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第二章
十話 武士道とは死ぬことと見つけたり
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ドカンちゃんとチカンちゃんは金比良宮の駅で降りた。
駅を降りてしばらく行くと川があって橋がかかっている。
そこの橋の上から下をみると、ものすごい数の鯉がエサを求めて橋の下からパクパク
口をあけていた。
なかなかゴウカイな風景だ。
後ろを振り返るとセキコがジトーっとドカンちゃんたちを見ながらゆっくり近づいてくる。
ドカンちゃんは気にせず金比良宮の石段を登る。
金比良宮の石段には足腰の弱いお年寄りを
担いであがるお仕事があり、青年たちがスタンバイしている。
石段はすごく長かった。
その石段の中腹くらいに来たとき、チカンちゃんが驚きの声をあげる。
「すごーい!このプロペラすごーい!」
チカンちゃんがトコトコと駆けていく。
その向かう先に巨大な金色のプロペラが飾ってあった。
ものすごく大きかったので、ドカンちゃんも驚いた。
「何でこんなところにプロペラが飾ってるんだろうね」
「海の神様だからじゃない?」
チカンちゃんが言った。
チカンちゃんは神様の事については物知りだ。
「海の神様なの?」
「そうだよワニの神様だよ。クンビーラっていうワニの神様だよ」
「そうなんだ!」
ドカンちゃんは驚いた。
ワニの神様とは知らなかった。
ドカンちゃんとチカンちゃんは、やっとの思いで、
金比良宮の本宮までたどり着き、手を合わせた。
すると、本宮の横の辺りで座り込んで涙ぐんでいるおじいさんがいた。
「どうしたんですか?」
ドカンちゃんが話しかける。
「じつはの、この先の奥の宮に孫の受験成功の祈願に行くと
孫と約束したんじゃ、しかしもう、体がうごかん」
「若者が運んでくれるサービスがあるでしょ」
「それは、この下までで、奥の院には行ってくれないんじゃ」
「そうなんですか困りましたね」
ドカンちゃんは、金比良宮の本宮の裏に奥の院がある事も
運んでくれるサービスがそこまで行ってくれない事もしらなかった。
石段は全部で596段あり、そのうち365段まで行ってくれるらしい。
「私がおんぶしていこう」
ドカンちゃんの背後から声をかけたのはセキコだった。
「あ、セキコさん助かります!」
ドカンちゃんは満面の笑みをうかべた。
「ねえ、ねえ、ドカンちゃん、セキコがおじいさんを運んでいるうちに
私達逃げちゃおうよ」
こっそりチカンちゃんが言った。
「いいえ、そんな人の善意を逆手に取るようなことはしてはいけません。
私たちもおじいさんと一緒に行きましょう」
「うわー!ドカンちゃん馬鹿正直~」
「馬鹿しか取り柄がありませんから」
ドカンちゃんはニッコリ笑った。
ドカンちゃん、チカンちゃん、セキコとおんぶされたご老人が石段を登る。
ずっと昇る。途中、色々な神社の横を通過して、進む。
しだいに、玉垣がくずていて黄色と黒のロープが張ってあり、
近づくことが禁止された場所が出てくる。
しだいに枯れ葉に埋もれる石畳。
そのうち、石畳もなくなって、舗装されていない山道になった。
それでも登る、登る、まだつかない、登る。
そして、その先にやっと神社があった。
奥の院厳密社。
神社には神官の方が居られて、御守りも売っていた。
おじいさんは無事に御守りをいただくことができた。
そこの神社の崖には天狗と烏天狗のお面がかけてあった。
「さて、一緒に帰りましょうセキコさん」
ニッコリ笑ってドカンちゃんが言うとセキコは無表情に首を横に振る。
「え?私に西瓜牛乳おごってもらうまでは私についてくるんじゃなかったんですか?」
「たしかに、それは私の望みだ。しかし、今、このご老人はお孫さんに
御守りを届けなければならない。そこまでおじいさんをかついでいくのが私の責務だ」
「どうしてそこまでされるんですか?自分のやりたいことがあるのに」
「武士道とは死ぬことと見つけたり」
「え?すいません、よく分かりません」
「死ぬということは何か分かるか」
「はい、死んじゃうことですよね」
「そうではない。死とは日常に転がっている。
電車に乗っていて、疲れているのにお年寄りに席をゆずる。
満員電車でベビーカーが邪魔だと思っても、お母さんの負担を
減らすためだと思って我慢する。
子供が泣いていても、子供は泣くことが仕事だと思って
スルーする。
すべて、自分を殺しているのだ。
自分がやりたいことを我慢して、自分を殺して他人に譲る。
それが自分を殺すこと。
武士道とは死ぬことと見つけたり。
死とは、一足飛びにあるものではない。
日頃よりの小さな死の積み重ねが本当に死に繋がっているのだ。
だから、大声で自分はいつでも死ねる!と大見得を切ることより、
日頃から小さな死を積み重ねることが武士道なのだ。
台湾人は日本人から武士道を習った。そして、それを実践している。
その武士道を日本人が忘れてしまったとすれば、それは悲しいことだ」
セキコはそう言いおえると、ドカンちゃんに背を向けおじいさんを
背中に背負って坂を下りていった。
「何だったんだろうね、あいつ」
あきれぎみにチカンちゃんが言った。
ドカンちゃんはセキコの後ろ姿に深々と頭をさげた。
「立派な方だと思います」
ドカンちゃんは言った。
駅を降りてしばらく行くと川があって橋がかかっている。
そこの橋の上から下をみると、ものすごい数の鯉がエサを求めて橋の下からパクパク
口をあけていた。
なかなかゴウカイな風景だ。
後ろを振り返るとセキコがジトーっとドカンちゃんたちを見ながらゆっくり近づいてくる。
ドカンちゃんは気にせず金比良宮の石段を登る。
金比良宮の石段には足腰の弱いお年寄りを
担いであがるお仕事があり、青年たちがスタンバイしている。
石段はすごく長かった。
その石段の中腹くらいに来たとき、チカンちゃんが驚きの声をあげる。
「すごーい!このプロペラすごーい!」
チカンちゃんがトコトコと駆けていく。
その向かう先に巨大な金色のプロペラが飾ってあった。
ものすごく大きかったので、ドカンちゃんも驚いた。
「何でこんなところにプロペラが飾ってるんだろうね」
「海の神様だからじゃない?」
チカンちゃんが言った。
チカンちゃんは神様の事については物知りだ。
「海の神様なの?」
「そうだよワニの神様だよ。クンビーラっていうワニの神様だよ」
「そうなんだ!」
ドカンちゃんは驚いた。
ワニの神様とは知らなかった。
ドカンちゃんとチカンちゃんは、やっとの思いで、
金比良宮の本宮までたどり着き、手を合わせた。
すると、本宮の横の辺りで座り込んで涙ぐんでいるおじいさんがいた。
「どうしたんですか?」
ドカンちゃんが話しかける。
「じつはの、この先の奥の宮に孫の受験成功の祈願に行くと
孫と約束したんじゃ、しかしもう、体がうごかん」
「若者が運んでくれるサービスがあるでしょ」
「それは、この下までで、奥の院には行ってくれないんじゃ」
「そうなんですか困りましたね」
ドカンちゃんは、金比良宮の本宮の裏に奥の院がある事も
運んでくれるサービスがそこまで行ってくれない事もしらなかった。
石段は全部で596段あり、そのうち365段まで行ってくれるらしい。
「私がおんぶしていこう」
ドカンちゃんの背後から声をかけたのはセキコだった。
「あ、セキコさん助かります!」
ドカンちゃんは満面の笑みをうかべた。
「ねえ、ねえ、ドカンちゃん、セキコがおじいさんを運んでいるうちに
私達逃げちゃおうよ」
こっそりチカンちゃんが言った。
「いいえ、そんな人の善意を逆手に取るようなことはしてはいけません。
私たちもおじいさんと一緒に行きましょう」
「うわー!ドカンちゃん馬鹿正直~」
「馬鹿しか取り柄がありませんから」
ドカンちゃんはニッコリ笑った。
ドカンちゃん、チカンちゃん、セキコとおんぶされたご老人が石段を登る。
ずっと昇る。途中、色々な神社の横を通過して、進む。
しだいに、玉垣がくずていて黄色と黒のロープが張ってあり、
近づくことが禁止された場所が出てくる。
しだいに枯れ葉に埋もれる石畳。
そのうち、石畳もなくなって、舗装されていない山道になった。
それでも登る、登る、まだつかない、登る。
そして、その先にやっと神社があった。
奥の院厳密社。
神社には神官の方が居られて、御守りも売っていた。
おじいさんは無事に御守りをいただくことができた。
そこの神社の崖には天狗と烏天狗のお面がかけてあった。
「さて、一緒に帰りましょうセキコさん」
ニッコリ笑ってドカンちゃんが言うとセキコは無表情に首を横に振る。
「え?私に西瓜牛乳おごってもらうまでは私についてくるんじゃなかったんですか?」
「たしかに、それは私の望みだ。しかし、今、このご老人はお孫さんに
御守りを届けなければならない。そこまでおじいさんをかついでいくのが私の責務だ」
「どうしてそこまでされるんですか?自分のやりたいことがあるのに」
「武士道とは死ぬことと見つけたり」
「え?すいません、よく分かりません」
「死ぬということは何か分かるか」
「はい、死んじゃうことですよね」
「そうではない。死とは日常に転がっている。
電車に乗っていて、疲れているのにお年寄りに席をゆずる。
満員電車でベビーカーが邪魔だと思っても、お母さんの負担を
減らすためだと思って我慢する。
子供が泣いていても、子供は泣くことが仕事だと思って
スルーする。
すべて、自分を殺しているのだ。
自分がやりたいことを我慢して、自分を殺して他人に譲る。
それが自分を殺すこと。
武士道とは死ぬことと見つけたり。
死とは、一足飛びにあるものではない。
日頃よりの小さな死の積み重ねが本当に死に繋がっているのだ。
だから、大声で自分はいつでも死ねる!と大見得を切ることより、
日頃から小さな死を積み重ねることが武士道なのだ。
台湾人は日本人から武士道を習った。そして、それを実践している。
その武士道を日本人が忘れてしまったとすれば、それは悲しいことだ」
セキコはそう言いおえると、ドカンちゃんに背を向けおじいさんを
背中に背負って坂を下りていった。
「何だったんだろうね、あいつ」
あきれぎみにチカンちゃんが言った。
ドカンちゃんはセキコの後ろ姿に深々と頭をさげた。
「立派な方だと思います」
ドカンちゃんは言った。
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