ダンジョンフォーミング

美山 毛先

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低階層 編

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 ダンジョン十六階。未踏域ではあるが、今俺は一人でここを進んでいる。
 十五階層のクリア報酬として全身の皮鎧があったので着てみたんだがかなり具合がいい。普段は柔らかく動きを阻害しないのに衝撃が加わるとその部位が硬くなるびっくり仕様だ。これに剣帯、ガントレット、リュックで完璧な冒険者である。

 剣は柄しかありませんが。

 「…大丈夫大丈夫。シェリーがいなくても、柄しかなくても、大丈夫大丈夫。」

 さっきからぶつぶつと呟きながら歩いている俺は側から見たらやばい人確定だろう。シェリーはというと、やりたいことができたとかでホームに残ると言いだした。

 いざとなったら入口からまたホームに帰ればいいので不安はないが。
 
 「さて、最初の部屋が見えてきたなぁ。」

 不安を紛らわせるためにそう呟くと、俺はおもむろに柄しかない剣を抜く。あの男の記憶によるとゴブリンアーチャーが大量にいるはずだ。ボス部屋がそうだったので、ここの階もそうだろう。

 気を練りながらイメージを固める。
 
 作り出すのは、薄く、折れず、砕けない剣だ。

「クリスタルを自在に産み出す能力ってのもあるんだなぁ。俺はなんだろう?気を使ってはいるが、これはスキルって気がしないし」

 そう言いながら手元を見ると、若干柄を侵食しながらもクリスタル製の剣が出来上がっていた。

 それを携えながら、気を循環させながら走る。走る。走る。

 矢を真正面から弾き、叩き切り、アーチャーの首を跳ねる。剣は以前の剣とは比べものにならないぐらい切れ味が良く、思い描くように斬り捨てられる。

 決して軽い剣ではないが、気を使って底上げされた身体能力により苦もなく振り回せる。

 ゴブリンの棍棒ごと袈裟に斬り捨て、返す刀で横から迫るゴブリンの首を跳ねる。

 くるくると回りながら敵を切り裂き、矢を落とし、また敵を斬る。

 そうして、五分ほどで殲滅を完了すると気を腹に集め、息を吐き一息つく。あたりにはドロップアイテムと光の粒子が舞っていた。

「これで武器の方はなんとかなるか。」

 そう呟きながらクリスタルを霧散させると、柄を鞘に収めた。霧散したクリスタルはキラキラと輝きながら俺の身体に吸収される。

「スキルって使ったら疲れるのかと思ったが大丈夫だな。次使えないような気もしないし、まだまだ行くかね」

 そう呟くと、俺は十六階の攻略を本格化させた。
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