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番外編
異国の美女
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あれからしばらくして侍従は別邸に一人の女を連れてきた。
女は珍しい外見をしており、一目で異国の人間ということが分かる。
黒檀のような髪と瞳、そして小麦色の肌。
珍しいがそれ以上に美しいと思った。
「坊ちゃま、彼女はこの国の言葉は片言でしか話せませんし、文字も書けません。ですがご希望通りの清い体ですし、何より外見は坊ちゃま好みかと」
確かに好みだ。容貌は整っていて体も肉感的でいい。
言葉も文字も僕が教えれば問題ないだろう。
僕は仕事もないから暇つぶしに丁度いい。
だが、こんな美しい女が処女だと? 本当なのか?
「彼女の国と我が国では美意識が違います。この国では地味だといわれる顔も彼女の母国では至上の美とされ、逆に目鼻立ちが整っていると醜いとされます。そして凹凸のはっきりした体型よりもストンと真っ直ぐな体が好まれます。彼女はそのどちらも持っていないので、母国では醜女とされ男性に見向きもされません」
何だと!? 地味顔でくびれも胸もない方が美女とされるのか?
国によって価値観がそこまで変わるとは……知らなかったな。
「父上はわざわざ外国にまで行って探してくれたのか?」
「いいえ、彼女のような女性は娼館を探せばいるのですよ。旦那様はまだ客を取る前の清い体の娼婦を斡旋するよう娼館の主人に掛け合ってくださいました。坊ちゃまが気に入ればそのままお買い上げ、気に入らなければ返します。いかがなさいます?」
侍従にそう言われ、僕は女を見た。
言葉は話せなくとも僕に気に入られなければ娼館に戻ることは理解しているのか、黒瑪瑙の如く美しい瞳に涙を滲ませ必死に訴えてきた。
「オネガイ、ワタシ……ヲ、カッテ……」
声は意外と可愛らしく、涙を滲ませた美しい顔は庇護欲をそそる。
その姿に心を掴まれた僕は彼女を囲うことを決めた。
「気に入った。このまま買い上げてくれ。そうだ、彼女の名前は?」
「名前は国を出る際に捨てているそうなので、坊ちゃまが新しくおつけください」
僕が新しく名前を?
そうか、なら…………
「じゃあ、今日から君の名前はオニキスだ。よろしくオニキス」
オニキス(黒瑪瑙)と呼ぶと彼女は嬉しそうに笑った。
女は珍しい外見をしており、一目で異国の人間ということが分かる。
黒檀のような髪と瞳、そして小麦色の肌。
珍しいがそれ以上に美しいと思った。
「坊ちゃま、彼女はこの国の言葉は片言でしか話せませんし、文字も書けません。ですがご希望通りの清い体ですし、何より外見は坊ちゃま好みかと」
確かに好みだ。容貌は整っていて体も肉感的でいい。
言葉も文字も僕が教えれば問題ないだろう。
僕は仕事もないから暇つぶしに丁度いい。
だが、こんな美しい女が処女だと? 本当なのか?
「彼女の国と我が国では美意識が違います。この国では地味だといわれる顔も彼女の母国では至上の美とされ、逆に目鼻立ちが整っていると醜いとされます。そして凹凸のはっきりした体型よりもストンと真っ直ぐな体が好まれます。彼女はそのどちらも持っていないので、母国では醜女とされ男性に見向きもされません」
何だと!? 地味顔でくびれも胸もない方が美女とされるのか?
国によって価値観がそこまで変わるとは……知らなかったな。
「父上はわざわざ外国にまで行って探してくれたのか?」
「いいえ、彼女のような女性は娼館を探せばいるのですよ。旦那様はまだ客を取る前の清い体の娼婦を斡旋するよう娼館の主人に掛け合ってくださいました。坊ちゃまが気に入ればそのままお買い上げ、気に入らなければ返します。いかがなさいます?」
侍従にそう言われ、僕は女を見た。
言葉は話せなくとも僕に気に入られなければ娼館に戻ることは理解しているのか、黒瑪瑙の如く美しい瞳に涙を滲ませ必死に訴えてきた。
「オネガイ、ワタシ……ヲ、カッテ……」
声は意外と可愛らしく、涙を滲ませた美しい顔は庇護欲をそそる。
その姿に心を掴まれた僕は彼女を囲うことを決めた。
「気に入った。このまま買い上げてくれ。そうだ、彼女の名前は?」
「名前は国を出る際に捨てているそうなので、坊ちゃまが新しくおつけください」
僕が新しく名前を?
そうか、なら…………
「じゃあ、今日から君の名前はオニキスだ。よろしくオニキス」
オニキス(黒瑪瑙)と呼ぶと彼女は嬉しそうに笑った。
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