ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

十一話 雲海

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 その日は心ゆくまで高千穂を観光し、夜になったら高千穂神社で開催される
 神楽を見た。
 神楽の演目は高千穂を荒らし回って退治された鬼である鬼八の話だった。

 自転車で一気に高千穂まで登ってきた疲れもあり、ドカンちゃんもチカンちゃんも
 サバンちゃんもシアンちゃんもその日は旅館でゆっくり寝た。

 そして真夜中。

 「おい!なにしてる!早く起きるんだ!」

 大声でドカンちゃんは飛び起きた。

 「あ、はい!」
 目の前にチー子がいた。
 
 「何ですか!」

 「すぐに行くよ!」
 「え?」
 
 「これを見なければ、高千穂に来た意味がないよ!」

 「は……い……」

 意味も分からずドカンちゃんは寝間着から服に着替えた。

 「むにゃむにゃ、なによもう~」
 不機嫌そうにシアンちゃんが起き出す。

 「どうせ、たいしたことじゃないでしょ」
 「たいしたことだよ!」
  「何よ、その口の利き方!」

 チー子とシアンちゃんが口げんかしはじめる。

 「まあまあ、早くしましょう」

 「チカンちゃん、行きますよ」

 ドカンちゃんはチカンちゃんをゆさぶるが、
 チカンちゃんはムニャムニャ言って起きない。

 「仕方ないなあ」
 ドカンちゃんはチカンちゃんをダッコして自転車のところまで
 もっていきい、自転車のカゴに乗せた。

 「いくわよ、サバンちゃん」
 シアンちゃんがブンブンと寝ているサバンちゃんを揺さぶる。
 「なんだよ~どうせたいしたことじゃないでしょ~」
 寝ぼけながらサバンちゃんが目をこする。
「たいしたことよ!」
 シアンちゃんが怒鳴る。
 「う~」
 サバンちゃんは少し不機嫌そうに部屋の外にでる。
 パンツとブラジャー姿だった。
 「なにやってんのよ!この素ボケが!」
 シアンちゃんが怒鳴って部屋から服を持ってくる。

 「おきがえさせて」
 サバンちゃんが甘える。

 「もう、あんた、私の赤ちゃんなの?」
 「うん、でへへ」
 寝ぼけながらサバンちゃんがにやける。

 「まったくもう、しょうがない子ねえ」

 シアンちゃんはサバンちゃんにお服を着せてあげる。

 「えいほ、えいほ」

 サバンちゃんとシアンちゃんは二人乗り自転車をこぐ。
 ドカンちゃんもこぐ。

 チー子は自転車よりも素早く走った。

 しばらく走っていくと、小高い丘の頂上に到着した。

 丘の上で遠くを見ている古代の格好をしているおじさんの銅像と
 その下に跪いているおじさん二人の銅像があった。

 チー子の案内でドカンちゃん達はそこにたどり着く。

 「は?何?もしかして、この銅像を見せるために、こんなところに
 朝早くから来させたわけ?銅像以外何もないじゃない」

 サバンちゃんが半ギレでつぶやく。

 「あれをご覧!」

 今まさに日の出の東の空をチー子は指さす。

 「あ!?」

 ドカンちゃんは息を吞んだ。

 一面に広がる雲海。

 その向こうに顔を出す太陽。
 
 まさに、そこは、高天原だった。
 
 美しい。金色に輝く雲。光り輝く太陽。

 ああ、かつて日本人の先祖は雲の上から来たという。
 天上人とひとはいう。

 あれは、ウソじゃなかったんだとドカンちゃんは確信した。
 自然と、ドカンちゃんの目から涙がこぼれた。


 「うううう~綺麗~来てよがった~」
 シアンちゃんも泣いている。

 「きれいだねえ」
 サバンちゃんもニマニマした。

 「ぐ~」
 チカンちゃんは寝ていた。

 「チカンちゃん、チカンちゃん」
 ドカンちゃんはチカンちゃんをゆする。

 「う~、もういいよ、もうたべられない~」

 チカンちゃんは寝言を言う。
 『チカンちゃんたら」

 「う~なんだよ~」
 「あれみて」
 
 ドカンちゃんはチカンちゃんを抱き上げて、肩車する。

 「ぴょーっ!すごいよ!綺麗だよ!」
 チカンちゃんは目をまん丸にした。

 「すごい!すごいね、チカンちゃん、ここに来てよかったね」
 「そうだね、ドカンちゃん、ドカンちゃんに肩車されて見る、この雲海は
 最高だよ!」

 チカンちゃんは興奮して体をゆっさゆっさ揺さぶった。

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