6 / 35
凍える心
しおりを挟む
collarを外したあの日から、やけにcollarをつけているsubの人が目に留まるようになった。
まだ未練が捨てきれないからなのか、無意識に目で追ってしまう。
抑制剤をもらいに病院に行ったとき医師からは、誰かにplayをしてもらえと言われた。抑制剤を服用し続けるとしてもずっと同じ強さのものでは効き目が無くなっていき、強いものに変えると副作用が強く出るようになるらしい。つまりは悪循環というわけだ。
本当は誰彼構わずplayするのなんて嫌だった。
でも、そうしないと最悪subは死んでしまう。
仕方なく、ネットで調べて一番上に出てきたプレイバーに通い始めた。ほんとはもうちょっと詳しく調べるべきなのだろうけど、達也と別れてしまった僕は自暴自棄になっていなのかもしれない。通い始めた、と言っても頭痛と副作用で限界になった時だけ嫌々そのプレイバーに足を運んだ。
―――――――――
達也と別れたあの日から一年たち、また冬がやってきた。なんでも今年は去年よりもっと寒くなるそうで、雪が降る日もあるらしい。実際に今日は朝から雪が降っていて、地面が見えないくらいには積もっていた。
プレイバーに通い、見ず知らずの他人にcommandを受けるのに抵抗があった僕は心身共に擦り切れていて、限界状態だった。それでも最後にplayしてもらってからすでに一か月が過ぎていて、そろそろ行かないと大学生活に支障が出てきてしまう。今日も友人に顔が真っ青だと言われてしまった。もちろんプレイバーには僕の望む通りのplayをしてくれる人などいなかった。暴力をふるう人や鞭で打ちつけてくる人、アフターケアがないのだって普通になっていく。Domの相手は僕を痛めつけるだけ痛めつけといて、自分が満足したらすぐにやめてしまう。
それでも僕のsubの本能は満たされてしまっていた。心とは反対に。
こうも寒いと行く気すらなくなってしまう。重いため息をつきながら、プレイバーに行く道をたどる。
「おにぃさ~ん、大丈夫~?」
甘ったるい声をかけられ、振り向くといかにもdomって感じのピアスをつけた男が立っていた。
「フラフラじゃ~ん。ちょっとそこのホテルで休憩しない?」
「、、、playしてくれるなら。」
今日はもうこの人でいいや。
部屋に入るとガチャリ、と音を立てて鍵が閉められる。
「おにいさん、何か苦手なplayとかある?」
男はそう聞いてきた。この人はバーにいるDomよりかは多少マシかもしれない。
「、、殴られたりするのは、苦手です。」
「そっか~!」
「、、、?」
男は何故か嬉しそうだった。その瞬間、男は手を大きく振りかざして、勢いよく僕の頬をぶった。
「、、、うっ」
痛みに耐えながら、立っていられなくてその場に座りこんだ。あまりの痛みに生理的ななみだが出てくる。
「俺、頑張ってるsubの姿を見るのが好きなんだよね~。」
男はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
(やばい、、かも、)
逃げなければ、瞬時にそう思った。考えるよりも先に足が動いていて、鍵を開けて外に出た。
後ろから男の叫ぶ声が聞こえる。ぜぇぜぇと息を切らして死ぬ気で走って、なんとか街中のホテル街を抜け路地裏に隠れた。
突然、ぐわんとめまいがして視界がゆがんだ。疲労がたまった体はバランスをとることも難しくて雪の上に倒れた。
(、、僕、ここでしぬのかなぁ、、)
すでに体温のない体に雪が染み込み、さらに冷え切っていく。手先が凍えていて、もう動かすことすら叶わない。ひゅーひゅーと浅い息を繰り返し視界が白く曇る。
「は、、はは、、」
頬の上をぬるい雫が伝った。もう笑うしかない。すべて自業自得なんだ。達也にplayをせがんだことも、subのくせに高望みしたのも、全部、全部、、、。
、、、、それでも、
「ぁいされたかった、、」
小さく小さくつぶやいた。雪にうずもれて、その声を聴くものなどもう誰一人としていない。
―――だんだん目の前が暗くなっていって、眠くもないのに襲ってくる睡魔と体中取り巻く倦怠感に耐えられず、僕は目を閉じた。
まだ未練が捨てきれないからなのか、無意識に目で追ってしまう。
抑制剤をもらいに病院に行ったとき医師からは、誰かにplayをしてもらえと言われた。抑制剤を服用し続けるとしてもずっと同じ強さのものでは効き目が無くなっていき、強いものに変えると副作用が強く出るようになるらしい。つまりは悪循環というわけだ。
本当は誰彼構わずplayするのなんて嫌だった。
でも、そうしないと最悪subは死んでしまう。
仕方なく、ネットで調べて一番上に出てきたプレイバーに通い始めた。ほんとはもうちょっと詳しく調べるべきなのだろうけど、達也と別れてしまった僕は自暴自棄になっていなのかもしれない。通い始めた、と言っても頭痛と副作用で限界になった時だけ嫌々そのプレイバーに足を運んだ。
―――――――――
達也と別れたあの日から一年たち、また冬がやってきた。なんでも今年は去年よりもっと寒くなるそうで、雪が降る日もあるらしい。実際に今日は朝から雪が降っていて、地面が見えないくらいには積もっていた。
プレイバーに通い、見ず知らずの他人にcommandを受けるのに抵抗があった僕は心身共に擦り切れていて、限界状態だった。それでも最後にplayしてもらってからすでに一か月が過ぎていて、そろそろ行かないと大学生活に支障が出てきてしまう。今日も友人に顔が真っ青だと言われてしまった。もちろんプレイバーには僕の望む通りのplayをしてくれる人などいなかった。暴力をふるう人や鞭で打ちつけてくる人、アフターケアがないのだって普通になっていく。Domの相手は僕を痛めつけるだけ痛めつけといて、自分が満足したらすぐにやめてしまう。
それでも僕のsubの本能は満たされてしまっていた。心とは反対に。
こうも寒いと行く気すらなくなってしまう。重いため息をつきながら、プレイバーに行く道をたどる。
「おにぃさ~ん、大丈夫~?」
甘ったるい声をかけられ、振り向くといかにもdomって感じのピアスをつけた男が立っていた。
「フラフラじゃ~ん。ちょっとそこのホテルで休憩しない?」
「、、、playしてくれるなら。」
今日はもうこの人でいいや。
部屋に入るとガチャリ、と音を立てて鍵が閉められる。
「おにいさん、何か苦手なplayとかある?」
男はそう聞いてきた。この人はバーにいるDomよりかは多少マシかもしれない。
「、、殴られたりするのは、苦手です。」
「そっか~!」
「、、、?」
男は何故か嬉しそうだった。その瞬間、男は手を大きく振りかざして、勢いよく僕の頬をぶった。
「、、、うっ」
痛みに耐えながら、立っていられなくてその場に座りこんだ。あまりの痛みに生理的ななみだが出てくる。
「俺、頑張ってるsubの姿を見るのが好きなんだよね~。」
男はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
(やばい、、かも、)
逃げなければ、瞬時にそう思った。考えるよりも先に足が動いていて、鍵を開けて外に出た。
後ろから男の叫ぶ声が聞こえる。ぜぇぜぇと息を切らして死ぬ気で走って、なんとか街中のホテル街を抜け路地裏に隠れた。
突然、ぐわんとめまいがして視界がゆがんだ。疲労がたまった体はバランスをとることも難しくて雪の上に倒れた。
(、、僕、ここでしぬのかなぁ、、)
すでに体温のない体に雪が染み込み、さらに冷え切っていく。手先が凍えていて、もう動かすことすら叶わない。ひゅーひゅーと浅い息を繰り返し視界が白く曇る。
「は、、はは、、」
頬の上をぬるい雫が伝った。もう笑うしかない。すべて自業自得なんだ。達也にplayをせがんだことも、subのくせに高望みしたのも、全部、全部、、、。
、、、、それでも、
「ぁいされたかった、、」
小さく小さくつぶやいた。雪にうずもれて、その声を聴くものなどもう誰一人としていない。
―――だんだん目の前が暗くなっていって、眠くもないのに襲ってくる睡魔と体中取り巻く倦怠感に耐えられず、僕は目を閉じた。
40
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる