侯爵令嬢アリスティアの愛する人

愚か者に制裁を（アリスティアの父視点）①

　アリスティアに公妾の話が破談になるかもしれないと告げてから一日が経った。
　
　未だに娘は目覚めない……。


「馬鹿なことをしてくれたな……。この落とし前、どうつけるつもりだエリック？」

　当家の玄関で膝をついて額づく妻の弟、エリック・ペッパー伯爵にそう問いかけた。
　
　こいつの馬鹿な次男坊がよりにもよって夜会でアリスティアに襲い掛かったのだ。
　ペッパー伯爵家は家を潰したいのか？

「義兄上、此度は愚息が大変失礼を……！　まさかロビンがアリスティアに乱暴を働くなんて……」

「謝罪はいらない。何も意味がない。お前の愚息は誰に手を出そうとしたか理解しているのか？　陛下の寵姫となるアリスティアに手を出そうとするなんて……お前らは王家に叛意でもあるのか？」

「叛意だなんてとんでもない！　ロビンがアリスティアに気があるだなんて知らなかった！」

　こいつもロビンも考えが甘いな。
　
　アリスティアが陛下の所有物だということを全く理解していない。
　陛下のモノに触れようとするなんて、死にたいのか？

「二度とロビンをアリスティアに近づけさせないと誓う！　アリスティアにも直接謝罪をさせてくれ！」

「そんな罰にもならないことですむと本気で思っているのか？　それからアリスティアはショックで気絶し未だに目を覚まさんのだぞ！？」

　青褪めてるな。アリスティアに謝罪すれば丸く収まると思っていたのか？
　
　だとしたらこいつは貴族家当主失格だな。
　考えがぬるすぎる。