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ただの都合のいい馬鹿
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「死んじゃうんすか?」
「いいや、休暇を楽しむんですよ」
ゆっくりと背中を撫でてくれて、母のような温もりに心が温かくなって安心した。その後も、腕の消毒と手当をして、ベッドに運び布団をかけて、寝かし付けてもくれた。この人はどうして俺なんかにここまでやってくれるのか不思議に思ったが、あまりにも怠かったのでその優しさにただ甘えた。
「何から何まで、ありがとうございます」
「いいえ、僕の自己満足ですけどね。貴方にはいい人間に思われたいんですよ」
と謙遜してベッド脇で嬉しそうにした。偽善というものも犯罪を犯さない限りは良しとしているので、単に彼の行為には好感しか持てなかった。
「どうしてですか?」
「僕の悪口を指摘されたから、ですかね。でも初めは、正直に言うと、訳分かんなかったです。だって、悪口を言われるくらい悪いことをしてるのはあの人なのに、何で僕が指摘されないといけないんだ。悪口も抑止力だろうって。でもそれからずっと考えてて、テンテンさんは誰のことも悪者にしたくないんだろうって思いました。当たってますか?僕が悪口を言っているとテンテンさんの中で、僕が悪者になっちゃうから指摘したんだろうし、三浦さんのことを庇うようにしていたのも、三浦さんを悪者にしたくなかったからと言えば辻褄が合います」
「俺の理想を押し付けてますね、申し訳ないです」
「いいえ、僕としては嬉しかったんですよ。普通に避ければいいだけなのに、嫌われる危険を犯してまで指摘するってことは、僕とまだ付き合う気があるってことじゃないですか。そこさえ改善すれば一緒にいたいってことじゃないですか。ちょっと自己陶酔的ですけど、そう思えちゃって、だから貴方にはいい人間に思われたいんです。それに僕自身も、少しはいい人間になりたくて」
本心のようなその言葉たちに感激した。俺の言葉にそこまで考えてくれてる、その気遣いも優しさも常軌を逸していて、夢の世界に迷い込んだみたいだ。
「そうですか。じゃあ、リュウくんも俺の悪いところはじゃんじゃん指摘して欲しいです。その、良ければ」
「えーっ、嫌わないですか?」
と俺の出方を窺ってくる。たぶん、俺の悪いところを指摘したいからだろう。
「嫌うわけないじゃないですか」
「じゃあ言いますけど、自分を貶しすぎ、傷つけすぎ、嫌いすぎですよ。他人の悪いところも飲み込むように自分の罪にして、その、自意識過剰とも思うんすけど、何で他人には優しくできて、自分には優しくできないんですか?」
不満をぶつけるように、説教をされるように、指摘された。でも、その内容は、俺のことを思っていてくれるから出てきた話題で、ぼんやりとしてしまう。
「さあ?わかんないですけど、傲慢になりたくないからですかね?」
甘えるように自分の不甲斐なさを笑いながら誤魔化した。頭の半分は寝ている。
「僕は最終的な自分の味方は自分だと思ってるんで、自分のことはとことん肯定して、甘やかしていいと思うんすよ。自分が自分のことを肯定しないで誰がするんすか。僕ですか?なんなら代わりにやりましょうか?」
と煽るように聞いてくる。
「ふふっ、それ面白いですね。やってくださいよ」
子供にでもなった気分で、布団の中で子守唄でも待っているみたいだ。
「冗談ですってばあ」
と決まりが悪そうに目が泳いだ。片手で首をさすり、そのまま頭をかいた。その一連の動作がむしゃくしゃしてるテンプレートみたいだ。
「俺は自己犠牲的に他人に利用されるだけ利用されて、偽りでも微かでも承認欲求を満たしてたいんです。死ねないのならば、せめてもの救いとして、俺の存在価値を存在意義を騙し騙しで見出していたいんですよ」
沈黙の間に理路整然とまではいかないが、自分の考えをまとめられるだけまとめて、それをそのまま伝えられるように努めた。
「何で貴方はそうなんですか?そんなの、ただの都合のいい馬鹿ですよ。頭良いんじゃないんすか?」
彼は何故か怒っていた。俺は彼を怒らせるようなことを言っているとは思っていなくて驚いた。
「え」
「その自己犠牲的な考えで、テンテンさんは生きてきて、それで満足してるってゆーなら話は別ですけど、死にたいんすよね?じゃあ、変えなきゃいかんじゃないっすかあ」
「でも」
死にたがりじゃない俺は俺じゃない。何を目標に生きればいいのかわからなくなる。純粋な恐怖だ。
「僕は、テンテンさんを尊敬してんですよ?それを例え本人自身だとしても、馬鹿にされたら傷付けられたら腹立ちます、当然です。勿論、誰かに馬鹿にされんのも傷付けられんのも許せません。何すかね、死にたがりな貴方が嫌いなわけじゃないっすけど、ふとした瞬間に死んでしまいそうで怖くなるんすよ」
ずっと彼はむしゃくしゃしてる。うまく言葉にできないみたいで、ぶつぶつと一人で考え込み始めた。
「俺が死んじゃうのは嫌ですか?」
彼の言葉で引っかかったところを蒸し返した。
「はあ?何言ってんすか。死なないでください、自分を大切にしてください、僕に頼ってください、この三つは人生の基本ですよ」
今度は得意げに言った。彼にこの言葉を言って欲しかったからかもしれない。何かが満たされた。涙が満ち溢れてしまって、目から零れる。
「ごめんなさい、じゃない、ありがとうございます」
「案外、テンテンさんは泣き虫なんすね」
と笑って慰められて、余計に涙が出てきて、泣き疲れて寝てしまった。
「いいや、休暇を楽しむんですよ」
ゆっくりと背中を撫でてくれて、母のような温もりに心が温かくなって安心した。その後も、腕の消毒と手当をして、ベッドに運び布団をかけて、寝かし付けてもくれた。この人はどうして俺なんかにここまでやってくれるのか不思議に思ったが、あまりにも怠かったのでその優しさにただ甘えた。
「何から何まで、ありがとうございます」
「いいえ、僕の自己満足ですけどね。貴方にはいい人間に思われたいんですよ」
と謙遜してベッド脇で嬉しそうにした。偽善というものも犯罪を犯さない限りは良しとしているので、単に彼の行為には好感しか持てなかった。
「どうしてですか?」
「僕の悪口を指摘されたから、ですかね。でも初めは、正直に言うと、訳分かんなかったです。だって、悪口を言われるくらい悪いことをしてるのはあの人なのに、何で僕が指摘されないといけないんだ。悪口も抑止力だろうって。でもそれからずっと考えてて、テンテンさんは誰のことも悪者にしたくないんだろうって思いました。当たってますか?僕が悪口を言っているとテンテンさんの中で、僕が悪者になっちゃうから指摘したんだろうし、三浦さんのことを庇うようにしていたのも、三浦さんを悪者にしたくなかったからと言えば辻褄が合います」
「俺の理想を押し付けてますね、申し訳ないです」
「いいえ、僕としては嬉しかったんですよ。普通に避ければいいだけなのに、嫌われる危険を犯してまで指摘するってことは、僕とまだ付き合う気があるってことじゃないですか。そこさえ改善すれば一緒にいたいってことじゃないですか。ちょっと自己陶酔的ですけど、そう思えちゃって、だから貴方にはいい人間に思われたいんです。それに僕自身も、少しはいい人間になりたくて」
本心のようなその言葉たちに感激した。俺の言葉にそこまで考えてくれてる、その気遣いも優しさも常軌を逸していて、夢の世界に迷い込んだみたいだ。
「そうですか。じゃあ、リュウくんも俺の悪いところはじゃんじゃん指摘して欲しいです。その、良ければ」
「えーっ、嫌わないですか?」
と俺の出方を窺ってくる。たぶん、俺の悪いところを指摘したいからだろう。
「嫌うわけないじゃないですか」
「じゃあ言いますけど、自分を貶しすぎ、傷つけすぎ、嫌いすぎですよ。他人の悪いところも飲み込むように自分の罪にして、その、自意識過剰とも思うんすけど、何で他人には優しくできて、自分には優しくできないんですか?」
不満をぶつけるように、説教をされるように、指摘された。でも、その内容は、俺のことを思っていてくれるから出てきた話題で、ぼんやりとしてしまう。
「さあ?わかんないですけど、傲慢になりたくないからですかね?」
甘えるように自分の不甲斐なさを笑いながら誤魔化した。頭の半分は寝ている。
「僕は最終的な自分の味方は自分だと思ってるんで、自分のことはとことん肯定して、甘やかしていいと思うんすよ。自分が自分のことを肯定しないで誰がするんすか。僕ですか?なんなら代わりにやりましょうか?」
と煽るように聞いてくる。
「ふふっ、それ面白いですね。やってくださいよ」
子供にでもなった気分で、布団の中で子守唄でも待っているみたいだ。
「冗談ですってばあ」
と決まりが悪そうに目が泳いだ。片手で首をさすり、そのまま頭をかいた。その一連の動作がむしゃくしゃしてるテンプレートみたいだ。
「俺は自己犠牲的に他人に利用されるだけ利用されて、偽りでも微かでも承認欲求を満たしてたいんです。死ねないのならば、せめてもの救いとして、俺の存在価値を存在意義を騙し騙しで見出していたいんですよ」
沈黙の間に理路整然とまではいかないが、自分の考えをまとめられるだけまとめて、それをそのまま伝えられるように努めた。
「何で貴方はそうなんですか?そんなの、ただの都合のいい馬鹿ですよ。頭良いんじゃないんすか?」
彼は何故か怒っていた。俺は彼を怒らせるようなことを言っているとは思っていなくて驚いた。
「え」
「その自己犠牲的な考えで、テンテンさんは生きてきて、それで満足してるってゆーなら話は別ですけど、死にたいんすよね?じゃあ、変えなきゃいかんじゃないっすかあ」
「でも」
死にたがりじゃない俺は俺じゃない。何を目標に生きればいいのかわからなくなる。純粋な恐怖だ。
「僕は、テンテンさんを尊敬してんですよ?それを例え本人自身だとしても、馬鹿にされたら傷付けられたら腹立ちます、当然です。勿論、誰かに馬鹿にされんのも傷付けられんのも許せません。何すかね、死にたがりな貴方が嫌いなわけじゃないっすけど、ふとした瞬間に死んでしまいそうで怖くなるんすよ」
ずっと彼はむしゃくしゃしてる。うまく言葉にできないみたいで、ぶつぶつと一人で考え込み始めた。
「俺が死んじゃうのは嫌ですか?」
彼の言葉で引っかかったところを蒸し返した。
「はあ?何言ってんすか。死なないでください、自分を大切にしてください、僕に頼ってください、この三つは人生の基本ですよ」
今度は得意げに言った。彼にこの言葉を言って欲しかったからかもしれない。何かが満たされた。涙が満ち溢れてしまって、目から零れる。
「ごめんなさい、じゃない、ありがとうございます」
「案外、テンテンさんは泣き虫なんすね」
と笑って慰められて、余計に涙が出てきて、泣き疲れて寝てしまった。
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