11 / 84
ヨーク公爵家での騒動②
しおりを挟む
「お姉様、セレスタンは姫様ときちんと親睦を深めておりますか? 今日見た限りですと、かなり不仲のように見えたのですが……」
「そんなはずないわ! だってあの子は姫様に早くお会いしたいが為に、予定時刻よりも早く王宮へと向かうほどなのよ!?」
「はい? え……それ、本当に姫様にお会いするためですか?」
「え? な、なに? 何が言いたいの……?」
「先ほどセレスタンが姫様の侍女と不貞を働いていると申しましたよね。だからもしかして、不貞の相手に会う為に……時間よりも早く訪問しているのではなくて?」
ヨーク公爵夫人は妹の発言に背筋が凍った。
先ほどの話では、まるでセレスタンは王宮の侍女とただならぬ関係だと公言しているかのようだった。
それが本当ならば、まさか息子は……
「ちょっと待って! それだとセレスタンは王宮で不貞相手と密会していることになるわ!? そんな馬鹿なことするわけないでしょう?」
よりにもよって王族が住まう王宮内で不貞行為なぞ、するわけがないと信じたい。
それが本当ならば王族への不敬どころか背信行為だ。
「だって、そもそも時間より早く行くことがおかしいじゃないですか? それに、いくら早く会いたいとはいえ、その行為は礼儀に反しています。王族に対してそんな無礼な行為をしている時点でお姉様はどうして止めなかったのですか?」
「そ、それは…………」
こうして妹に指摘されるまで気付かなかった。息子がとんでもないマナー違反をしていることを。
ただ、相手を愛するが故の行為だと、愛が深いなら許されることだと、本気で思っていた。
冷静に考えれば、いくら婚約者といえども王族に対して礼節は弁えるべきなのに。
そんな焦りとショックで冷や汗をかくヨーク公爵夫人の元に、執事が一人の男を連れてきた。
「奥様、この者がセレスタン様付きの従者でございます」
連れてこられた若い従者は、何が何だか分からないといった風情で目を忙しなく動かす。
だが、夫人はそんなこと構わず飛びかかるように彼を問い詰めた。
「お前、どうして今日のことを報告しなかったの!?」
「え? え……? 今日のこと、ですか?」
「そうよ! こんな重大な事を報告しないなど、何を考えているの! 何のための従者よ!!」
「重大なこと!? いったい何があったというのですか?」
「とぼけないで頂戴! 王宮でセレスタンが姫様に詰め寄ったそうじゃないの! お前はその時何をしていたの! どうしてあの子を止めなかったのよ!?」
「セレスタン様が姫様に……!? す、すみません! 私はいつも馬車内で待つよう言いつけられているので、セレスタン様がそのようなことをしただなんて知りませんでした!!」
「は……? 何ですって? 馬車内で待つように言いつけられている……? 誰にそんな馬鹿な命令をされているというの!」
「ひいっ!? すみません! セレスタン様です! セレスタン様は『愛する姫様の瞳に他の男を映したくない』と仰って……それで、私はいつも王宮の馬車停まりで待機しております!」
「何ですって!? じゃあ……セレスタンは従者を一人もつけずに王宮内へ? 嘘でしょう……?」
高位貴族が従者を一人も付けないなど有り得ない。
従者はセレスタンの嫉妬によるものだと言うが、それは本心ではないのだろう。
仮に本心だとしても、知っていたならば止めていた。
「……ちょっと待って、なら、贈り物などはセレスタンが自分で姫様に持っていったということ?」
唖然とするヨーク公爵夫人に代わり、テリア伯爵夫人が従者にそう問いかけた。
「は、はい……。セレスタン様が手ずから姫様に渡したいと仰いましたので……」
この言葉にテリア伯爵夫人は何かに気付いたようにハッと顔を上げた。
「お姉様! お礼状! 姫様からのお礼状を見せてください!」
切羽詰まったようにそう叫ぶ妹にヨーク公爵夫人は困惑した。
姫様からのお礼状?
今はセレスタンの不敬や高位貴族として有り得ない行動に驚愕しているのに、どうしていきなりそんな話になるのか。
「従者を付けない理由が、不貞相手と逢引するためならば辻褄が合います。それに、贈り物もその相手に渡しているのかもしれません。もしそうなら大問題です……。セレスタンは姫様とのお茶会に手土産すら持参していないことに……」
妹の言葉にヨーク公爵夫人は全身から血の気が引いた。
もしそれが本当であれば、息子は婚約者に会う日に不貞相手と密会し、婚約者に渡すはずだったプレゼントも渡してしまっていることになる。
「王宮に招かれておいて贈り物すら持参しないなんて……! そんな……それが本当ならば、とんでもない恥よ、有り得ないわ……。それに姫様への贈り物だからと、わたくしが選んだ物だってあるのよ? それがどこぞの女の手に渡っているというの……!?」
王族の姫に贈る物なので、それなりに値の張る品を用意したことは一度や二度じゃない。
姫様の目の色と同じ大粒のエメラルドをあしらった髪飾り、雪のように白い肌に合うであろう毛皮のショール、繊細な細工と煌めく宝石をあしらったオルゴール。そのどれもが王家の姫に失礼のないよう吟味して選んだ品ばかりだ。
震える声でヨーク公爵夫人は家令に、セレスタンが王宮へと持参した贈り物のリストとお礼状を照らし合わせるよう命じた。
「奥様、こちらがセレスタン様が持参した贈り物のリストです。それとお礼状なのですが……手元にあるのはこれしかございません。後はセレスタン様ご自身が持ってらっしゃるのかと……」
贈り物のリストには高価な品ばかりが記載されている。
宝飾品や小物、花束、それに王都で有名なパティスリーの菓子。
だが、家令が持ってきたお礼状はたったの2通だけだった。
「このお礼状は……どちらもわたくしが姫様にお渡ししたものね……」
領地で採れた新鮮な果物を贈った時のものと、茶葉を贈った時のものだけ。
ヨーク公爵夫人はこうして何かあった時にすぐに出せるよう、手紙の類は使用人に管理してもらっている。
「セレスタンが自分で管理しているのなら……あの子の部屋を探すしかないわね……」
「お待ちになってお姉様、現物は確認できなくとも、手紙が届いたかどうかの記録は残っているはずでしょう?」
「あっ……確かにそうね。すぐに確認して頂戴!」
ヨーク公爵夫人がそう命じると、使用人達が急いで記録を確認する。
そして判明したのは、とても受け入れがたい事実であった。
「なんてこと……。姫様からの手紙は、この2通のお礼状の時にしか届いていないわ……」
通常、贈り物を貰った場合はすぐにお礼状を書くことが礼儀となっている。
王宮から公爵家へと手紙が届く時間は一両日中と考えられ、セレスタンが王宮へと贈り物を持参した翌日には届くものと考えられる。
だが、どれだけその付近の記録を探しても見つからない。
それどころか姫から届いた手紙も、ヨーク公爵夫人宛ての物しか見つけられなかった。
「王族の姫君がお礼状を贈らないなんてマナー違反をするとは思えないわ。セレスタンはこのリストにある物全部を不貞相手に贈ったのではなくて?」
妹の言葉にショックと怒りがごちゃ混ぜになり、ヨーク公爵夫人はその場にふらりと倒れそうになる。
だが、それすら許さないと叱責された。
「しっかりしてくださいましお姉様! ここで貴女が倒れたらその分対応が遅くなってしまうでしょう!? 既にもう遅いかもしれませんけど……王家と姫様へどう詫びるかをきちんと考えませんと!」
「そ、そうね……。でも、もしかしたら全部勘違いかもしれないし……」
セレスタンが不貞をしていると確定したわけではない。
もしかすると単なる行き違いなのではないかと楽天的な思考を持ち始めた姉に、テリア伯爵夫人は怒りを露わにした。
「公爵夫人ともあろう方がそのような腑抜けた考えでどうしますか! 不貞自体に確証はなくとも、今日王宮で姫様に詰め寄ったことを事実ですのよ!? その際に別の女の名を出し、その女と関係があるよう匂わせた発言をしたことも事実です! 目を逸らしてはいけません、この家を潰したいのですか!?」
妹の叱責にヨーク公爵夫人はハッとなった。
そうだ、現実逃避している場合じゃない。信じたくなくとも現実を見て、今後どうするかを考えなくては。
「そんなはずないわ! だってあの子は姫様に早くお会いしたいが為に、予定時刻よりも早く王宮へと向かうほどなのよ!?」
「はい? え……それ、本当に姫様にお会いするためですか?」
「え? な、なに? 何が言いたいの……?」
「先ほどセレスタンが姫様の侍女と不貞を働いていると申しましたよね。だからもしかして、不貞の相手に会う為に……時間よりも早く訪問しているのではなくて?」
ヨーク公爵夫人は妹の発言に背筋が凍った。
先ほどの話では、まるでセレスタンは王宮の侍女とただならぬ関係だと公言しているかのようだった。
それが本当ならば、まさか息子は……
「ちょっと待って! それだとセレスタンは王宮で不貞相手と密会していることになるわ!? そんな馬鹿なことするわけないでしょう?」
よりにもよって王族が住まう王宮内で不貞行為なぞ、するわけがないと信じたい。
それが本当ならば王族への不敬どころか背信行為だ。
「だって、そもそも時間より早く行くことがおかしいじゃないですか? それに、いくら早く会いたいとはいえ、その行為は礼儀に反しています。王族に対してそんな無礼な行為をしている時点でお姉様はどうして止めなかったのですか?」
「そ、それは…………」
こうして妹に指摘されるまで気付かなかった。息子がとんでもないマナー違反をしていることを。
ただ、相手を愛するが故の行為だと、愛が深いなら許されることだと、本気で思っていた。
冷静に考えれば、いくら婚約者といえども王族に対して礼節は弁えるべきなのに。
そんな焦りとショックで冷や汗をかくヨーク公爵夫人の元に、執事が一人の男を連れてきた。
「奥様、この者がセレスタン様付きの従者でございます」
連れてこられた若い従者は、何が何だか分からないといった風情で目を忙しなく動かす。
だが、夫人はそんなこと構わず飛びかかるように彼を問い詰めた。
「お前、どうして今日のことを報告しなかったの!?」
「え? え……? 今日のこと、ですか?」
「そうよ! こんな重大な事を報告しないなど、何を考えているの! 何のための従者よ!!」
「重大なこと!? いったい何があったというのですか?」
「とぼけないで頂戴! 王宮でセレスタンが姫様に詰め寄ったそうじゃないの! お前はその時何をしていたの! どうしてあの子を止めなかったのよ!?」
「セレスタン様が姫様に……!? す、すみません! 私はいつも馬車内で待つよう言いつけられているので、セレスタン様がそのようなことをしただなんて知りませんでした!!」
「は……? 何ですって? 馬車内で待つように言いつけられている……? 誰にそんな馬鹿な命令をされているというの!」
「ひいっ!? すみません! セレスタン様です! セレスタン様は『愛する姫様の瞳に他の男を映したくない』と仰って……それで、私はいつも王宮の馬車停まりで待機しております!」
「何ですって!? じゃあ……セレスタンは従者を一人もつけずに王宮内へ? 嘘でしょう……?」
高位貴族が従者を一人も付けないなど有り得ない。
従者はセレスタンの嫉妬によるものだと言うが、それは本心ではないのだろう。
仮に本心だとしても、知っていたならば止めていた。
「……ちょっと待って、なら、贈り物などはセレスタンが自分で姫様に持っていったということ?」
唖然とするヨーク公爵夫人に代わり、テリア伯爵夫人が従者にそう問いかけた。
「は、はい……。セレスタン様が手ずから姫様に渡したいと仰いましたので……」
この言葉にテリア伯爵夫人は何かに気付いたようにハッと顔を上げた。
「お姉様! お礼状! 姫様からのお礼状を見せてください!」
切羽詰まったようにそう叫ぶ妹にヨーク公爵夫人は困惑した。
姫様からのお礼状?
今はセレスタンの不敬や高位貴族として有り得ない行動に驚愕しているのに、どうしていきなりそんな話になるのか。
「従者を付けない理由が、不貞相手と逢引するためならば辻褄が合います。それに、贈り物もその相手に渡しているのかもしれません。もしそうなら大問題です……。セレスタンは姫様とのお茶会に手土産すら持参していないことに……」
妹の言葉にヨーク公爵夫人は全身から血の気が引いた。
もしそれが本当であれば、息子は婚約者に会う日に不貞相手と密会し、婚約者に渡すはずだったプレゼントも渡してしまっていることになる。
「王宮に招かれておいて贈り物すら持参しないなんて……! そんな……それが本当ならば、とんでもない恥よ、有り得ないわ……。それに姫様への贈り物だからと、わたくしが選んだ物だってあるのよ? それがどこぞの女の手に渡っているというの……!?」
王族の姫に贈る物なので、それなりに値の張る品を用意したことは一度や二度じゃない。
姫様の目の色と同じ大粒のエメラルドをあしらった髪飾り、雪のように白い肌に合うであろう毛皮のショール、繊細な細工と煌めく宝石をあしらったオルゴール。そのどれもが王家の姫に失礼のないよう吟味して選んだ品ばかりだ。
震える声でヨーク公爵夫人は家令に、セレスタンが王宮へと持参した贈り物のリストとお礼状を照らし合わせるよう命じた。
「奥様、こちらがセレスタン様が持参した贈り物のリストです。それとお礼状なのですが……手元にあるのはこれしかございません。後はセレスタン様ご自身が持ってらっしゃるのかと……」
贈り物のリストには高価な品ばかりが記載されている。
宝飾品や小物、花束、それに王都で有名なパティスリーの菓子。
だが、家令が持ってきたお礼状はたったの2通だけだった。
「このお礼状は……どちらもわたくしが姫様にお渡ししたものね……」
領地で採れた新鮮な果物を贈った時のものと、茶葉を贈った時のものだけ。
ヨーク公爵夫人はこうして何かあった時にすぐに出せるよう、手紙の類は使用人に管理してもらっている。
「セレスタンが自分で管理しているのなら……あの子の部屋を探すしかないわね……」
「お待ちになってお姉様、現物は確認できなくとも、手紙が届いたかどうかの記録は残っているはずでしょう?」
「あっ……確かにそうね。すぐに確認して頂戴!」
ヨーク公爵夫人がそう命じると、使用人達が急いで記録を確認する。
そして判明したのは、とても受け入れがたい事実であった。
「なんてこと……。姫様からの手紙は、この2通のお礼状の時にしか届いていないわ……」
通常、贈り物を貰った場合はすぐにお礼状を書くことが礼儀となっている。
王宮から公爵家へと手紙が届く時間は一両日中と考えられ、セレスタンが王宮へと贈り物を持参した翌日には届くものと考えられる。
だが、どれだけその付近の記録を探しても見つからない。
それどころか姫から届いた手紙も、ヨーク公爵夫人宛ての物しか見つけられなかった。
「王族の姫君がお礼状を贈らないなんてマナー違反をするとは思えないわ。セレスタンはこのリストにある物全部を不貞相手に贈ったのではなくて?」
妹の言葉にショックと怒りがごちゃ混ぜになり、ヨーク公爵夫人はその場にふらりと倒れそうになる。
だが、それすら許さないと叱責された。
「しっかりしてくださいましお姉様! ここで貴女が倒れたらその分対応が遅くなってしまうでしょう!? 既にもう遅いかもしれませんけど……王家と姫様へどう詫びるかをきちんと考えませんと!」
「そ、そうね……。でも、もしかしたら全部勘違いかもしれないし……」
セレスタンが不貞をしていると確定したわけではない。
もしかすると単なる行き違いなのではないかと楽天的な思考を持ち始めた姉に、テリア伯爵夫人は怒りを露わにした。
「公爵夫人ともあろう方がそのような腑抜けた考えでどうしますか! 不貞自体に確証はなくとも、今日王宮で姫様に詰め寄ったことを事実ですのよ!? その際に別の女の名を出し、その女と関係があるよう匂わせた発言をしたことも事実です! 目を逸らしてはいけません、この家を潰したいのですか!?」
妹の叱責にヨーク公爵夫人はハッとなった。
そうだ、現実逃避している場合じゃない。信じたくなくとも現実を見て、今後どうするかを考えなくては。
955
あなたにおすすめの小説
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
貴方達から離れたら思った以上に幸せです!
なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」
信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。
私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。
「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」
「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」
「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」
妹と両親が、好き勝手に私を責める。
昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。
まるで、妹の召使のような半生だった。
ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。
彼を愛して、支え続けてきたのに……
「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」
夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。
もう、いいです。
「それなら、私が出て行きます」
……
「「「……え?」」」
予想をしていなかったのか、皆が固まっている。
でも、もう私の考えは変わらない。
撤回はしない、決意は固めた。
私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。
だから皆さん、もう関わらないでくださいね。
◇◇◇◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる