66 / 90
三章 自警団と虹の石
5話 不思議な石
しおりを挟む
王都まで戻ったニールはアロンと共に、目抜き通りから外れた場所にある鍛冶屋ゴルドンの工房へ向かった。
入口の扉を開けた途端、ニールの耳に響いたのは鉄を打つ音だった。ニールに背を向け、ゴルドンは金槌を手に作業をしていた。来客に振り向くことはしない。
「親方ー!」
アロンが先立って彼の元に駆け寄る。大切なクロスボウの恩人であるゴルドンに、アロンはすっかり懐いている。
「ゴルドンさん、こんにちは」
ニールとアロンの姿を見て、鍛冶師は手を止めた。だが口を開くことはない。鷲のような鋭い目が何の用かと問いかけているように見え、ニールは急いで懐を探った。
「ゴルドンさんに聞きたいことがあって……この石なんだけれど、何ていう名前の石か知りたいんだ」
小さな黒い石を手のひらに乗せゴルドンに示す。ゴルドンの目線が石の方へ向いた。数秒ほどそれを見つめたゴルドンの眉間に、かすかに皺が寄った。
「……どこで見つけた」
低い声でゴルドンが問う。彼の様子から想像するに、この石は危ないものなのだろうか――ニールは肩を縮めながら答えた。
「ええっと……俺たち、人を困らせる魔物を退治してまわってるんだけど、さっき倒したやつの体にこれが埋まってて。なんか変だなと思ったから、ゴルドンさんなら何か知ってるんじゃないかなって聞きに来たんだ」
ニールの答えにゴルドンは何か言葉を返すことも、頷くこともなく再び黙ってしまった。
アロンが彼の前掛けの裾をきゅっと握った。
「どうしたんだよ親方。親方も知らないようなすっげー石なのか!?」
「……虹石だ」
それはニールが聞いたことのない名前だった。
「それはどんな石なんだ?」
「虹石には生き死にがある。こいつは死んだ虹石だ。ただの石と何も変わらない」
「生きてる虹石っていうのは」
「命が惜しいならこれ以上は関わるな」
ゴルドンがきっぱりと言い放つ。怒鳴られた訳ではないがよく響く言葉に、ニールとアロンは揃って口をつぐんだ。
少し間をおいて、ゴルドンが呟くように言った。
「……危険だ」
彼はそれきりでまた黙り、手元の作業に取り掛かり始めた。これ以上ニールたちと話すつもりはないようだ。
「親方……」
「アロン、もう行こう。ゴルドンさん、ありがとう」
得たのはわずかな情報だけだったが、もうゴルドンを煩わせることはできない。虹石という名前を知ることができただけでも収穫だ。ニールはアロンを促し、工房を後にした。ゴルドンがニールたちを見ることはなかった。
***
戻ってきたニールは宿屋の二階、自分が寝泊まりしている部屋に自警団の全員を集めた。思い思いに床や椅子、寝台に座る仲間たちに向かい、魔物の体からとれた黒い石を見せる。
「誰か、『虹石』って聞いたことないか?」
「え、虹石!?」
驚きの声をあげたのはエンディだった。
「知ってるのか、エンディ?」
エンディは頷き、ニールの手の中にある虹石をまじまじと見た。
「僕も本物を見たのは初めて。とっても珍しい石で、偉い貴族や武勲をたてた騎士にだけ王様から与えられるんだ。父さんや兄さんはまだ持ってないよ」
それを聞いたゼレーナが怪訝そうな顔をした。
「そんなお偉方へのご褒美にしては、随分と地味な代物じゃないですか?」
「うーん、虹石ってその名前の通りたくさんの色があるらしいんだけど、確かに黒色っていうのは聞いたことないなぁ……」
ニールはゴルドンの言葉を思い出した。
「虹石には生き死にがあるってゴルドンさんは言ってた。これは死んだ虹石だって。だから黒いのかもしれないな」
「……結局、その虹石とやらが魔物の体に埋められていた理由については分からなかったのか」
部屋の壁にもたれて立つイオが言う。
「ああ。ゴルドンさんは『危険だから関わるな』って。何がどう危ないのかは教えてくれなかったんだけど」
「私たちはその鍛冶師に直接お会いしたことがないので確かなことは分かりかねますが、普段むだ口をたたかないような方がそのように仰るというならその忠告は無下にはできないのでは?」
ルメリオの言うことは最もだ。虹石について詳しく聞こうとしたニールへのゴルドンの態度は、どこか鬼気迫るものがあった。無闇にニールを脅かそうとしていたのではなく、彼は虹石の本質を知っている。
大きな力を持つものを体に宿す魔物が王都の周りに出没し始めている。それはニールたちだけでなく、戦う術を持たない民たちにとっても脅威だ。
「でも……あたしたちにとって危険だとしても、困ってる人たちのことは放っておけないよね。いつ危ない魔物に襲われるか分からないまま暮らすなんて……」
ニールの心をフランシエルが代弁した。そうだな、とニールは頷いた。
「皆、これから魔物を倒したときに石が体に埋まってないかも調べてくれ。魔物が出て来るのを止める手がかりが見つかるかもしれない」
「……あなたがこの程度で食い下がるとは思ってませんが、厄介なことにならなきゃいいんですけどね」
話に飽きて寝台の上で眠りこけるギーランを横目に、ゼレーナが呟いた。
***
イルバニア王国騎士団本部、その裏にある野外修練場に、勢い良く剣を振る一人の騎士の姿があった。
「やぁっ!」
テオドール・ロンバルトは修練用の剣を手に、木で出来た人型の的へ打ち込みを繰り返していた。
額にうっすらと汗が滲んでいる。それを袖で拭い、テオドールは腕まくりをした。呼吸を整えていると、佇む的がテオドールの目にとある人物の姿となり映る。青い髪を持つ、能天気な田舎者。そのくせテオドールを負かした――
「くそっ!」
目の前の的をニールに見立て、テオドールは剣を振りかざした。
絶対にニールに勝ってみせる、その決意は揺らいでいない。テオドールに負けた時の彼の顔を想像すれば、剣の握り過ぎで手の平の皮が剥けることも気にならない。
かつてテオドールに理不尽な仕打ちをしていた騎士団員たちは、とある貴族から「光栄な任務」を命じられたといいしばらく戻っていない。テオドールにとっては好都合だ。騎士として名を立てようなどと今更思わない。いま望むのは、ただニールを己の力で打ち負かすことだけ――
「無駄な力を使い過ぎです。長期戦に持ち込まれれば勝てませんよ」
突如として聞こえてきた声にテオドールは驚いて振り返った。立っていたのは剣術士隊の長、ベルモンドの副官を務める男、ヒューバートだ。
テオドールは慌てて姿勢を正し立礼した。
「ですが闘志は何よりも強い武器となります。よほど勝ちたい相手がいるようですね」
「あ、あの、副官殿はなぜこちらに?」
テオドールはおずおずと尋ねた。隊長のベルモンドの忠実な右腕が、一兵卒に時間を割く暇などないはずだ。
「ああ、失礼。では早速本題に」
ヒューバートの瞳がテオドールの顔をまっすぐ見た。彼は己の部下が相手でも丁寧な態度を崩さないが、纏う雰囲気には圧倒されるものがある。
「テオドール・ロンバルト、貴方に特別な仕事を頼みたいのです」
「特別な仕事……?」
ぴんと来ないまま、テオドールは副隊長の言葉を復唱した。これといって秀でたもののない見習いにできることなどたかが知れている。
「少々難しいことなのですが、貴方にしか頼めないのです」
「私にしかできないこと、ですか?」
「ベルモンド隊長より直々の指名です」
それを聞きテオドールは一層、身を引き締めた。何を頼まれるのかまるで予想がつかないが、ベルモンドの命であれば断ることなどできない。
「引き受けて頂けますか?」
「は、はい!」
テオドールの返事を聞き、ヒューバートは口元に微かに笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。詳しいことをお話ししますので着いてきてください」
ヒューバートがそう言って羽織っている緑色の外套を翻し歩き出す。テオドールは剣を鞘に収め、小走りでその後を追った。
入口の扉を開けた途端、ニールの耳に響いたのは鉄を打つ音だった。ニールに背を向け、ゴルドンは金槌を手に作業をしていた。来客に振り向くことはしない。
「親方ー!」
アロンが先立って彼の元に駆け寄る。大切なクロスボウの恩人であるゴルドンに、アロンはすっかり懐いている。
「ゴルドンさん、こんにちは」
ニールとアロンの姿を見て、鍛冶師は手を止めた。だが口を開くことはない。鷲のような鋭い目が何の用かと問いかけているように見え、ニールは急いで懐を探った。
「ゴルドンさんに聞きたいことがあって……この石なんだけれど、何ていう名前の石か知りたいんだ」
小さな黒い石を手のひらに乗せゴルドンに示す。ゴルドンの目線が石の方へ向いた。数秒ほどそれを見つめたゴルドンの眉間に、かすかに皺が寄った。
「……どこで見つけた」
低い声でゴルドンが問う。彼の様子から想像するに、この石は危ないものなのだろうか――ニールは肩を縮めながら答えた。
「ええっと……俺たち、人を困らせる魔物を退治してまわってるんだけど、さっき倒したやつの体にこれが埋まってて。なんか変だなと思ったから、ゴルドンさんなら何か知ってるんじゃないかなって聞きに来たんだ」
ニールの答えにゴルドンは何か言葉を返すことも、頷くこともなく再び黙ってしまった。
アロンが彼の前掛けの裾をきゅっと握った。
「どうしたんだよ親方。親方も知らないようなすっげー石なのか!?」
「……虹石だ」
それはニールが聞いたことのない名前だった。
「それはどんな石なんだ?」
「虹石には生き死にがある。こいつは死んだ虹石だ。ただの石と何も変わらない」
「生きてる虹石っていうのは」
「命が惜しいならこれ以上は関わるな」
ゴルドンがきっぱりと言い放つ。怒鳴られた訳ではないがよく響く言葉に、ニールとアロンは揃って口をつぐんだ。
少し間をおいて、ゴルドンが呟くように言った。
「……危険だ」
彼はそれきりでまた黙り、手元の作業に取り掛かり始めた。これ以上ニールたちと話すつもりはないようだ。
「親方……」
「アロン、もう行こう。ゴルドンさん、ありがとう」
得たのはわずかな情報だけだったが、もうゴルドンを煩わせることはできない。虹石という名前を知ることができただけでも収穫だ。ニールはアロンを促し、工房を後にした。ゴルドンがニールたちを見ることはなかった。
***
戻ってきたニールは宿屋の二階、自分が寝泊まりしている部屋に自警団の全員を集めた。思い思いに床や椅子、寝台に座る仲間たちに向かい、魔物の体からとれた黒い石を見せる。
「誰か、『虹石』って聞いたことないか?」
「え、虹石!?」
驚きの声をあげたのはエンディだった。
「知ってるのか、エンディ?」
エンディは頷き、ニールの手の中にある虹石をまじまじと見た。
「僕も本物を見たのは初めて。とっても珍しい石で、偉い貴族や武勲をたてた騎士にだけ王様から与えられるんだ。父さんや兄さんはまだ持ってないよ」
それを聞いたゼレーナが怪訝そうな顔をした。
「そんなお偉方へのご褒美にしては、随分と地味な代物じゃないですか?」
「うーん、虹石ってその名前の通りたくさんの色があるらしいんだけど、確かに黒色っていうのは聞いたことないなぁ……」
ニールはゴルドンの言葉を思い出した。
「虹石には生き死にがあるってゴルドンさんは言ってた。これは死んだ虹石だって。だから黒いのかもしれないな」
「……結局、その虹石とやらが魔物の体に埋められていた理由については分からなかったのか」
部屋の壁にもたれて立つイオが言う。
「ああ。ゴルドンさんは『危険だから関わるな』って。何がどう危ないのかは教えてくれなかったんだけど」
「私たちはその鍛冶師に直接お会いしたことがないので確かなことは分かりかねますが、普段むだ口をたたかないような方がそのように仰るというならその忠告は無下にはできないのでは?」
ルメリオの言うことは最もだ。虹石について詳しく聞こうとしたニールへのゴルドンの態度は、どこか鬼気迫るものがあった。無闇にニールを脅かそうとしていたのではなく、彼は虹石の本質を知っている。
大きな力を持つものを体に宿す魔物が王都の周りに出没し始めている。それはニールたちだけでなく、戦う術を持たない民たちにとっても脅威だ。
「でも……あたしたちにとって危険だとしても、困ってる人たちのことは放っておけないよね。いつ危ない魔物に襲われるか分からないまま暮らすなんて……」
ニールの心をフランシエルが代弁した。そうだな、とニールは頷いた。
「皆、これから魔物を倒したときに石が体に埋まってないかも調べてくれ。魔物が出て来るのを止める手がかりが見つかるかもしれない」
「……あなたがこの程度で食い下がるとは思ってませんが、厄介なことにならなきゃいいんですけどね」
話に飽きて寝台の上で眠りこけるギーランを横目に、ゼレーナが呟いた。
***
イルバニア王国騎士団本部、その裏にある野外修練場に、勢い良く剣を振る一人の騎士の姿があった。
「やぁっ!」
テオドール・ロンバルトは修練用の剣を手に、木で出来た人型の的へ打ち込みを繰り返していた。
額にうっすらと汗が滲んでいる。それを袖で拭い、テオドールは腕まくりをした。呼吸を整えていると、佇む的がテオドールの目にとある人物の姿となり映る。青い髪を持つ、能天気な田舎者。そのくせテオドールを負かした――
「くそっ!」
目の前の的をニールに見立て、テオドールは剣を振りかざした。
絶対にニールに勝ってみせる、その決意は揺らいでいない。テオドールに負けた時の彼の顔を想像すれば、剣の握り過ぎで手の平の皮が剥けることも気にならない。
かつてテオドールに理不尽な仕打ちをしていた騎士団員たちは、とある貴族から「光栄な任務」を命じられたといいしばらく戻っていない。テオドールにとっては好都合だ。騎士として名を立てようなどと今更思わない。いま望むのは、ただニールを己の力で打ち負かすことだけ――
「無駄な力を使い過ぎです。長期戦に持ち込まれれば勝てませんよ」
突如として聞こえてきた声にテオドールは驚いて振り返った。立っていたのは剣術士隊の長、ベルモンドの副官を務める男、ヒューバートだ。
テオドールは慌てて姿勢を正し立礼した。
「ですが闘志は何よりも強い武器となります。よほど勝ちたい相手がいるようですね」
「あ、あの、副官殿はなぜこちらに?」
テオドールはおずおずと尋ねた。隊長のベルモンドの忠実な右腕が、一兵卒に時間を割く暇などないはずだ。
「ああ、失礼。では早速本題に」
ヒューバートの瞳がテオドールの顔をまっすぐ見た。彼は己の部下が相手でも丁寧な態度を崩さないが、纏う雰囲気には圧倒されるものがある。
「テオドール・ロンバルト、貴方に特別な仕事を頼みたいのです」
「特別な仕事……?」
ぴんと来ないまま、テオドールは副隊長の言葉を復唱した。これといって秀でたもののない見習いにできることなどたかが知れている。
「少々難しいことなのですが、貴方にしか頼めないのです」
「私にしかできないこと、ですか?」
「ベルモンド隊長より直々の指名です」
それを聞きテオドールは一層、身を引き締めた。何を頼まれるのかまるで予想がつかないが、ベルモンドの命であれば断ることなどできない。
「引き受けて頂けますか?」
「は、はい!」
テオドールの返事を聞き、ヒューバートは口元に微かに笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。詳しいことをお話ししますので着いてきてください」
ヒューバートがそう言って羽織っている緑色の外套を翻し歩き出す。テオドールは剣を鞘に収め、小走りでその後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる