ロマンチック・トラップ

るっぴ

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あなたの香り 2

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 「ふぅ、、」

 課題がひと段落して、休憩がてら柊さんが買ってきていたシュークリームを冷蔵庫から取り出す。
 
 一緒に暮らし始めたとき、僕が甘いものが好きだと言ったらよくケーキやお菓子を買ってきてくれるようになって、申し訳ないと思いつつ、いつもほっぺたが落ちるほどおいしいから結局感謝しながら食べている。

 「、、おいしい」

 思わず言葉が漏れる。
 いつもは二人で一緒に食べる時間があって、感想を共有しながら食べていたのだが。今日はいないから、仕方ないよね。

 一人には広すぎる部屋で、ふと達也とパートナーだったころのことを思い出した。あんな別れ方をしたのに、あれから連絡は相変わらず一つもないままで、、思い出せばツキリと胸が痛んだ。最後こそひどかったが、付き合い始めたころはやさしく大切に扱ってくれた。今更思っても何も変わらないし、変わってほしくもない。

 達也と別れたことよりむしろ、別れてからのほうがひどい生活を送っていた気がする。頭痛やめまいを強い抑制剤で強制的に抑え、倒れる寸前にプレイバーに通う日々だった。今の満たされた生活からは考えられないような行動だ。


 「柊さん、、。」
 
 ぽつりと言葉をこぼす。誰も返事はしてくれない。いつも一緒にくっついていたせいか、一人になったことが無性に寂しくなって、柊さんの面影のあるものを探す。洗濯物も完全に終わってしまっていたのでこれでもかというほど何もない。あー、、こんなことになるんだったら柊さんが洗濯物をしてしまうのを止めればよかったなぁ。。
 なんて思っても、起きたときには部屋はピカピカだし、洗濯物は綺麗にたたんでいるし、朝食のいい匂いがするしで、完全に手持ち無沙汰な状態。


 、、、僕ってホントにここにいていいのかな、なんて気持ちが頭をよぎる。僕は好きなDomにはたくさん尽くしたいし、その分褒められたい。こうもすることがないと、ケージの中で過ごす飼い猫みたい。食べて、寝て、起きたらキスをもらって。満たされてるから全然いいんだけど。

 冬休み終わったらまたあの小さなぼろいアパートに戻るのだろう。その時僕は一人で暮らせるのだろうか、、、。


 その時、ガチャリ、と扉の開く音がした。柊さん、帰ってきたんだ!
 
 「蓮都ー、ただい、わっ!」

 駆け足で玄関に駆けつけ、その勢いのまま柊さんに抱き着いた。柊さんはすごくおどろいていたけど、すぐに抱きしめ返してくれて、やさしく頭を撫でられた。やっぱり柊さんの手で撫でられるのはすごくすごく心地いい、、。
 、、、でも、ひとつだけ、いつもと違うところがある。いつもの香りが失われているのだ。いつもの甘い香りはかき消されて、いろんなDomのフェロモンのにおいもうっすらする。それにそのほかのにおいもたくさん混じってる。
 
 柊さん自身はこんな香りのことなんてなんてことないかもしれないけど、僕にとってはとっても大切な香りだ。いつもの香りがにおわないことに少し悲しくなってぱっと柊さんの体から手を離した。

 「蓮都?」

 柊さんが不思議そうに僕の顔を覗き込む。僕、今どんな顔してるんだろ。少なくともいい意味に受け取られるような表情ではないだろう。

 「ごめんね、もっと早く帰ってくるつもりだったんだけど。、、何かあった?」

 「いえ、、なんでもないです。」
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