ねこのフレンズ

楠乃小玉

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二十五話 ハイブリットティー

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 「よいしょ!よいしょ!」
 ドカンちゃんは自転車で坂を登った。
 今日はお花のお店を探すのではない、
 石ケ谷公園というお花がいっぱい咲いていると噂の公園を探すためだった。
 けっこう坂がきつい。
 「はあ、はあ、はあ」
 ドカンちゃんの体が限界に近づいていた。
 「無理しちゃだめだよ!ゆっくりして!」
 自転車の買い物かごの中のチカンちゃんが叫んだ。
 「頑張らなきゃ!」
 「板張らなくていいよ!」
 チカンちゃんが叫んだ。
 ドカンちゃんの目に涙がにじむ。
 「ほんとうにボクってダメですね」
 「ダメじゃないよ!すごいんだよ!
 心が折れて引きこもりになっちゃう子は、
 実は頑張り屋さんなんだよ、
 だから、責任感で無理をしすぎて
 もう動けなくなっちゃうんだ。
 だから、ニートでも引きこもりでも
 自分を責めちゃだめ!
 ドカンちゃんはお外に出ることができた
 勇者なんだからね!」
 「うん、ありがとうチカンちゃん」
 
 ドカンちゃんは涙を拭いた。
 「それじゃ、すこし休もうか」 
 「うん、ドカンちゃんは自転車をとめた」
 チカンちゃんは自転車の前カゴがら飛び降り、
 ドカンちゃんの足に体をすりつけてくる。
 「ドカンちゃんだ~い好き!」

 「ボクもチカンちゃんのこと大好きだよ」
 そう言ってドカンちゃんはニッコリと笑った。
 「あれ、おかしいな」
 ドカンちゃんは頭がフラフラする。
 「それはシャリバテだよ、座って!何か食べなきゃ!
 「そんな事いっても食べるものなんて……ふう」

 ドカンちゃんはその場に座り込んでしまった。
 「大変だー!ドカンちゃんが大変だー!誰か助けてー!」
 チカンちゃんが手をバタバタさせる。

 その時である。
 「あら、どうなさったの」
 初老の頭が真っ白な上品なおばあさんがドカンちゃんの上からのぞき込んできた。
 「あ、奥さん、ボクちょっとめまいがしちゃって」
 「ドカンちゃんはお腹がすいてうごけないんだよ、何か食べさせて!」
 チカンちゃんがピョンピョン跳ねながらいった。
 初老のおばあさんはチカンちゃんを見る。
 「あら、かわいらしいお友達ねえ」
 「ねえ、ねえ、たべるもの~」
 チカンちゃんがピョンピョン跳ねた。
 「はいはい、分かりましたよ、私のお家はこのすぐ近くだから
 そこで何か食べさせてあげるわね」
 おばあさんはニッコリ微笑んだ。
 「ごめんなさい、あのボク、ドカンって言います」
 「あら、ドカンちゃんね、私はクッキングママよ、長いからクックさんでいいわ」
 「はい、よろしくお願いします、クックさん」
 
 「はい、よろしく、ドカンちゃん」
 クックさんはチラッとチカンちゃんを見る。
 「こちらのお友達は?」
 「チカンちゃんだよ!」
 チカンちゃんはピョンピョン跳ねがなら言った。
 「あらそう、じゃあ、ドカンちゃん、チカンちゃん、いっしょに
 私のお家まで行きましょう」
 クックさんのお家に到着すると、真っ白な洋風の素敵なお家だった。
 庭には色々な色のバラが咲き乱れている。
 「うわ~キレイ、このバラ、二色じゃないですか、こんな色見たことないですよ」
 そのバラは紫色にシロがちりばめられた色彩のバラだった。
 「これはね、アブラカタブラっていうバラでね、本当は切り花用なんだけど
 うちのパパが惚れ込んで、農家さんに頼み込んで一株貰ってきたのよ
 そのかわり、このバラは特許がかかっているから、人に売ったり分けたり
 することは禁止されているのよ」
 「へーそうなんですか」
 カバンちゃんはお庭を見渡す。
 一面に咲き乱れる紫と白のツートンカラーのバラ。
 「でも、今ってバラの時期でしたっけ、こんな時期にも咲いているんですね」
 「あのね、このバラはね、ハイブリットティーといってね、四季咲きのバラなの。
  この種類のバラは大切に育てれば真冬にも花が咲いたりすることがあるから
  おもしろわよ、日当たりが十分にある場所で育てるのが条件ね」 
 「へー、そんな新開発の種類のバラがあるなんてしりませんでした」
 「バラを買うときHTというマークが入っているバラがそうだから、
 見てみるといいわ、それかお店の人に聞いてね」
 「はい、わかりました!」
 ドカンちゃんは一面に広がるバラの園を見渡す。
 「ここまで育てるの、大変だったでしょうね」
 「そうね、パパはこのバラを育てるのに休み時間のほとんどをかけていたわ」
 「それじゃ、クックさんと一緒に遊びに行く時間がないですね」
 「いいのよ、私はパパが楽しそうにしている顔を横から見ているのが
 一番幸せだったから」  
 「あの……パパさんは……?」
 「あの世にめされていったわ。いっぱいのバラの花に包まれて」
 「あ、すいません、ごめんなさい」
 「いいのよ、すごく楽しい思い出がよみがえってきて、幸せな気分になったわ」
  クックさんは柔和に笑った。
 クックさんはお家の中にドカンちゃんとチカンちゃんを招き入れ、
 台所でホットケーキを焼き始めた。
 「わーい!ホットケーキ!ホットケーキ!」
 チカンちゃんは両手にフォークとナイフを持ってリズムをとりながら
 机をトントン叩いた。 

 「こら、チカンちゃん、お行儀が悪いですよ」
 ドカンちゃんが叱った。 
 「はーい!」
 そう言いながらもチカンちゃんは待ちきれなくて、体をゆっさゆっさ揺すぶった。
 
 
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