれば誰でも分かっていることです。そんな場所に招待されていない愛人を連れていくなど考えられない。仮に愛人をサラ嬢と偽って会場入りしたとしても、後から本物のサラ嬢が来れば一発で偽物だとバレてしまう。そうなればご夫君と愛人は拘束され、サラ嬢も事情聴取のため連行されてしまうでしょう。こんな状態では身投げするなど困難だ。つまり、これ自体有り得ない状況なのですよ」
「た、たしかに…………」
「最初にこの違和感に気づいたのはこちらにいるシーグラス翁です。それで私に彼の国へ直接赴き、当時の事件の記録を閲覧するよう頼まれました。王家主催の夜会に招待客以外が堂々と混じっていたことや、王宮のバルコニーから貴族夫人が身投げするという大きな事件なら必ず記録が残っているはずですからね」
「は!? わざわざその国まで足を運んだのですか?」
「ええ。皇帝陛下の書状を持参しましたら快く承諾してくださいました」
皇帝陛下の書状持って行ったらどの国もそうなるよ……。
どの国も帝国に比べたら吹けば飛ぶような存在だもの。いきなり押し掛けられてもそりゃ承諾しちゃうよ。今の我が国のように……。
「そうしてあちらの担当者に当時の記録を探ってもらったところ、やはりそんな事実は無かったとの回答を頂きました。おまけに貴国へそのような報告をしたという記録も抗議したという記録もありませんでした」
「そんな馬鹿な……。あちらが事実を隠しているのではないですか!?」
「いえ、そもそもその当時は王太后様が亡くなられ、その喪に一年は服さなければならず夜会等の催し物は開催されていなかったそうです。つまり、サラ嬢が参加したという王家主催の夜会さえ無かったのですよ」
「そんな……では、何故こちらにはそんな偽の報告が入ったのですか!? それにその話が本当ならサラ嬢は生きていると?」
「いえ、残念ながらサラ嬢は既に亡くなっています。それで彼女の死亡記録を拝見させてもらったのですが、驚くべきことに彼女は何者かの手によって殺されていました」
「は? 殺されていた……?」
「はい、ご夫君と共に本邸で亡くなっていたところを出入りの業者に発見されて事件が発覚したそうです。使用人も全て同じように殺されており、すぐに王宮騎士団が捜査したところご夫君の愛人が容疑者にあがったようですが……こちらも自宅で事切れていたようです」
「え? は? なんだそれは……! ちょっと待ってくれ、そんな事件があれば我が国にも報せがあるはずだろう!? ヘブンズ伯爵! 其方はこのことを知っていたのか!?」
顔色の悪いヘブンズ伯爵に詰め寄ると、彼は力なく頭を横に振った。
こんな話をしているのに被害者の父親が取り乱さないのはおかしい。もしかして既に彼等から全て聞いているのだろか。
「彼の国はきちんと使者を立ててこの件を報せたそうですよ。何せ異国から来た貴族夫人が無残な事件の被害者になったんだ。速やかに遺族にこの事を報せなくてはとすぐに使者を貴国に向かわせた。その時の記録が残っていたのですが、使者は当時の国王と謁見し直接報告したとありました」
「……ちょっと待ってくれ! それではまるで亡くなった我が父が事実を捻じ曲げたみたいではないか!?」
「ええ、そう考えた方が自然ですね」
あまりにも衝撃的な展開に頭が追い付かない。
亡くなった父は彼の国から真実を聞いていたのにそれを捻じ曲げて伝えていた?
いったいどうして? 何の為に?
そのようなことをして何になるというんだ?
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