ねこのフレンズ

楠乃小玉

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第二章

十四話 トロピカール!

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  「えっほ、えっほ」
 シアンちゃんとサバンちゃんは二人乗り自転車をこいで、県道25号線を東に向かっていた。

 「え~こっちで本当にいいの?」
 「私を信じなさい、サバンちゃん、私の感がこっちだと言っているのよ!」
 「ほんとかな~」
 そのうち、トンネルに通りかかる。
 「うわ!トンネルだよ、もうこれ以上いけないよ!」
 「大丈夫よ、横に歩道があるしたいしたトンネルじゃないわ!」
 「本当かなあ」
 「本当よ!」

 二人はトンネルの中に入っていく。中は薄暗かったが、
 しばらくいくと、すぐに向こう側の明かりが見えた。
 「なんだ、たいしたことないじゃん」
 「言ったとおりでしょ」
 「そうだね、トンネルなんてたいしたことないよ」
 「そうよ、そんな長いトンネルなんてこの辺りにはないわよ」
 
 しばらく自転車をこいでいると、またトンネルがある。 
 「あ、またトンネルだ」
 「今度も一気に突っ切るわよ!」
 「ゴーッ!」

 シアンちゃんとサバンちゃんはノリノリでトンネルに突っ込んだ。

 が、

 いつまでたってもトンネルは終わらない。
 しかも本州のトンネルはトンネルの中に常備灯がついているが、
 ここは真っ暗なのだ。

 「怖いよ~真っ暗だよ~」
 サバンちゃんが泣きそうになる。

 「大丈夫よ!私がついているわ!サバンちゃんは私が守る!」
 そう言うとシアンちゃんの目がボッと青色に燃え上がる。
 すると回るがふわっと明るくなる。
 「うわっ!明るくなった、シアンちゃん大好き!」
 「私も大好きよ、サバンちゃん!」
 
 「すっすめー!すっすっめー!私はすごい~
 自転車大好き~どんどん行こう~」
 
 二人は声を合わせて歌いながら自転車をこいでトンネルを突っ切った。

 「やったー!」
 「ほら、ごらんなさい、私たちの勝利よ!」

 テンションマックスでシアンちゃんとサバンちゃんは宇和島に向かった。

 周り一面平地で田んぼ。
 伊予石城の辺りまでだいたい田んぼ。
 上宇和の辺りまで来ると住宅街が広がっていた。
 なんか、この辺りから、それまでの長浜や大洲とは雰囲気が違う。
 なんとなく新しいお家が多くなってきた。

 そして、宇和島!
 シアンちゃんとサバンちゃんは目を見張った。

 「トロピカール!」

 なんか南国の椰子の木みたいなのが道路沿いにいっぱい生えている。
 「なにここ?ハワイ」
  「すごいよねここ、ハワイにいかなくて、夏にここに来ればよくない」
 
 二人は周囲をキョロキョロ見回した。
 「うわー、すごいわ、ここ、近郷近在で一番の都会よ、すごいオシャレじゃな~い」

 「見て見て!シアンちゃん、ここの鰹節赤いよ!」
 サバンちゃんがお店の店先に置いてある紅色の鰹節みたいなのを指さした。

 「あら、これ何かしら」
 
 「あら、かわいいわね~」
 店の奥からおばあさんが出てきた。
 「ねえ、どうしてこの鰹節、赤いの?」
 サバンちゃんが聞いた。
 「これはね、鰹節じゃないよ、削りかまぼこだよ」
 笑顔でおばあちゃんが言った。

 シアンちゃんはお店の中をキョロキョロ見回して
 紅白の削りかまぼこをみつけた。
 「あら、これ、縁起よさそうね、いただくわ」
 「はいはい」
 
 削りかまぼこを買ったシアンちゃんは袋をあけて、
 サバンちゃんにあべる。

 「はい、あ~ん」
 「あ~ん、モシャモシャ」
 「どう?」
 「う~ん、乾燥した燻製イカっぽい」
 「そうなの、モシャモシャ、あら、おいしいじゃない、
 私は好きよ」

 「宇和島にはおいしいものがいっぱい有るから見ていってね」
 「わかったわ、ありがとね、おばさま」
 シアンちゃんはそう言っておばあさんに対して深く一礼した。
 「ばいばい」
 手を振ってサバンちゃんもシアンちゃんの後をついていった。

 「あ、これ面白いわよ!」
 シアンちゃんが新しいお菓子を見つけた。
 「あ~このおせんべい分厚いねえ」
 サバンちゃんがそう言って五枚くらい入っている
 分厚い煎餅みたいなものをもちあげる。
 「ねえサバンちゃん、これって、ひょっとしてお煎餅じゃないんじゃない?」
 「買って食べてみようよ」
 「そうね、これください」

 シアンちゃんはその謎の物体を買った。
 パックには唐饅頭って書いてある。
 「饅頭ですって、それにしてはひらべったいわね、はい」
 シアンちゃんはパックをあけて、先にサバンちゃんにたべさせてあげる。
 「はむっ、あ、やっぱり、歯ごたえがちょっと堅くて潰したパンみたい!
 菓子パンをリュックに入れてお尻に敷いちゃって、ペッちゃんこにした
 時の歯ごたえがする!」
 「じゃあ、私もいただくわ。はむっ、まあ、ゆずと黒糖があるのね、私はゆずが好きかしら」
 「ボクは黒糖が好きだよ!」
 二人は仲良く唐饅頭を食べた。

 そのあと二人は宇和島の観光案内所に行く。
 「ここから行くので面白いところありますか?」
 すると、観光案内所のお姉さんはニッコリ笑って答えた。
 「そうねえ、四万十川とか有名かしら」
 「それはどう行けばいいの?」
 「そうだねえ、ここから山側の道をのぼっていけばいいかなあ」
 「ありがとう」
 
 二人は宇和島を後にした。
 
 町からすぐのところ、山側の道に行くと、すぐに天神トンネルがあった。

 「うわっ!トンネルだ!」
 「大丈夫よ、見て、ここは常備灯があるわ」
 「ほんとだ!あっかるーい!全然怖くないね」
 「そうよ」

 次の丸徳トンネルも明るかった。

 「ぎゃはは、こんあの楽勝じゃ~んばっちこーい!トンネルもっとこーい!」
 サバンちゃんは有頂天になっていた。

 しかし、中に入っていくにしたがって、しだいに常備灯の数が少なくなり、
 暗くなってくる。

 「うわ~暗いのこわ~い!狭いのこわ~い!」
 サバンちゃんが泣きそうになる。

 「私にまかせなさい!」
 シアンちゃんの目がボッと青く燃える。

 「うわ~い!明るくなったぞ!シアンちゃん大好き!」
 「私も大好きよ、サバンちゃん!」
 
 二人は自転車をこいで四万十川に向かった。


 

 
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