ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三十七話 まったく白猫は気が強いのお

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 ドカンちゃんはどんどん奥地に進む。
 すこし坂道になっている道、中学校の横を通り抜けると、
 急に住宅地がひらけていた。
 その先に進んで高速道路の下を通過しなければならない。

 と、高速道路の向こうにいく道は階段になっていた。 
 「うわ~これはだるいな~」
 ドカンちゃんが困り顔をした。
 「大丈夫だよ、ドカンちゃんは勇者だから行けるよ!」
 チカンちゃんが言った。
 チカンちゃんは自転車の前カゴから飛び降りた。
 自分が乗っているとドカンちゃんが重いからだ。
 優しい。

 「えいほ、えいほ」
 ドカンちゃんは階段を自転車を持ち上げながらあがった。

 高速道路の向こうに行くと、風景が一変した。
 それまで一戸建ての住宅地が密集していたのに、こちらは
 集合住宅地の団地が建て並んでいた。
 
 そこからは、とにかく上り坂、上り坂。

 ドカンちゃんはフウフウ息を切らしながらのぼった。
 しばらく行くと、南に向かう道路があった。
 その道路は高速道路沿いの緩やかな下り坂だった。
 「いくぜ!いくぜー!」
 チカンちゃんが叫んだ。
 「いっくよー!」
 ドカンちゃんが叫ぶ、そして時は動き出す。
 自転車は軽やかに坂を下りだした。
 そのまますーっと自転車は前にすすむ。
 風をきって走る。
 それは一瞬の出来事だったかもしれなかったが、
 ドカンちゃんとチカンちゃんにとってはものすごい
 気持ちの良い時間だった。
 忘れない、絶対一生忘れない時間。

 自転車はするりと降りて第二神明道路の横を通り、川に行き当たる。
 川のところで第二神明道路の下をくぐり抜け、歩道橋が架かっている道路を
 わたって東に向かう。
 そこからは、ズンズン上り坂が続く。
 けっこうきつい。
 むっちゃきつい。
 ドカンちゃんはもう目がくらんだ。
 「ドカンちゃん、ピンチ、パンチ、ポンチだよ!栄養補給だ!」
 チカンちゃんが叫ぶ。
 「そうだね。でも周囲にコンビニもないし……」
 見回すと、一つだけ自動販売機があった。
 そこで、少しでも栄養になりそうなミルクコーヒーを買って飲んだ。
 チカンちゃんがゴクゴク飲んでいるのをチカンちゃんがボーッと見ている。
 「あ、ごめん、ごめん、チカンちゃんもね」
 「わーい!」
 チカンちゃんもミルクコーヒーをごくごく飲んだ。
 そしてまた坂を登っていく。
 坂を登っても登っても頂上が見えない。
 「はあ、はあ、はあ、いつまで続くんだ」
 ドカンちゃんがそう思ったとき、坂道がジグザグに交差しはじめた。
 もしや、これで終わりかも、と思った時、目の前に巨大な霊園が出現した。
 その霊園をずっと東に歩いていると、あった!
 フラワーセンター星陵台。
 すごくオシャレな建物なんだけど、どうも建物が多重構造になっていて、
 お花売り場に行くためには、エレベーターを降りて、下の階に
 いかなければならないようだ。
 そういうところも、何か機械帝国みたいでかっこいい。
 ドカンちゃんはチカンちゃんを肩車して、
 エレベーターで下に降りた。
 エレベーターを降りると、そこに広大な室内お花売り場が広がっていた。
 その向こうに野外お花売り場があった。
 そこに出てみると、
 お花売り場の中央にぽつんと真っ白なボブヘヤーの少女が立って居た。
 服はフリルの付いた白いドレス。肩から金色のタスキのようなものをかけており、
 首から光沢のある大粒の真珠のネックレスをかけている。
 頭から真っ白の猫耳が二つ、ぴょこんと立っていた。
 
 目の色は金と青のオッドアイ
 
 ドカンちゃんはチカンちゃんを肩からおろし。その女の子に近づいて行く。
 「あの……」
 ドカンちゃんが女の子に話しかける。
 「なによ、さっきからずっと見て、ケンカ売ってるの?」
 「いえ、そんな」
 
 ドカンちゃんは目を下にそらした。

 「まあいいわ、私はカオマニー。高貴な血統の存在よ」

 「荒野の血統!? 特権階級コンセント?!ハヤテのようにー、ドカンちゃんー!ドカンちゃんー!
 ここは地の果て流されてボク!」
 チカンちゃんは歌った。
 
 「黙れ、短足」
 「ぴょーっ!」
 カオマニーの突っ込みにチカンちゃんは目を丸くした。
 「黙れ、ペチャパイ」
 チカンちゃんが言い返した。
 
 カオマニーは猫耳を後ろに伏せ、鼻筋にシワをよせる。
 「まったく、これだから下々の者は」
 
 そこに作業着を着た体格のいいジイサンがやってきた。
 「おいやー、今日も元気か、タマ」
 そう言いながらジイサンはカオマニーの頭を無造作にクシャクシャに
 なでた。
 
 「ニャッ! やめなさい」
 カオマニーは手を振り払う。

 「なんじゃー、タマはずかしがりやさんじゃのお」
  今度はジイサンは肩に手を伸ばす。
 
 「ニャッ!やめてってば」
 手を振り払う。

 「そうかそうか、嬉しいか」
 ジイサンはカオマニーのお腹を触る。
 
 「フーッ!やめないと承知しないわよ」
 「照れ隠しすんなって」
 そう言ってジイサンは両手でカオマニーの胸にタッチした。

 「ブチ殺すわよ!」
 ガブッ
 
 カオマニーはジイサンの手に噛みついた。
 
 「痛てててて!まったく白猫は気が強いのお」
 そう言うとジイサンはドカンちゃんを見る。
 「なんじゃ、お前さんも猫を飼っとるのかい、
 猫は気まぐれじゃからのお、こんなにかわいがっておるのに
 生傷が絶えんのじゃ、こんな酷い事をされても
 可愛がってしまうのというのも猫好きのサガですのお
 ウシャシャシャシャ!」
 ジイサンは軽快に笑った。
 「調子に乗るんじゃないわよ、下僕!アンタみたいなクソジジイに
 不条理なことされて我慢している私ほど寛容な猫の地霊は他には居ないわよ!」
 カオマニーがぶち切れて怒鳴る。
 「ほら~、おじいさん、私も大好きよ~ニャオ~ンっていっとるだろ~」
 ジイサンはニタニタ笑った。

 「そんな事は言ってません」
 ドカンちゃんは即答した。
 「やばいよ、ドカンちゃん、相手になっちゃだめだよ!」
 チカンちゃんが必死に止める。
 「なんじゃと、お前みたいにタマに初めて会った人に何でタマの気持ちが分かるんじゃ!」
 ジイサンはカオを真っ赤にして怒っている。

 「だって、猫ちゃんがニャッって短く鳴くときは、拒否の意思表示だし、
 フ~ッって唸る時は怒っている時なんですよ」
 
 「え……」
 ジイサンは一瞬言葉に詰まる。
 
 「よく、猫ちゃんが噛むとか、ワガママだって言う人がいますけど、
 猫ちゃんが嫌がっているのに、無理にしつこくなでまわしたりして
 猫ちゃんが我慢しきれないで噛む場合だってあるんですよ!」

 「そ、そんな……」
 ジイサンはしょんぼりしてしまった。

 「や、やめてよ、おじいさんが可哀想でしょ」
 カオマニーが動揺しながら叫んだ。
 「え!」
 ドカンちゃんは唖然とする。
 「ごめんよ、タマ、お前の気持ちもかんがえないで!悪いおじいさんを許しておくれ」
 そう言ってジイサンはカオマニーを抱きしめた。
 「いいのよ、分かってくれたら、アナタは私の大切な人なんですもの」
 そう言ってカオマニーもジイサンを抱きしめた。
 「お腹触ってごめんな、これからは尻にするからな」
 「胸は触られたくないけど、お尻なら我慢するわ」

 「尻はええんかーい!」
 二人の会話にチカンちゃんが突っ込みを入れた!

 「なんか、ボク、余計な事しちゃったかな」
 ドカンちゃんはしょんぼりした。
 
 カオマニーはドカンちゃんを見る。
 「いいえ、あのまま続けられていたら、私、おじいさんのこと、
 嫌いになってしまっていたかもしれないわ。
 ありがとうね、ドカンちゃん」
 そう言って、カオマニーはニッコリと微笑んだ。

 「そうですか、お役に立てたんですね、それはよかったです」
 ドカンちゃんはカオをカーッと赤くして頭を掻いた。

 「私の花園を見て行ってね」
 カオマニーがそう言うので、
 ドカンちゃんは庭園内の草花を見て回った。
 ここはバラの花が充実していた。
 紫色のバラが美しかった。
 
 「うわ~フランスのバラってキレイなんですね」
 ドカンちゃんが感心した。
 
 「あら、これは日本の寺西菊雄さんが開発した日本のバラよ、
 フランスのバラは画家の名前がついた絞り柄の花が人気ね」
 
 ドカンちゃんの背後からカオマニーが教えてくれた。
 「そうなんですね」
 
 ドカンちゃんは他にも色々見て回ったが、
 一番目を引いたのは綠色の桜だった。
 「綠の桜って珍しいですね。しかも、花びらに赤い筋がついている
 とても珍しいです」

 「これは御衣黄桜ね。最初は綠で徐々に色がピンクがかっていくのよ」

 「うわーすごいですね、このお花を猫ちゃんの庭に植えたいです。
 猫にとって有害じゃないですよね、桜」

 「ええ、桜の木自体は有害ではないわ。でも桜はサクランボが猫にとって有害だから
 やめておいたほうがいいわね。そのほか、梅やスモモもだめよ」
 「そうなんですか、それは残念だなあ」 
 「じゃあ、他に何か猫が好む草はここには無いんですか?」
 
 「燕麦ならあるけど、キレイな花が咲くわけではないわ」

 「そうなんですね~。
 じゃあ、誰か猫によい草に詳しい地霊の方っていらっしゃらないですか」

 「そうねえ、昔朝霧の丘の七剣神社のお使いの猫霊に会った事があるけど、
 すごく詳しかったように思うわ」

 「そうなんですね、良い情報が得られました。ありがとうございます」
 「どういたしまして、高貴の者として当然のことをしたまでよ」
 カオマニーは微笑した。

 
 ドカンちゃんはチカンちゃんを引き連れ、色々とホームセンターの中を巡った。
 すごく広くて、すごく楽しくて、すごくわくわくした。
 とてもオシャレで楽しいところだった。

 「すごく楽しかったです。苦労して来たかいがありました」
 「当り前じゃない、私みたいな高貴な地霊がいる場所なのだから」
 カオマニーは得意げに言った。
 「それでは、失礼させていただきます」
 ドカンちゃんは深々と頭を下げた。 
 「ばいばい!」
 チカンちゃんも手を振った。
 「気が向いたらまたいらっしゃい」
 カオマニーはニッコリ笑って手を振った。

 

 
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