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番外編

農園に行った男(国王視点)

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 オレガノ伯爵の息子はあの女を一目で気に入ったようだな。

 
 侍従からの報告書には子息が女に一目で堕ちた様子がしっかりと書かれていた。

「陛下? どうされましたか?」

 愛らしく首を傾げるアリスティアを見ると思わず顔がにやけてしまうな。
 余の最愛はなんと可憐なのか。

「アリスティア、オレガノ伯爵の子息ラウロに新たな恋人が出来たようだぞ」

「まあ、それはよかった! ジェシーさんと別れたと聞いて心配でしたもの」

「うむ。きっと仲睦まじく暮らすであろうよ。だからこれ以上オレガノ伯爵子息を気にかけてはいかんぞ?」

 アリスティアが余以外の男を気にかけるのは気に食わない。
 其方の心には余だけがいればよい。

 其方の心も、この儚く可憐な美貌も、艶めかしい肢体も全て余のものだ。

「あっ……陛下、ダメですわ。まだ食べてる途中ですのに……」

「残りは余が食べさせてやろう。こちらにおいで、アリスティア……」

 食べているところを邪魔され、可愛らしく拗ねる顔が可愛くてたまらないな。
 このまま食べてしまいたい。

「ほら、口を開けろアリスティア」

「あ、ん……もう……」

 アリスティアの食べかけの果実を手で摘まみ、その愛らしい口へと運ぶ。
 真っ赤な果実が薄紅色の口内に吸い込まれていく様はなんともいやらしいな。

「美味いかアリスティア?」

「ん……ええ、美味しいですわ。今度は私が食べさせますので、お口を開けてくださいませ」

 アリスティアの白い指が果実を摘まみ、余の口元へと近づく。
 たまらずその指ごとむしゃぶりついた。

「あん、もう……指は食べちゃだめですわ!」

「ん? 甘くて美味いぞ?」

「それはエンペラーベリーの甘さでしてよ! 指ではありませんわ!」

「指も美味いぞ? アリスティアはどこも甘くて美味だな。もっと食したい……」

 柔らかな膨らみを揉みしだくとアリスティアが甘い声を漏らす。
 可愛いな。この可愛い喘ぎ声も余だけのものだ。

「ああん、もう……陛下のために希少な果実を生家から取り寄せたんですのよ? もっと味わって食べてくださいまし……」

「生家から? はて……ヴァージル侯爵家ではエンペラーベリーを栽培していたか?」
 
 エンペラーベリーは食べると寿命が延びるとされる貴重な果実だ。
 その名の通り、昔は皇帝のみが食べることを許されたと逸話があるほどの高級品で、栽培方法が非常に難しく国内で成功したのは東の果てにある農園のみだったはず。
 そこはヴァージル侯爵家所有ではなかったと思ったが?

「いいえ、そうではなく父が知り合いの農園から取り寄せたものです。それを王宮に送っていただくよう父に頼んだのですわ。しばらく前に農園の主のお母君が再婚したのですが、その再婚相手はなんです。なので、ヴァージル侯爵家は優先的に買うことができますの」

 オスカー侯爵が知り合いの農園に再婚相手を紹介した?

 ああ、なるほど……のことか。
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