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終焉の予兆
第2-7話
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「ユイトさん、おはようございます。朝食の準備が出来たそうなのでそろそろ起きて……ください……⁉」
システィーナは朝っぱらから明るい声で俺の部屋まで俺を起こしに来てくれた。
けれど、そこで問題が一つ生じた。
「ユユ、ユイトさん⁉ そ、その……失礼しましたぁぁぁ~~~」
システィーナはこれまでにないくらいに顔を赤らめ思いがけない速度で部屋から出て行った。
なんでシスティーナがあれ程までに動揺したのか今の俺には理解ができなかった。
「ふわあぁぁぁ~~そろそろ起きようか……ん?」
俺はある違和感に気が付いた。
一応、昨日眠る前の確認をする。
眠るときは服着てたし、俺一人だったよな? だとすると……
「ふわあああ~~よく寝たぁぁぁ、うん?」
俺の隣で横になっていた彼女が裸体を晒しながら身を起こした。
「ちち、ちょっと⁉ なんで、ここにいるんだよ⁉」
「あれっ――おはよう……」
メイアーは眠そうに目を擦りながらそんなことを言って来た。
「ああ、おはよう。って、ちげーよ! なんだよこの状況は!」
俺は途中でメイアーの方を見れなくなり顔を背けながら少し顔を赤くし彼女に説明を求めると、彼女は俺をからかいたいのか弾んだ口調で、
「この状況って……まさか、わたしにあんな事やこんな事をしたのに何も覚えてないなんて、悲しいわ!」
あんな事やこんな事……いや、そんなはずは……
けど、今の俺とメイアーの姿は誰が見ても共に一夜を過ごした男女にしか見えないはずだ。
「そ、そんなはずは……」
ハッ――そういえば……
俺は昨日の夜、宿に戻ると俺は宿の一階にある酒場で一人酒盛りをしていた。俺はもともと酒には強い方だったがかなり酔っていた。そんなとき、突然隣に女の人が座ってきた気がする……それってもしかして……
俺は思い出すとメイアーの顔を窺った。すると、彼女は察したようにニシシと歯を見せて笑うと、
「ご名答! 早く冒険に出たくて眠れなかったから君の泊まっている宿に様子を見に行くと、ユイト君が一人でお酒を飲んでいるのが見えてね。話しかけようと思って隣に座ったら急に寝ちゃうんだもん。ここまで運ぶの大変だったんだよ?」
確かに飲んだ後そのまま眠った気が……
「わざわざ部屋まで運んでくれたのは感謝する。けど、なんでそのことと今の状況が関係してるんだ? 全く分からないんだけど……」
すると、突然メイアーはもじもじしながら「そんなこと聞きます~?」と甘えた声で言って来た。一瞬聞こうか迷ったが覚えていない以上聞かないと、なぜこんなことになっているのかが全く分からない。
「実はわたしがユイト君を部屋に運び終わってしばらくの間、君の寝顔を観察していると君が寒い寒いって言うから私が身をもって温めてあげようと……」
「それならなぜ俺の服が脱がされているのか説明してもらおうか?」
そう言うとメイアーは体をビクンと弾ませるとガタガタ震えだした。
「え……えと、そのですね……い、言うじゃないですか、裸で抱き合えば温かくなるって……」
メイアーは声を震わせながらそんな言い訳を始めた。
「一応聞く聞くけど、何もしてないんだな?」
「お肌がスベスベでとても気持ち良かったです……」
「何もしてないんだな?」
強い口調で問いだしてみると正直に答えてくれた。
「はい、流石の私でも無防備な状態の相手に手を出すのは気が引けて……惜しいことをしました……」
「起きていてもダメだぞ⁉」
そう言うとメイアーはバツが悪そうに口をぷくーっとさせた。
何がともあれ良かった……未だ童貞だけど、初めてが知らぬ間に終わっていたらいくら何でも凹むからな。
「そういえば……」
メイアーは何かを思い出したのか手をポンと叩くと、
「ねえねえユイト君。さっきの子って君の仲間なんでしょ? 大丈夫?」
……何のことだろう?
そして少し間が空き重大なことを思い出した。
俺って完全に誤解されたままだ……どうにかしなきゃ!
「システィーナ!」
俺は叫びながら部屋を出ようとするとメイアーに止められてしまった。
「ユイト君! 服! 服着るの忘れてるよ!」
あっぶね~助かった~危うく誤解どころか変な汚名が付くところだった。メイアーには感謝……まあ、うん。感謝しておこう……
そして、俺はすぐに着替えることにした。が、その前に。
「なあ、メイアー。ちょっと向こう向いててもらえるか?」
「え? どうして?」
メイアーは不思議そうにきょとんとした顔で首を傾げている。
「ど、どうしてって――そりゃ、なんだ……恥ずかしいっていうかなんて言うか……」
「わたしとユイト君は夜を共にした中じゃあないか! 今更何を恥ずかしがっているのかな?」
堂々とした面構えで胸を張るメイアーだったが胸を張った瞬間、メイアーの二つの大きくやわらかなモノが揺れた。
それには俺も思わず目を思いっきり逸らしてしまった。
「だ、だからな? メイアーが大丈夫でも俺がな? 無理なんだよ……だから、早く向こうを向いて服を着てくれ。な?」
耐えろ……耐えるんだ俺……
俺は鼻血こそは出なかったが、体温が上がっているのが自分でもよくわかる。
「分かった……」
メイアーは仕方なそうに反対側を向いてくれた。
そして、俺はすぐに着替えると俺は部屋を飛び出した。
「どこにいるんだ……」
俺は取りあえず宿の一階にある酒場に足を運んだ。
ここの酒場は料理がおいしいと評判らしく、宿に泊まっている奴、そうでない奴からも人気で毎日賑わっているようだ。
俺がシスティーナを探していると酒場のウエイターの女性従業員が俺を見つけると、システィーナの場所を教えてくれた。
「あ、どうもありがとうございます」
「いえいえ、どうも。それにしても……」
彼女は微笑ましそうに彼女を見ると、
「今朝は何かあったんですか?」
——ブッ
なんでこの人はそれを知ってるんだああああ!
「ど、どうしてですか?」
「それがですね……彼女、突然顔を赤くして走って来たかと思うと、今日は日替わりランチを三食もお替りしているんですよ。彼女はそこまで食べないような子だったのに……何かあったんじゃないかって、宿のみんな噂してますよ?」
マジか……バレるのも時間の問題かもしれない! ってか、システィーナ日替りランチ三食って食い過ぎたろ!
俺はシスティーナの座っているテーブル席に向かった。
「なあ、システィーナ……?」
俺はシスティーナの誤解を解くために話しかけると、システィーナは驚いたのか、口に入れていたスパゲッティでむせてしまった。
俺はすかさず、水を渡すとシスティーナはそれを受け取りゴクゴクと飲む。
「あ、ありがとうございます……」
システィーナは水を飲み終えると少し赤い顔でお礼を言った。
「そ、その……私は何も見てないので、安心してくださいね……?」
やっぱり、誤解をしていたな……
システィーナが徐々に赤くなっていることが目に見えてわかった。
「あのな……今朝のは誤解なんだ。あれはただ、メイアーがだな……」
あ、そういえば、システィーナはまだアイツの事知らないんだったっけ……
「ど~っだった~? ユイト君」
メイアーが着替えを済ませて俺とシスティーナのもとにやって来た。
「あ、今朝の……」
システィーナはそんなことを呟くとメイアーの顔を見るなり、顔をメイアーから背けた。
「この様子だと……まだみたいだね……」
メイアーはそう言うとシスティーナの座っている席と対称の席に座り、頬に手を当てシスティーナに向かって自己紹介を始めた。
「私の名前はメイアーよ。今朝はごめんなさい。決して悪気があったわけじゃないの、ただ彼のお世話をしていただけで、私と彼は何にもなかったそうよね?」
メイアーは急に話を投げてきやがった。
「お、おう……何にもなかったぞ……」
俺がそう言うと何やらぶつぶつ言いだした。
「ユイトさんのお世話……」
少しの間システィーナが自分の世界に戻ってくるのを待つと彼女はようやく戻って来たのか、背けていた顔を上げると、
「あの……質問なのですが、男女が裸体を晒すお世話とは一体……」
と、とんでも発言をしだした。
おいおい、嘘だろ……これって誤解を解くどころか言い訳すらできない質問じゃねえか! どうするんだ、メイアー……
俺は真剣な眼差しでメイアーの方を見ると案の定、彼女は答えを必死に考えていた。
すると、何かいい言い訳を思いついたのかメイアーの表情が少し明るくなった気がした。
「実は……昨日の夜。私が一人、酒場でお酒を飲んでいると彼が突然話しかけてきたんですよ。すると突然、彼が『へへへ、ねーちゃん。今日は寝かせねーぜ!』なんてことを言い出して、私は身の危険を感じてすぐに酒場から飛び出したんです。が、しかし。こんな彼でも一応は男。私はすぐに力づくで取り押さえられ、この縄で縛られ部屋まで無理やり連れて行かされたのです」
メイアーは何故かしんみりした声でなかった出来事をでっちあげ、俺を犯罪者に仕立て上げたいらしい。その証拠にその俺がメイアーを縛ったという縄をこっそり空間収納魔法で取り出していた。
「勝手な話をでっちあげるな! 俺がいつお前を襲ったって?」
俺は座っているメイアーの右耳を強く上に引っ張ると痛そうに「痛い痛い、分かったから! ちゃんとホントの事話すから! 耳が千切れちゃうからああああ!」と喚きながら謝った。
システィーナの表情を確認すると少し引いているのか顔が引きつっていた。
なんだろ……俺、何にも悪くないのにどんどん嫌われている気がする。
そして気を取り直してもう一度。
「ホントは酒場で飲みすぎた彼を寝室まで運ぶと案の定、逆流したみたいで私にかかるほど勢いよく吐いちゃってね。だから、嘔吐物が付いた服のままで眠るのは気持ちが悪いし、彼の服を脱がせた後、私も服を脱いで彼が起きる前まで一緒に寝ようかなと思って眠っていたらあなたが彼を起こしに来た。そういう事なので、私と彼は服を脱がざる負えなかったのよ。わかった?」
おお、即興にしてはかなりのクオリティーの作り話だな、これなら誤解も解けそうだ。
「そ、そうだったんですか……勝手に勘違いしていたみたいです。すみません、本来パーティーメンバーである私がしなければならなかったはずなのに、ユイトさんを気遣ってくださりありがとうございました」
システィーナはメイアーの作り話により無事、誤解が解けたようだ。良かった良かった。
俺が安心しているとメイアーが一言。
「ああ、そのことなんだけどさ……」
俺とシスティーナは目を点にしながらその言葉を聞いた。
「私、今日からこのパーティーでお世話になることになりました。なので、これからもなにとぞよろしく! 長い旅になると思うけど仲良くして行こうね!」
メイアーは立ち上がると歯を見せながらニシシと笑った。
――そこで報告するのかよおおおお!
「こ、こちらこそ……よろしくお願いします……」
システィーナも驚いたのか少し引きつった声で挨拶する。
「そう言えば、あなたのお名前教えて貰ってなかったね」
「あ、そう言えばそうでした!」
システィーナはメイアーの言葉で自分が自己紹介をしていなかった事を思い出したようだ。
システィナーは席を立つと貴族のご令嬢のような気品溢れる丁寧な自己紹介を始める。
まぁ、実際貴族のご令嬢って言っても会った事も無いから分からないけどね……
「私の名前はシスティーナ、フィルメル=システィーナです。ユイトさんにはシスティーナと呼ばれているので是非システィーナと呼んで下さい」
「分かったわ、システィーナ。これからよろしくね!」
「はい!」
システィーナは笑顔で頷くと何か思い出したのかハッとなり俺とシスティーナに問うて来た。
「そうですよ! ユイトさん? メイアーさん? さっき言ってた『長い旅』って何のことですか! 私何も知らないのですが……」
どうせ話しておかなきゃいけないことだし今説明しておくか……
俺は土竜の穴倉でフィンデルが言っていたことをそのままシスティーナに伝えるとシスティーナは少し寂しそうな声で、
「そういう事はしっかりと話して下さらないと私だけ知らないなんて悲しいです……」
と呟いた。
「ごめん! 話すタイミングを伺っていたけどなかなか掴めなくて……けど、システィーナ、俺はお前とメイアーと一緒にこの世界で旅がしたい。だから一緒に来てくれるか?」
俺がそう言うとシスティーナは何故か少し顔を赤くしながら「当たり前じゃないですか……パーティーメンバーなんですから……」と言いながら俺の手を握って来た。
俺が微笑むとシスティーナも微笑む。
「そ、そうと決まれば早く行きますよ……」
システィーナは小走りで俺の手を笑顔で引きながら部屋へと向かった。
そして酒場に残されたメイアーは俺たちがいなくなった後も微笑みながら立ち尽くしていた。
「この旅、長くなりそうね……」
メイアーはそう言うと、俺たちを追いかけるように走り出す。
「私を置いて行くなぁー!」
メイアーは楽しげに笑いながら俺たちを追いかけた。
システィーナは朝っぱらから明るい声で俺の部屋まで俺を起こしに来てくれた。
けれど、そこで問題が一つ生じた。
「ユユ、ユイトさん⁉ そ、その……失礼しましたぁぁぁ~~~」
システィーナはこれまでにないくらいに顔を赤らめ思いがけない速度で部屋から出て行った。
なんでシスティーナがあれ程までに動揺したのか今の俺には理解ができなかった。
「ふわあぁぁぁ~~そろそろ起きようか……ん?」
俺はある違和感に気が付いた。
一応、昨日眠る前の確認をする。
眠るときは服着てたし、俺一人だったよな? だとすると……
「ふわあああ~~よく寝たぁぁぁ、うん?」
俺の隣で横になっていた彼女が裸体を晒しながら身を起こした。
「ちち、ちょっと⁉ なんで、ここにいるんだよ⁉」
「あれっ――おはよう……」
メイアーは眠そうに目を擦りながらそんなことを言って来た。
「ああ、おはよう。って、ちげーよ! なんだよこの状況は!」
俺は途中でメイアーの方を見れなくなり顔を背けながら少し顔を赤くし彼女に説明を求めると、彼女は俺をからかいたいのか弾んだ口調で、
「この状況って……まさか、わたしにあんな事やこんな事をしたのに何も覚えてないなんて、悲しいわ!」
あんな事やこんな事……いや、そんなはずは……
けど、今の俺とメイアーの姿は誰が見ても共に一夜を過ごした男女にしか見えないはずだ。
「そ、そんなはずは……」
ハッ――そういえば……
俺は昨日の夜、宿に戻ると俺は宿の一階にある酒場で一人酒盛りをしていた。俺はもともと酒には強い方だったがかなり酔っていた。そんなとき、突然隣に女の人が座ってきた気がする……それってもしかして……
俺は思い出すとメイアーの顔を窺った。すると、彼女は察したようにニシシと歯を見せて笑うと、
「ご名答! 早く冒険に出たくて眠れなかったから君の泊まっている宿に様子を見に行くと、ユイト君が一人でお酒を飲んでいるのが見えてね。話しかけようと思って隣に座ったら急に寝ちゃうんだもん。ここまで運ぶの大変だったんだよ?」
確かに飲んだ後そのまま眠った気が……
「わざわざ部屋まで運んでくれたのは感謝する。けど、なんでそのことと今の状況が関係してるんだ? 全く分からないんだけど……」
すると、突然メイアーはもじもじしながら「そんなこと聞きます~?」と甘えた声で言って来た。一瞬聞こうか迷ったが覚えていない以上聞かないと、なぜこんなことになっているのかが全く分からない。
「実はわたしがユイト君を部屋に運び終わってしばらくの間、君の寝顔を観察していると君が寒い寒いって言うから私が身をもって温めてあげようと……」
「それならなぜ俺の服が脱がされているのか説明してもらおうか?」
そう言うとメイアーは体をビクンと弾ませるとガタガタ震えだした。
「え……えと、そのですね……い、言うじゃないですか、裸で抱き合えば温かくなるって……」
メイアーは声を震わせながらそんな言い訳を始めた。
「一応聞く聞くけど、何もしてないんだな?」
「お肌がスベスベでとても気持ち良かったです……」
「何もしてないんだな?」
強い口調で問いだしてみると正直に答えてくれた。
「はい、流石の私でも無防備な状態の相手に手を出すのは気が引けて……惜しいことをしました……」
「起きていてもダメだぞ⁉」
そう言うとメイアーはバツが悪そうに口をぷくーっとさせた。
何がともあれ良かった……未だ童貞だけど、初めてが知らぬ間に終わっていたらいくら何でも凹むからな。
「そういえば……」
メイアーは何かを思い出したのか手をポンと叩くと、
「ねえねえユイト君。さっきの子って君の仲間なんでしょ? 大丈夫?」
……何のことだろう?
そして少し間が空き重大なことを思い出した。
俺って完全に誤解されたままだ……どうにかしなきゃ!
「システィーナ!」
俺は叫びながら部屋を出ようとするとメイアーに止められてしまった。
「ユイト君! 服! 服着るの忘れてるよ!」
あっぶね~助かった~危うく誤解どころか変な汚名が付くところだった。メイアーには感謝……まあ、うん。感謝しておこう……
そして、俺はすぐに着替えることにした。が、その前に。
「なあ、メイアー。ちょっと向こう向いててもらえるか?」
「え? どうして?」
メイアーは不思議そうにきょとんとした顔で首を傾げている。
「ど、どうしてって――そりゃ、なんだ……恥ずかしいっていうかなんて言うか……」
「わたしとユイト君は夜を共にした中じゃあないか! 今更何を恥ずかしがっているのかな?」
堂々とした面構えで胸を張るメイアーだったが胸を張った瞬間、メイアーの二つの大きくやわらかなモノが揺れた。
それには俺も思わず目を思いっきり逸らしてしまった。
「だ、だからな? メイアーが大丈夫でも俺がな? 無理なんだよ……だから、早く向こうを向いて服を着てくれ。な?」
耐えろ……耐えるんだ俺……
俺は鼻血こそは出なかったが、体温が上がっているのが自分でもよくわかる。
「分かった……」
メイアーは仕方なそうに反対側を向いてくれた。
そして、俺はすぐに着替えると俺は部屋を飛び出した。
「どこにいるんだ……」
俺は取りあえず宿の一階にある酒場に足を運んだ。
ここの酒場は料理がおいしいと評判らしく、宿に泊まっている奴、そうでない奴からも人気で毎日賑わっているようだ。
俺がシスティーナを探していると酒場のウエイターの女性従業員が俺を見つけると、システィーナの場所を教えてくれた。
「あ、どうもありがとうございます」
「いえいえ、どうも。それにしても……」
彼女は微笑ましそうに彼女を見ると、
「今朝は何かあったんですか?」
——ブッ
なんでこの人はそれを知ってるんだああああ!
「ど、どうしてですか?」
「それがですね……彼女、突然顔を赤くして走って来たかと思うと、今日は日替わりランチを三食もお替りしているんですよ。彼女はそこまで食べないような子だったのに……何かあったんじゃないかって、宿のみんな噂してますよ?」
マジか……バレるのも時間の問題かもしれない! ってか、システィーナ日替りランチ三食って食い過ぎたろ!
俺はシスティーナの座っているテーブル席に向かった。
「なあ、システィーナ……?」
俺はシスティーナの誤解を解くために話しかけると、システィーナは驚いたのか、口に入れていたスパゲッティでむせてしまった。
俺はすかさず、水を渡すとシスティーナはそれを受け取りゴクゴクと飲む。
「あ、ありがとうございます……」
システィーナは水を飲み終えると少し赤い顔でお礼を言った。
「そ、その……私は何も見てないので、安心してくださいね……?」
やっぱり、誤解をしていたな……
システィーナが徐々に赤くなっていることが目に見えてわかった。
「あのな……今朝のは誤解なんだ。あれはただ、メイアーがだな……」
あ、そういえば、システィーナはまだアイツの事知らないんだったっけ……
「ど~っだった~? ユイト君」
メイアーが着替えを済ませて俺とシスティーナのもとにやって来た。
「あ、今朝の……」
システィーナはそんなことを呟くとメイアーの顔を見るなり、顔をメイアーから背けた。
「この様子だと……まだみたいだね……」
メイアーはそう言うとシスティーナの座っている席と対称の席に座り、頬に手を当てシスティーナに向かって自己紹介を始めた。
「私の名前はメイアーよ。今朝はごめんなさい。決して悪気があったわけじゃないの、ただ彼のお世話をしていただけで、私と彼は何にもなかったそうよね?」
メイアーは急に話を投げてきやがった。
「お、おう……何にもなかったぞ……」
俺がそう言うと何やらぶつぶつ言いだした。
「ユイトさんのお世話……」
少しの間システィーナが自分の世界に戻ってくるのを待つと彼女はようやく戻って来たのか、背けていた顔を上げると、
「あの……質問なのですが、男女が裸体を晒すお世話とは一体……」
と、とんでも発言をしだした。
おいおい、嘘だろ……これって誤解を解くどころか言い訳すらできない質問じゃねえか! どうするんだ、メイアー……
俺は真剣な眼差しでメイアーの方を見ると案の定、彼女は答えを必死に考えていた。
すると、何かいい言い訳を思いついたのかメイアーの表情が少し明るくなった気がした。
「実は……昨日の夜。私が一人、酒場でお酒を飲んでいると彼が突然話しかけてきたんですよ。すると突然、彼が『へへへ、ねーちゃん。今日は寝かせねーぜ!』なんてことを言い出して、私は身の危険を感じてすぐに酒場から飛び出したんです。が、しかし。こんな彼でも一応は男。私はすぐに力づくで取り押さえられ、この縄で縛られ部屋まで無理やり連れて行かされたのです」
メイアーは何故かしんみりした声でなかった出来事をでっちあげ、俺を犯罪者に仕立て上げたいらしい。その証拠にその俺がメイアーを縛ったという縄をこっそり空間収納魔法で取り出していた。
「勝手な話をでっちあげるな! 俺がいつお前を襲ったって?」
俺は座っているメイアーの右耳を強く上に引っ張ると痛そうに「痛い痛い、分かったから! ちゃんとホントの事話すから! 耳が千切れちゃうからああああ!」と喚きながら謝った。
システィーナの表情を確認すると少し引いているのか顔が引きつっていた。
なんだろ……俺、何にも悪くないのにどんどん嫌われている気がする。
そして気を取り直してもう一度。
「ホントは酒場で飲みすぎた彼を寝室まで運ぶと案の定、逆流したみたいで私にかかるほど勢いよく吐いちゃってね。だから、嘔吐物が付いた服のままで眠るのは気持ちが悪いし、彼の服を脱がせた後、私も服を脱いで彼が起きる前まで一緒に寝ようかなと思って眠っていたらあなたが彼を起こしに来た。そういう事なので、私と彼は服を脱がざる負えなかったのよ。わかった?」
おお、即興にしてはかなりのクオリティーの作り話だな、これなら誤解も解けそうだ。
「そ、そうだったんですか……勝手に勘違いしていたみたいです。すみません、本来パーティーメンバーである私がしなければならなかったはずなのに、ユイトさんを気遣ってくださりありがとうございました」
システィーナはメイアーの作り話により無事、誤解が解けたようだ。良かった良かった。
俺が安心しているとメイアーが一言。
「ああ、そのことなんだけどさ……」
俺とシスティーナは目を点にしながらその言葉を聞いた。
「私、今日からこのパーティーでお世話になることになりました。なので、これからもなにとぞよろしく! 長い旅になると思うけど仲良くして行こうね!」
メイアーは立ち上がると歯を見せながらニシシと笑った。
――そこで報告するのかよおおおお!
「こ、こちらこそ……よろしくお願いします……」
システィーナも驚いたのか少し引きつった声で挨拶する。
「そう言えば、あなたのお名前教えて貰ってなかったね」
「あ、そう言えばそうでした!」
システィーナはメイアーの言葉で自分が自己紹介をしていなかった事を思い出したようだ。
システィナーは席を立つと貴族のご令嬢のような気品溢れる丁寧な自己紹介を始める。
まぁ、実際貴族のご令嬢って言っても会った事も無いから分からないけどね……
「私の名前はシスティーナ、フィルメル=システィーナです。ユイトさんにはシスティーナと呼ばれているので是非システィーナと呼んで下さい」
「分かったわ、システィーナ。これからよろしくね!」
「はい!」
システィーナは笑顔で頷くと何か思い出したのかハッとなり俺とシスティーナに問うて来た。
「そうですよ! ユイトさん? メイアーさん? さっき言ってた『長い旅』って何のことですか! 私何も知らないのですが……」
どうせ話しておかなきゃいけないことだし今説明しておくか……
俺は土竜の穴倉でフィンデルが言っていたことをそのままシスティーナに伝えるとシスティーナは少し寂しそうな声で、
「そういう事はしっかりと話して下さらないと私だけ知らないなんて悲しいです……」
と呟いた。
「ごめん! 話すタイミングを伺っていたけどなかなか掴めなくて……けど、システィーナ、俺はお前とメイアーと一緒にこの世界で旅がしたい。だから一緒に来てくれるか?」
俺がそう言うとシスティーナは何故か少し顔を赤くしながら「当たり前じゃないですか……パーティーメンバーなんですから……」と言いながら俺の手を握って来た。
俺が微笑むとシスティーナも微笑む。
「そ、そうと決まれば早く行きますよ……」
システィーナは小走りで俺の手を笑顔で引きながら部屋へと向かった。
そして酒場に残されたメイアーは俺たちがいなくなった後も微笑みながら立ち尽くしていた。
「この旅、長くなりそうね……」
メイアーはそう言うと、俺たちを追いかけるように走り出す。
「私を置いて行くなぁー!」
メイアーは楽しげに笑いながら俺たちを追いかけた。
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