ロマンチック・トラップ

るっぴ

文字の大きさ
5 / 35

あっけない別れ

しおりを挟む
あの日からずっと抑制剤を服用しながら過ごしている。colorをつけているためほかのdomにplayを頼もうにも頼めないし、そもそも達也以外のdomの友人なんていなかったから。


-----


冬休み中にも大学に行く機会が何度か会って、時々達也の姿を見ることがあった。

一一その隣にはいつも駅であった時に一緒にいた女の人がいた。
2人は楽しげに笑いあっていた。その姿ははたから見るとまるで恋人同士のようだ。



その日の夜、達也にメッセージを送った。。本当は声を聴くことももう怖くなってしまっていたが、playの欠乏症でどんどんひどくなっていく頭痛と、重いからだと、時々するめまいを抑制剤で抑え込むことは難しくなってきていた。
しかもひどく嫉妬深い自分には、今日見た二人の姿はちくちくと胸を突き刺し、見るだけでもつらいのに。

 (達也と、別れよう。)

いつまでもこうしているのはだめだ。もうずっと達也の笑顔を見ていない。 

 『話したいことがある。』

そう打って、緊張しながら送信ボタンを押す。
少し経った頃、家に来い、とそっけない返信が届いた。



次の日、大学が終わった僕は緊張しながら達也の家に向かった。ほんとはもう会わないほうがいいのかもしれない。けど、最後ぐらい、話をしてみたかった。もしかしたら前のようにやさしく接してくれて『別れたくない』なんて言ってくれるかもしれないから。。
それに、あんなことをされた後でも、僕はまだ達也のことを好きな気持ちを捨てきれていないんだ。

前に来た時と同じようにインターホンを鳴らす。すぐに達也は出てきて、

 「中入って」

と、目を合わさずそう言った。

 「で、話って何。」

達也はスマホを見ながら僕が話すのを待っている。まるで僕の話なんかどうでもいいみたい。

 「達也、、」

心臓がとても早く鳴っていて、いまにも飛び出しそうだ。
僕の目を見ようとしない達也をまっすぐ見て、ごくりと唾をのんだ。



 「僕と、別れてほしい。」


達也はスマホを見る手を止めて、ため息をついた。

なんと返されるかが怖くて、達也が口を開く姿がスローモーションのコマ送りのようにい見えた。表情から感情を読み取ることはできなかった。

 「わかった。」


 「、、え、、」

あまりにもあっけなく返事か帰ってきた。

 「二度と俺に連絡すんなよ。」




最後に話した言葉はそれだった。今まで過ごしてきた恋人同士としての日々はこんな短い会話で終わってしまったのだ。僕がかすかに抱いた期待は一瞬でバラバラに打ち砕かれた。

、、そこから家に駆るまでのことはあまり覚えていない。何が起きたのかわからなかった。寝るときに、もう二度とつけることのないcollarを棚にしまった。もう僕にやさしくしてくれる達也はどこにもいない。そもそも、playをされた時点でもう達也の関心は俺には向いていなかったのだろう。それだけは分かってしまった。

 「しんどいなぁ、、」

今度病院に行ったとき、抑制剤をもっと強いものに変えてもらおう。それぐらいしかこの痛みを隠せる方法はなかった。真正面からこの痛みを受け止めることなんて僕にはとてもできない。
もう、何も考えたくない。涙すら出ない。ふらふらと安定しないからだを動かしてベッドに倒れ目を閉じた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...