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偽物疑惑
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「どういうこと? どうして陛下はあの二人を野放しにするの?」
「申し訳ございません。私にも理由までは分からないのです……。ただ、ご令嬢と大公殿下には『閉じ込めていたが勝手に逃げ出した』と思わせるように口裏を合わせろと命じられておりました」
「何それ……どうしてそんな真似を……? 意味が分からないわ……」
軟禁されているはずの阿呆王子にやたら会うのも“異世界あるある”だと思っていた。
よく考えればおかしなことなのに、そういうものかなーと呑気に構えていた自分を殴りたい。
きちんと収容されていて尚且つ監視の兵がいるのであれば逃げ出すことはほぼ不可能だ。
それなのに短期間で二度も私の前に現れたことをおかしいと思うべきだった。そんなの監視も収容もされていないからに決まっているのに。
「……その話が真実であると、どう証明する? 悪いがとても信じられんな」
「この話につきましては何の証拠もございません。ですが、此度の王命につきましてはここにしっかりと書状がございます」
兵士は懐から一枚の紙を取り出し、それを父へと渡す。
折りたたまれたそれを広げ、中に目を通した父は眉間に皺を寄せた。
「……其方、これは国王陛下から手渡されたものか?」
「はっ! 左様でございます!」
そうか……、と呟き再び父は書状に目を落とした。
「旦那様、いかがなさいましたか?」
父の様子に母が怪訝な声で尋ねる。
すると父は母にその書状を手渡した。
「この書状、違和感があると思わないか?」
「違和感ですか? うーん……あ、そういえば字が……」
字? 字がどうしたというのだろう?
「気づいたか。そうだよ、字だ。この書状に書かれているのはなんというか独特で癖のある字だ。陛下は字だけは優れていたと記憶している」
「ええ、確かに。むしろ王侯貴族でこんな汚い字を書く者がいるとは思えません」
私もその書状を見せてもらったのだが、確かに汚い字だった。
幼い頃からみっちり教育を施されている王族がこんな癖字を書くのは確かにおかしい。
あの無能な王子も字だけは綺麗だったはず。
「まさか……今の陛下は偽物ということでしょうか? 誰かが陛下に成り代わっていると?」
「その可能性はあるな……。一度王宮へと足を運び、それを確認せねば」
なんだか大変な事態になってきた。
まさか国王に偽物疑惑が湧くなんて……と、そこで私はふとあることに気づいた。
(先ほど王が私に対していやらしい事を企てていたと聞いたけど……考えてみたらあの小心者の国王がそんな事をするかしら……)
国王は空気が読めないところはあるけど、息子の婚約者を手籠めにするなんて大それたことを考える人だったかな?
なんだか小心者で気が利かないオッサンだという印象しかない。
晩餐会での言葉から男尊女卑の思考もあるのは分かったが、それでも兵士を使ってまで私を自分の寝室に連れ込もうとするほど私欲に塗れた人ではなかった。
(帝国に送られた書簡の文字は……どうだったのかしら)
ふと、帝国に送られた書簡の字が気になった。
それに書かれていた字もこの王命のような汚いものだとしたら……それは一体誰がしたためたものなのだろう……。
皇太子殿下のこと、ヘレンのこと、阿呆王子のこと、考えなければいけないことは山ほどあるのに。
ここに加えて国王の偽物疑惑だ。どう収集つければいいのかと考えるだけで頭が痛くなってくる。
「ミシェル、とにかく今夜はもう休め。色々あって疲れているだろう? お前がすべきことはもう済んだ。後は当主である儂が動く」
「ええ、そうですね。ミシェル、長い間貴女に負担ばかりかけて申し訳なかったわ。わたくしたちがもっと早く貴女が置かれている状況に気づいていればよかったのよ……。今後の煩わしい事は全てわたくしと旦那様で済ませます。貴女は皇太子殿下からの求婚の返事だけを考えていなさい」
話の流れで皇太子殿下に求婚されたことも話してしまったが、今それを蒸し返されることは恥ずかしい。こんな状況なのに自然と頬に熱が籠る。
「はい……。ありがとうございます、お父様、お母様」
確かに国王が偽物だとしても、当主ですらないない私に何かが出来るとは思えない。
下手をしたら国を揺るがす事態にもなりかねない予感に私はぞくりと背筋を震わせた。
「申し訳ございません。私にも理由までは分からないのです……。ただ、ご令嬢と大公殿下には『閉じ込めていたが勝手に逃げ出した』と思わせるように口裏を合わせろと命じられておりました」
「何それ……どうしてそんな真似を……? 意味が分からないわ……」
軟禁されているはずの阿呆王子にやたら会うのも“異世界あるある”だと思っていた。
よく考えればおかしなことなのに、そういうものかなーと呑気に構えていた自分を殴りたい。
きちんと収容されていて尚且つ監視の兵がいるのであれば逃げ出すことはほぼ不可能だ。
それなのに短期間で二度も私の前に現れたことをおかしいと思うべきだった。そんなの監視も収容もされていないからに決まっているのに。
「……その話が真実であると、どう証明する? 悪いがとても信じられんな」
「この話につきましては何の証拠もございません。ですが、此度の王命につきましてはここにしっかりと書状がございます」
兵士は懐から一枚の紙を取り出し、それを父へと渡す。
折りたたまれたそれを広げ、中に目を通した父は眉間に皺を寄せた。
「……其方、これは国王陛下から手渡されたものか?」
「はっ! 左様でございます!」
そうか……、と呟き再び父は書状に目を落とした。
「旦那様、いかがなさいましたか?」
父の様子に母が怪訝な声で尋ねる。
すると父は母にその書状を手渡した。
「この書状、違和感があると思わないか?」
「違和感ですか? うーん……あ、そういえば字が……」
字? 字がどうしたというのだろう?
「気づいたか。そうだよ、字だ。この書状に書かれているのはなんというか独特で癖のある字だ。陛下は字だけは優れていたと記憶している」
「ええ、確かに。むしろ王侯貴族でこんな汚い字を書く者がいるとは思えません」
私もその書状を見せてもらったのだが、確かに汚い字だった。
幼い頃からみっちり教育を施されている王族がこんな癖字を書くのは確かにおかしい。
あの無能な王子も字だけは綺麗だったはず。
「まさか……今の陛下は偽物ということでしょうか? 誰かが陛下に成り代わっていると?」
「その可能性はあるな……。一度王宮へと足を運び、それを確認せねば」
なんだか大変な事態になってきた。
まさか国王に偽物疑惑が湧くなんて……と、そこで私はふとあることに気づいた。
(先ほど王が私に対していやらしい事を企てていたと聞いたけど……考えてみたらあの小心者の国王がそんな事をするかしら……)
国王は空気が読めないところはあるけど、息子の婚約者を手籠めにするなんて大それたことを考える人だったかな?
なんだか小心者で気が利かないオッサンだという印象しかない。
晩餐会での言葉から男尊女卑の思考もあるのは分かったが、それでも兵士を使ってまで私を自分の寝室に連れ込もうとするほど私欲に塗れた人ではなかった。
(帝国に送られた書簡の文字は……どうだったのかしら)
ふと、帝国に送られた書簡の字が気になった。
それに書かれていた字もこの王命のような汚いものだとしたら……それは一体誰がしたためたものなのだろう……。
皇太子殿下のこと、ヘレンのこと、阿呆王子のこと、考えなければいけないことは山ほどあるのに。
ここに加えて国王の偽物疑惑だ。どう収集つければいいのかと考えるだけで頭が痛くなってくる。
「ミシェル、とにかく今夜はもう休め。色々あって疲れているだろう? お前がすべきことはもう済んだ。後は当主である儂が動く」
「ええ、そうですね。ミシェル、長い間貴女に負担ばかりかけて申し訳なかったわ。わたくしたちがもっと早く貴女が置かれている状況に気づいていればよかったのよ……。今後の煩わしい事は全てわたくしと旦那様で済ませます。貴女は皇太子殿下からの求婚の返事だけを考えていなさい」
話の流れで皇太子殿下に求婚されたことも話してしまったが、今それを蒸し返されることは恥ずかしい。こんな状況なのに自然と頬に熱が籠る。
「はい……。ありがとうございます、お父様、お母様」
確かに国王が偽物だとしても、当主ですらないない私に何かが出来るとは思えない。
下手をしたら国を揺るがす事態にもなりかねない予感に私はぞくりと背筋を震わせた。
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