社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

佐藤大芽

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チュートリアル

第1‐2話

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 どうしよう、トイレの場所聞くのすっかり忘れてた……

 外はすでに暗く、もちろんギルド内もランプを持たないと全く見えないくらいに暗くなっていた。
 俺は迫り来る尿素を必死に耐えながら暗い廊下に出た。
 歩くたびに軋む木製の床。
 ただひたすらにドアを開けてトイレを探す。
 しばらくしてようやくトイレを見つけた。

 助かった……

 俺は取りあえず便座に座ると尿を足ししばらくの間、何も考えずただ座っていた。
 すると、暗闇の廊下から何かがトイレに向かってきているのか床が軋む音がする。

 ナニコレ……幽霊コワイ……アクリョウタイサン……

 軋む音は次第にトイレ前を通り過ぎ奥へと消えていった。

 行ったか……

 俺は恐怖に怯えながらもトイレを出た。

 ん? なんだ……この感触は……

 トイレに出た瞬間柔らかい何かに当たった。
 恐る恐る手に持っていたランプを顔の位置に持ってくる。
 目の前に居たのは色白い肌で白い服を着た女性だった。

「ぎゃああああでぇたああああああ!」

 俺は一目散に部屋へと逃げ帰る。

 はあ、はあ、今のって絶対あれだよな……そうに違いない。

 しかし、柔らかかったなあ……って何考えてるんだ俺、幽霊相手に欲情するってどんだけ欲求不満なんだよ。

 怖いし今日はもう寝よ……

 こうして、チュートリアル一日目が終わった。


 チュートリアル二日目の朝。

 日の昇りが浅いうちに俺は起きた。
 昨日の夜はあんなことがあったけど、不思議とすんなり眠ることができた。

 少しトイレ……

 寝ぼけながら部屋を出てトイレに行った。
 用事を済ませトイレから出ると何かを踏みつける。

 ん? 何だろうこれ……
 白色の毛皮を被った何かだ……

 俺は寝ぼけている眼をこすりその物体を見る。
 気になってその物体をつつくと突然動き出した。
 するとその物体は動き出した。

「うわっ! なんだよこれ……」

 モンスター?

 俺は無神経にそのモンスターらしき白い物体を持ち上げた。

 あれっ? これモンスターじゃないな……なんていうか毛皮じゃなくて毛布っぽいしそれに、体つきが獣というより人間っぽいんだけど……

 白色の毛布を思いっきり引きはがすと腰まで伸びきった銀色の髪に薄い水色の下着をまとった色白の少女が恐怖に怯えた顔でこちらの顔を見てきた。

「なっ⁉ ちょっ、お前なんで?」

 俺の一言で我に返ったのか自分の今の姿を思い出して顔を赤らめた。

「ひっ⁉」

 いきなり毛布から手が伸び俺の頬に強い衝撃が走った。
 一瞬の出来事で理解が追い付かなかったが一つ分かったことがある。それは、俺は生まれて初めて母親以外の女の人の下着姿を見たということだ。
 少女はすぐさま立ち上がり毛布で体を隠しながら廊下の奥へ走って行った。

 今の人って確か昨日の……だよな?

 俺は取りあえず着替えを済ませるため部屋に戻った。
着替えていると部屋がノックされた。

 誰だろ……さっきの子かな……

「はーい、ちょっと待っててください」

 着替えを済ませドアを開けた。

「あ、おはようございます、お早いですね。よく眠れましたか?」

 部屋を出るとすぐ横でギルド役員のお姉さんが笑顔で挨拶してくれた。

 あ~朝一番の笑顔素敵だな~将来はこんな人がお嫁に来てくれないかな……

 そんな呑気なことを考えていると、奥の部屋から女性の叫び声が聞こえてきた。

 な、なんだぁ~?

「な、何ですか⁉」 

 女性役員は驚き奥の部屋に走って向かっていった。取りあえず俺も追いかける。

「どうしましたか⁉」

 女性役員が思いっきりドアを開けると、白い布団を身にまとったまま床に尻もちをついて固まっているさっきの女性がそこにいた。

「あのっ、で、出たんです! 茶色でカサカサ動くあれが!」

 茶色でカサカサ動くってゴキブリだよな……

 俺はゴキブリへの耐性ができていたこともあり、取りあえずゴキブリを逃がしてやることにした。

「ほら、どこにいるんだ? 逃がしてやるから場所を教えてくれ⁉」

 少女に近づくと俺の存在に気づいていなかったのか驚き、いきなりビンタしてきた。
 パァァァン――

「いっ――て~⁉ なんで俺はダメなんだよ⁉」
「な、なんとなく……?」
 なんとなくって……まあ、別に気にしないけど……
「で? 俺がゴキブリを退治してもいいけどどうするよ?」

 少女に聞くと嫌そうな顔しながら半開きになっているクローゼットを指さした。

 クローゼットの中か……

 近くにあった布切れを手に持ってクローゼットを開くとそこにいたのはどう考えてもあり得ないサイズのゴキブリだった。

「ちょっ……こんなにもビックサイズって思わなかったんだけど⁉」

 俺が驚いていると女性役員がその異常なサイズのゴキブリについて説明してくれた。

「それはチキンGですね。つい最近この辺りで繁殖期を終えたばかりの昆虫型モンスターです!」

 チキンGって鳥なのか、ゴキブリなのかハッキリしないな!

「ちなみにチキンGは羽自体はありますが空を飛ぶことはできません。しかしその分、普通のGの約五倍以上の移動速度です。それに加え肉食ですので十分に気を付けてください」

 丁寧なご説明どうもありがとうございます。それで、この布切れで肉食モンスターにどう立ち向かえと?

「あの~何か武器のようなものは無いですかね……もしあるなら貸してはくれませんか?」

 俺がそう言うと女性役員が渡してくれた。

 縄……縄ですか? しかも意外と上等そうな麻縄……

「えっと……何の冗談ですか?」

 戸惑いながら聞くと女性役員は申し訳なさそうな顔をする。

 なんか俺すごく罪悪感残るんですけど……
 しょうがない……布切れと縄だけで頑張ってみるか……

「しゃあ! かかってこいや~!」

 たかがゴキブリだ。何とかなるだろ……

 今思えばこんな甘い考えをしていたのが間違えだったのかもしれない……


「痛い! 痛いって」

 俺は何とかチキンGを倒すことができた。まあ少し危なかったけど……

「それにしてもすごかったですねぇ~あの獰猛なチキンGをあっさり布切れと縄だけで仕留めるなんて」

「今の俺の姿を見てよくあっさりだなんてこと言えますね」

 今の俺の姿とは。
 体のあちこちを噛まれ血だらけになっている無残な姿だ。多少の傷は下着姿の彼女の魔法で治癒してもらったが、限度があり、ぎりぎり治せなかったところは包帯で見えないように隠している。

「そ、その……ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに、傷を負わせてしまって……」

 俺の治癒をしながら申し訳なさそうに礼を言って来た。

 少し怖かったけどこの人が悪いわけでもないからな……

「別にいいよ、気にしてないし。ほら、怪我したところも君のおかげでこの通りだし」

 少し痛みが走ったが今は我慢。

「それなら……良かった」

 俺の言葉を聞いて安心したのか少し笑顔になっていた。

「そうです! 何かお礼をさせてくれませんか?」

 彼女は突然思い出したようにお礼を申し出た。

 お礼って……もう十分もらってる気もするんだけどなあ……

 俺は未だに服を着ていない彼女の肌をチラチラ手で隠しながら見る。
 それを不思議に思ったのか彼女が顔を近づけてくる。

「どうしたんですか? 顔がすごく赤いのですが……」
 彼女のためにも一応言っておくか……
「そのですね……とりあえず服を着てもらっていいですか?」

 この言葉を聞いた瞬間彼女は自分の格好に気づきみるみる顔を赤くして思いっきり俺にビンタを放った。

 やっぱ、そうなりますよね~

「ハッ、ごめんなさい……つい手が出てしまいました」
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