社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

佐藤大芽

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終焉の予兆

第2-4話

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「……え? 何言ってるの? ユイト君も一緒に来るんだよ?」
「……え? えぇぇぇぇぇ⁈」

結局俺はメイアーの脅迫に屈し一緒にフィンデルの元へ向かうことになった。


なんで俺まで行かなきゃいけないんだよ……

 俺は不貞腐れながらメイアーに腕を引かれている。

 ほんとにこれ、俺が行く意味ないだろ。なんで、システィーナが待ってるのに……。

「なあ、どう考えても俺必要ないだろ……」

 俺がそう言うと掴まれていた腕により強い圧力がかかってきた。

「痛い痛い……行くからやめてくれ~! 腕が折れる! 折れるってぇぇぇぇぇ!」

 何が面白かったのか分からないけど、メイアーは笑っている。

 ほんと、何考えてんだろこの人……

 その後は戻ることを諦めメイアーの横を歩くことにした。
ぼーっとしながら歩いているとメイアーは俺の服の裾を思いっきり引っ張て来た。

「うわっ——ど、どうしたんだ? 急に止まって……」
「ここよ」

 メイアーは腰辺りまで伸びた銀髪を華麗にたなびかせるとビシッと店の看板を指さした。
 その看板に目を向けるとやっぱり異世界文字が大胆に書かれてある。

 やっぱ読めねー

「土竜の穴倉……ほんと昔っから店のネーミングセンス無いね」

 メイアーは嫌みを言いながらもどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「さあ、入りましょ!」

 メイアーはそう言うと一人で店に入って行った。
 俺もそのあとを追いかけた。

中に入ると店の中は真っ暗だった。

 ちょっとまって、なにこれ何も見えないんですけど……

 するとメイアーは突然指を鳴らしどこからともなくランタンを取り出した。

「ユイト君、これで見える?」

 俺のことを気遣ってくれたのか出したランタンを俺に手渡してきた。

 ――っていうか、いまどこから出したんだよ、このランタンは……

 俺が必死に考えている中メイアーは大声でフィンデルを呼んでいる。

「おーい! お父さん~ 居る~?」

 しかし誰も出てこない……

「なあ、ここで本当にあってるのか?」
「ここのはずなんだけど……とりあえず中に入っちゃおうか!」
「えっ⁉ ちょっと――勝手に入っちゃマズイって!」

 いくら呼んでも出てこないということでメイアーさんは勝手に奥の部屋へと入っちゃいました。
 待っておこうか迷ったけど一人で居るのもアレなので結局俺はメイアーについて行くことにした。

「お邪魔しま~す」

 俺が言葉を発しても返事が返ってくるはずもなくシーンと静まり返った。

「ホント誰も居ないな~」
「この部屋とか怪しくない?」

 メイアーは近くにあるドアを片っ端から開けては閉めそれを繰り返していた。

 その時だった。
メイアーが古ぼけたドアを開くとその中から犬のような大きなモンスター? が出てきた。
ちなみに暗いので色はよくわからん!

「きゃあああああああああ! 助けてえええええ!」
「メイアーさん⁉ どうしたんですか⁉」

 メイアーの突然の絶叫に俺はすぐに駆け寄った。

 駆け寄るとメイアーはうつ伏せの体勢で泣きじゃくっており、それを犬型モンスターが慰めているのかメイアーの腕をペロペロ舐めていた。

「だすげでよおおお~~ 怖わいよ~~」

 これって襲ってるわけじゃあないんだよ……な?
 なぜだろう、この光景見てると俺の元居た世界で飼っていたシェパードのジョンを思い出してきた……。

 ちなみになぜ飼い犬がジョンという名前なのかというと、ジョンはもともとジョン=ハスキーというイギリス人の人から譲り受け、顔立ちがそこはかとなく似ているからという適当な理由だ。

 ジョン(犬)……元気にしてるかな……

「早ぐううううう~~助げでよおおおお~~」

 おっと、これは失礼。思い出に呆けてすっかり忘れてしまってました……ははは。

「助けるから一旦落ち着いて……」
「——分かった……グスッ、グスッ……」

 俺の指示通りうつ伏せになったまま泣き止むとそのまま硬直してしまった。その間に俺は犬型モンスターをメイアーから離した。

「もう大丈夫だぞ……あれっ? 起きてくださーい」

 俺がそう言うとメイアーは無言で手を差し出してきた。

 自分で立つ気なしか……

「よいしょっと……って、顔ぐちゃぐちゃじゃん……」

 メイアーを起こすと顔をぐちゃぐちゃにしながら泣くのを我慢していた。

「だって……だって、怖かったんだもん……」

 俺は取りあえずハンカチを渡した。

「あ、ありがとう……」

 メイアーは受け取るとすぐに顔を拭き鼻をかんだ。

 え? まじか……別に問題ないけど……

「……? あ、ごめん……」

 俺の視線に気づいたのか謝罪してくるメイアーだったがそれでも鼻をかみ続ける。

「これ、どうすればいい……?」

 メイアーはハンカチを指でつまみながら見せてきた。

「うわっ——近づけるな……はあ、もうそれ貰っていいよ」
「……わかった」

 そう言うとメイアーはすぐさま水魔法のウォッシングと風魔法のドライングを使ってあっという間にハンカチを洗って見せた。

「おーすごい……」

 俺が感心していると少し不振に思ったのかメイアーはこんなことを聞いてきた。

「すごいって……これ家庭魔法だよ? ユイト君もこれくらい使えるでしょ?」

 さっきまで泣いていたとは思えないくらいに口調が戻っていた。

「ぶっちゃけ言うと俺、身体強化と治癒魔法しか使えないんだけど……」
「……」

 彼女の目が突然点になってしまった。

「だから、俺は属性魔法が使えません……」
「それ、本気で言ってるの? もし本当だったらユイト君ヤバいよ?」

 え? ヤバいって、え? なにが? え?

「な、何かマズイ事でもあるのか?」
「もちろん! 生活魔法が使えないという事はつまり……」
……つまり——ゴクッ……
「魔法学を一から勉強しないといけません!」

なんだよ……びっくりさせんなよ! 魔法が絶対に使えないとかそんな悲しいことになると思ったけど良かった~。

けど魔法使えるまでどの位時間かかるんだろ……

「なあ、その魔法を使えるまでどの位かかるんだ?」

「そうね……普通なら子供の頃から多少なりとも家の手伝いとかで覚えていくはずなんだけど……多分、最短で一年くらいで初級魔法までは使えるはず……だった気がする」

親身になって考えてくれるメイアーに感謝しながらも俺は別の手段がないか考えていた。

「勉強以外で魔法を使えるようになる手段とかなんか無いかな?」
「あるにはあるんだけど……あまりオススメはしないかなぁ……」

おススメしないのかよ……まあ、地道に頑張るか……

「じゃあ魔法学の勉強頑張るよ!」
「ホント? なら、わたしもそれなりに手伝ってあげるよ!」

 案外乗り気なメイアーに俺は魔法学を教えてもらうことにした。

「ワンッ――」

 俺たち二人はすっかりこいつの存在を忘れていた。
 俺は声のした方を向くと犬型モンスターが律儀に座っている。俺の横に居るメイアーは思い出すとすぐさま俺の後ろへ隠れた。

 とりあえずだが俺は身構える。
 もしかしたら犬の姿は仮の姿で中から大量の昆虫モンスターが出てきたりとかそんなことがあるかもしれない。

 すると、犬型モンスターは走り出した。

 ――かかってこい!

「ハウッハウッハウッ」
「……え?」

 俺たちに襲い掛かると思いきやまさかのスルー。スルーです。

 マジかよ……めっちゃ恥ずかしんだけど……

 犬型モンスターを目で追いかけるとさっき出てきた場所に戻っていった。
 俺はあの犬型モンスターが入って行った部屋を探ることにした。

 あれっ……?

「なあ、この部屋に入って行ったよな?」

 不思議なことにあの犬型モンスターの姿が見えない。

「あれ? 本当だ、いなくなってる」

 メイアーは俺の後ろから顔をひょっこり出して中をのぞく。

「まあ、いんじゃない? わたしとしては居ないほうがよっぽど良いんだけど」

 すごく嫌そうな顔でそんなことを言ってくる。

 とりあえず調べてみようかな……

しばらく手分けして入り口らしきところがないか調べることにした。

 だってあんな大きな犬型モンスターが一瞬で消えるはずがないんだもん。

「ねえ~ ユイト君、そっちは何かあった~?」
「いや~ こっちにあるのは一人用のソファが二つとその間に円形の木製テーブルが一つ、あとは壁に大量の本が並べてある本棚だけで、入り口みたいなものは何も!」

 しばらくの間、探しても探しても全く入り口らしいところは見つからなかった。

ほんと、どうやってあのモンスター消えたんだろ……

 俺とメイアーは取りあえずそれぞれソファに座り休憩することにした。

「ランタンはここに置いておくよ~」

 俺はそう言うとテーブルの上にランタンを置いた。
 すると突然テーブルの上に俺とメイアーの分のティーカップが置いてあった。

「あれっ、これどうしたんだ?」
「ああ、これはわたしが持ってきたものだよ~」

 そう言いながらまたもや何もないところからティーポットを出してみせた。

 その光景をじっと見つめていると視線が気になったのか「なに?」と言いたげな顔を見せてくる。

「持ってきたって言っても、ここに来るまで何も持ってなかったのに一体どこから出してるんだよ……」
「収納魔法も知らないの……って無理ないか。まあ、いいや。教えてあげる。これは収納魔法と言ってなんでも物を収納できる、いわゆる異空間収納魔法なの」

 異空間収納魔法……

「この魔法は家庭魔法から神聖魔法まですべての魔法階級で使える便利な魔法だよ!」

 すると、紙切れのようなものを取り出して見せた。

「これは?」
「よくぞ聞いてくれました!」

 何やら誇らしげな様子で胸を張りだしメイアー。

「これはわたしが落書きで書いたただの魔法陣だよ~」

 なんだよ……ただの魔法陣かよ……ん? 魔法陣?

 俺は裏を見ると凄く細やかに書かれた魔法陣が描かれてあった。

「マジでこれ落書きなの? めっちゃすごいんだけど……」

 もしかしてこの人すごい人?

「なんか照れるな~ 気分も良くなったしこの魔法陣の紙切れを君にあげよう!」

 なんか知らないけど貰っちゃったよ。魔法陣貰っちゃったよ。どうしようこれ。

「これどうやって使うんだ?」
「ん? どうって、どうもこうもないよ」

 ……は?

「それってどういう……」
「だって……これ使えないもん」
「……」
「……」

 マジかよ……ただのゴミじゃねえか……

 メイアーは俺の顔色を窺って笑いだす。

「プハハハハハ」
「何がおかしいんだよ……」

 俺は拗ね気味に返すとメイアーは「ごめん」と言いながら説明をし始めた。

「冗談だよ、冗談! なんか君を見ているとつい、からかいたくなっちゃってね……魔法陣の使い方を説明するよ」

 もうほんとこの人なんなんだろう……

「普通、魔法陣って言うのは魔法詠唱を唱えた際に自然と浮かび上がってくるんだけど、それは使い慣れているからであって初めは魔法陣を手で書いてそれを足の裏や手の甲に張り付けて出したいものをイメージする。こういった用途だ」
「つまり、初めは魔法陣を書いてから練習をするっていう事?」
「そゆこと」

 ひとくくりに魔法と言ってもたくさんの属性や種類の魔法がある。その数は今はまだ定かではないが千を超えていると、ギルドのお姉さんが言ってた気がする。

「もちろん、魔法一つ一つで魔法陣も違うからね」

 だから未だに初級魔法も取得していない俺はヤバいんだ……今から全部覚えないといけないとか無理ゲーだろ。

 けど、魔法が使える可能性があるなら一つでもいいから攻撃魔法を使ってみたい。というわけでまずはこのメイアーから貰った魔法を覚えようっと……

「ちなみにこの魔法陣はどんな魔法がつかえるんだ?」
「それはねー確か、無属性魔法の空中浮遊だったような気が……する?」

 空中浮遊か……攻撃系統の魔法じゃないのが残念だけどこれはこれでなんか楽しそう。

「早速教えてくれ!」

 俺はメイアーに頼むと快く引き受けてくれた。

「ちょっと待っててね~ 確かこの辺りに魔法の資料があった気が……あ、あった」

 メイアーが本棚に置いてある本を一冊抜き取ると変な音がした。

 ――カチッ

「なあ、今変な音しなかったか?」
「ほんと、今カチッて鳴ったよね……」

 その時だった。

 キイイイイ――

 本を抜き取った本棚が回転し隠し扉が現れた。

 これって……

「ユイト君……これって、隠し扉っていうやつ?」

 メイアーは少し興奮気味に聞いてきた。

「まあ、うん」
「中に何があるのかな」

 メイアーは中が気になるのかさっきからソワソワしている。

「開けるか……」
「開けましょ、開けましょ」

 メイアーは乗り気で扉を開いた。

 ……え?

「ユイト君……これって……」
「うん」

 扉の先にあったのは暗くひんやりとした空気が流れている岩づくりの地下通路だった。
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