社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

佐藤大芽

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終焉の予兆

第3-1話 王都からの旅立ち(前編)

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ガタゴト、ガタゴト……

 二足歩行の蒼い鱗をまとった小型の竜ドラゴンがとてつもない速さで竜車を引くたびに車輪と凸凹した道の石ころが擦れあい今にも俺たちは振り落とされそうになっていた。

「ちょちょ、ちょっと⁉ ストップ! ストォォォップ! 頼むから止まってくれえええええ」

 俺は御者をやっていてダイレクトに風やら振動を受けていて正直もうダメだ。

「ユ、ユイトさん……大丈夫ですか……」

 システィーナは大きな白い尖がり帽子を片手で押さえながら振り落とされないようにメイアーが竜車に張ってくれた縄をしっかりつかんでいた。

 一方、メイアーはというと……

「メイアー! お前は何してるんだ⁉︎」
「ばびっべびべぼぼぶび何って見ての通り—プハッ……振り落とされないように横になってるのよ」

メイアーは床に貼りつくよううつ伏せの状態から顔だけをを俺の方向に向けている。
しかも何故か微動だにしないのだ。

チクショウ! 何で俺だけこんな目に……こんな事なら叩かなければよかった......

事の始まりはこうだ。

俺とシスティーナとメイアーは三人王国騎士団の第一支部に訪れていた。
そこは支部といってもだいぶ落ち着いた雰囲気で市役所のように沢山の人が大量の書類を扱っている場所だった。

「メイアー……何で支部なんか寄ったんだ?」

俺は支部内の片隅にある待合室に置いてあった小さな木製の椅子に座るとメイアーにそう言った。

「決まってるじゃない……王都入国許可書よ」

王都入国許可書……?

「何だそれ……それが無いと何かなるのか?」
「君は何も知らないのね……いい? この許可書が無いとこの王都には入れないの!」

マジかよ……そんなものがあったなんて……

そして俺はこの世界に来た時のことを思い出した。

……あ、って事は俺、不法入国者じゃん。

そう言えばよくよく考えてみると、俺を王都まで運んでくれたあのおっさん、国を囲んでいる壁をくぐるまで警戒してたような気が……

「けど、私達はこれから旅に出る訳だからこれを更新しなきゃいけない訳。ホント、こんなだるいことしなくても私達は何にも悪いことしないのにね!」

メイアーはバツが悪そうにそんなことを言いながら俺に手のひらを見せて来た。

ん? 何だ?

俺は訳がわからないので取り敢えずメイアーの手の上に手を重ねる。
すると、違ったのか何やらイライラしてそうな目で俺を見てきた。

なんか分からないけど物凄くイライラしてるな……

「ユイト君は何がしたいのかな……?」
「だって何の手かの説明もなしにされると誰だってこうするだろ!」
「これよ! 私はこれを渡して欲しかったの!」

メイアーはそう言うと、懐から手帳型の紅色の小さな本を取り出した。
そこにはやはりと言うべきか異世界文字が書かれていた。

「何かの本か? それ……」

そう言うとシスティーナとメイアーは固まってしまった。

あれ……俺何か変なこと言った? 言ってないよな……

「嘘でしょ⁉︎ まさか……よね?」
「嘘⁉︎ ユイトさん……」

二人は驚いていたと思ったら突然震えだした。

あれっ? この反応って……まさか……よな?

するとシスティーナがこんな質問をしてきた。

「ユイトさん……今から出す質問は全て正直にお答え下さいね……」

な、何だよいきなり……

「この手帳に見覚えは…?」

システィーナは真剣な目でメイアーが持っているそれを指差す。

「ない。初めて見たよ……」
「なっ——」

メイアーはよほどショックだったのかもっていた手帳を手放してしまった。
俺は取り敢えずそれを拾ってメイアーに手渡す。

「ありがと……けどユイト君。君は一体どこで産まれたの? もし、アストロヘイムなら分からんでもないけど……」

どうせ、俺の故郷を言ったところで多分わかって貰えないだろうからな……少し濁しておこう。

「この世界の東の果てにある島国が俺の生まれ育った故郷だ」

そう説明すると、二人は胸を撫で下ろし、少しため息をついていた。

今の言葉に何で安心してるんだ? ここ以外の所だったらアウトじゃないの? え?

「安心しました……私はてっきりユイトさんが密入国者だとばかり……」
「ホント、もし仮にユイト君が無許可でこの国に入っていたらどうなっていたことか……」

何? 入っちゃったらどうなるの? 怖いから教えてよ……

「ちなみに……無許可で入った場合、どうなるんだ?」
「どうなるも何も……死刑。そんなの子供でも知ってるんだけど……」

マジかよ……早くこの国を抜け出さないと……

「じゃあ、私、提出するからね~」

こんなやり取りをしている中、メイアーはシスティーナの許可書を受け取ると係の若い男性に渡してしまった。

ちょ、おい! 俺、死んじゃうから!待ってくれぇぇぇ!

すると、係の人が不思議そうにこんな質問をしてきた。

「あの……一冊足りないようですが、この男性はお連れ様ではございませんか……?」

係の男性はチラチラ困った顔でこちらを見てくる。

普通はそうなりますよねぇ~

終わった……今度こそ終わったよ……ああ、ようやく胸踊る冒険の始まりだと思ったのに……モンスターどころか法律に殺されるなんて嫌だぁぁぁ!

「ええ、そうよ。けど彼はいいの。確か東の最果てにあるあの鎖国国家確か名前は……ああ、思い出した。大和国出身だから……」

俺が心の中で泣いていると何やら話が進んでいたみたいで、何故か支部内がざわついていた。

あれっ……どした?

気付くと俺は支部内のあらゆる人という人から視線を受けていた。

な、なんなの……この状況。

「責任者をお連れしますので少々お時間を……」

さっきまでメイアーと話していた係の男性は何やら責任者を連れてくると言っていたけど、何が始まるのか分からない俺は怖かった。が、しかし。そんな恐怖はあっという間に吹き飛んでしまう。

「なんだ? 私との面会なんてどこのお偉いさんが……」

なんと、出てきたのはいつもの鎧姿とは程遠い大人な格好のアルベルトだった。
その姿は、白色スーツそれでいて鍛え抜かれたその筋肉が強調されるように胸筋で二番目のボタンと三番目のボタンが今にも弾けそうになっている。

「お? どうしたんだユイト君たちこんな所で……」

アルベルトは俺たちがいる事を知るといつもの様なガサツな声で笑っている。

「あ、アルベルトさん……」
「で、所で私の面会客とは……?」

アルベルトは先ほどの係の男性に聞くと「え、えぇぇぇぇ⁉︎」と異常に驚いた。

「アルベルトさん……面会客というのはこの子達ですよ」


「それで何でしょう? 私を通してのお話です。何か重大な事があるのでは……」

俺たちは支部の奥の部屋に案内されそこで話を始めた。

俺たちが案内された部屋はやはりと言って良いのか、アルベルトの職務室であり、先程俺が座っていた椅子とは程遠いくらいに座り心地の良い大きなソファが二つ長方形型の脚の短いテーブルを挟んで置かれている。

アルベルトとの話役はこの国の仕組みや制度に詳しいメイアーがする事になった。

「お初にお目にかかります。アルベルト殿。私はメイアーと申します」

俺たちははアルベルトと対峙するように座ると真剣な話に入ったのだ。

「私たちはこれから南西に位置する、『グロスキア大陸』に向かおうと思っているのですが、彼、ユイト君は王都入国許可書を持って居ません。なので、発行をお願いしたいのです!」

メイアーがそう言うとアルベルトは真面目な顔つきで短く伸びた顎鬚を触りながら、

「一つ質問いいかな? 何故ユイト君は許可書を持って居ないのかな?」

と、何かを見定める様に聞いて来た。

「えっと……それは……」

俺が言葉に詰まっているとメイアーは空かさず俺の事情を説明してくれる。

実際は少し違うけど……

「実は彼は大和国の出身で許可書を作ろうにも作れなかったのです」
「確かに……今、大和国は鎖国国家として十年以上もの間一切の国や大陸に属しない独立国家となっている。それにアストロヘイムでは、大和国から逃れて来た大和人々を保護している。それなば、許可書を持って居なくても不思議ではないな……」

アルベルトは納得した様に頷くと立ち上がり沢山の書類が積まれている机の引き出しから羽ペンと二枚の書類を取り出し、俺の情報を言うように指示した。

「取り敢えず、名前・職業・後は出身地を答えてくれ」

俺は内心ホッとしている。なぜかって? そりゃあれだ。
俺は何度も言った通りこの世界の文字を読み書きできないからだ。

「分かりました……アダチ ユイト、職業は一応剣士をしています。えっと……血液型はAB型で——」
「出身地は大和国っと……そう言えば大和の言葉は伏せとかないとダメだったか……」

なんか俺の個人情報駄々漏れだなおい! まぁここにいる全員は信頼しているから別にいいんだけどな!

「では、ユイト君。最後にこの二枚の書類に母印を押してくれ!」

これを付けて押すだけで良いのか?

俺は渡された赤色の液体に親指を付け二枚の書類にそれぞれ押した。

「これで完了。では、早速行きましょうか!」

アルベルトは俺が母印を押した二枚の書類を持つといつものガサツな笑い声を上げながら俺たち三人の背中を押して外に出た。

いきなり何なんだ……? 行くってどこに?
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