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来客 2柊side
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すやすやと寝息を立てる蓮都を静かにベッドに降ろし、部屋に暖房をつけて毛布を掛ける。もうこの動作を何度しただろう。蓮都はたまにこうして急に電池が切れたかのように眠ってしまうことがあった。だから、診療という口実で、先生に訪問してもらっていたのだ。
さらりとした黒い髪を撫でると、蓮都はふにゃりと笑って身をよじる。このままずっとこうして寝顔を眺めていないのだが、そういうわけにもいかない。部屋の電気を消して、先生のいるリビングへ行った。
「それで、、どうですか、蓮都の様子は。」
「そうだね、眠たくなるというのはきっと抑制剤の服用を急に少なくしたから反動が来ているだけだろうねぇ。普通の人ならそこまで反動はないんだけど、、、、蓮都くんは、指定の量より多く飲んでいたんだろう。」
「いつかは治るということでしょうか。」
「うんうん。ほかでもない高ランクの君のケアを受けているんだ。きっとすぐに症状は治まると思うよ。」
「そうですか、、。」
なにかの病気ではなさそうなことにほっと息をつく。
「蓮都くんには苦手なことがまだたくさんありそうだねぇ、、。君は、そのことも承知でパートナーになったのかな?」
先ほどまでのふわふわしたやさしい雰囲気は薄れ、真剣な声で先生は言った。まるでたしなめるようなその声色にすこし意外性を感じる。それもそうだろう、蓮都は『ちっちゃいころからずっと見てくれている先生なんだ!とってもいい人なんです!』といつもうれしそうに言っていた。
幼いころからずっと診てきていた子が、どんどんボロボロになっていく様子を、この先生はどんな気持ちでみてきたのだろう。だが、僕は蓮都のいままでの男とは違う。
「もちろんです。僕は蓮都を必ず捨てたりしませんから。」
そう、はっきりと言い切った。
―――――
その後もしばらく談笑を交えながら話していると、ずいぶん遅い時間になってしまっていた。
「じゃあ、そろそろぼくは病院にもどるよ。蓮都君を大切にね。」
福先生は腰を起こし、そう言い残して家を去っていった。
蓮都はもうそろそろ起きる時間帯だろうか。一度寝てから起きるまで2~3時間ほどかかる。起きた後はぼーっとしていて、いつもより多く甘えてくれるのだ。
蓮都が起きてから過ごす甘い時間を想像し、ほおが緩んだ。あの子は一緒にいるときでも、積極的に甘えてこようとはしない。ただ何か物欲しげにこちらをじっと見つめているだけで、僕がこっちにおいでというと嬉しそうに笑って駆け寄ってくる。
蓮都を寝かせた寝室に音をたてないように入ると、静かに息を立てて眠っているのが見える。
「、、、蓮都。」
ベッドの脇に座り、無垢な額に唇を落とす。
「ん、、。しゅ、う、さん、、」
「おはよ、蓮都。もう夕方だけどね。」
そう言って多少のglareを出しながら、頭を撫でてやる。蓮都はうれしそうに目を細め、あまいフェロモンの香りが部屋に漂った。
「ごめんね、、柊さん、、。また寝ちゃったみたいで、、。」
「そのことだけど、福先生がすぐに良くなるって言っていたよ。だから大丈夫、謝らなくていいんだよ。」
「そうなの、、?」
「ゆっくり直していこうね。」
まだぽやぽやして不安げな蓮都を抱きしめて背中をさする。
「あぁ、そうだ。蓮都、Sub性の欲求は大丈夫かな?今日の夜はplayをしようか。」
「ぇ、、あ」
なにやら蓮都の顔が赤くなったり青くなったりせわしない。どうしたのだろう。
「蓮都?」
「あ、、僕、先にお風呂入ってきます!」
本当にどうしてしまったのか、、。
僕の腕から逃げるように脱衣所に向かった蓮都の後姿を見つめ、僕は一人頭を悩ませていた。
さらりとした黒い髪を撫でると、蓮都はふにゃりと笑って身をよじる。このままずっとこうして寝顔を眺めていないのだが、そういうわけにもいかない。部屋の電気を消して、先生のいるリビングへ行った。
「それで、、どうですか、蓮都の様子は。」
「そうだね、眠たくなるというのはきっと抑制剤の服用を急に少なくしたから反動が来ているだけだろうねぇ。普通の人ならそこまで反動はないんだけど、、、、蓮都くんは、指定の量より多く飲んでいたんだろう。」
「いつかは治るということでしょうか。」
「うんうん。ほかでもない高ランクの君のケアを受けているんだ。きっとすぐに症状は治まると思うよ。」
「そうですか、、。」
なにかの病気ではなさそうなことにほっと息をつく。
「蓮都くんには苦手なことがまだたくさんありそうだねぇ、、。君は、そのことも承知でパートナーになったのかな?」
先ほどまでのふわふわしたやさしい雰囲気は薄れ、真剣な声で先生は言った。まるでたしなめるようなその声色にすこし意外性を感じる。それもそうだろう、蓮都は『ちっちゃいころからずっと見てくれている先生なんだ!とってもいい人なんです!』といつもうれしそうに言っていた。
幼いころからずっと診てきていた子が、どんどんボロボロになっていく様子を、この先生はどんな気持ちでみてきたのだろう。だが、僕は蓮都のいままでの男とは違う。
「もちろんです。僕は蓮都を必ず捨てたりしませんから。」
そう、はっきりと言い切った。
―――――
その後もしばらく談笑を交えながら話していると、ずいぶん遅い時間になってしまっていた。
「じゃあ、そろそろぼくは病院にもどるよ。蓮都君を大切にね。」
福先生は腰を起こし、そう言い残して家を去っていった。
蓮都はもうそろそろ起きる時間帯だろうか。一度寝てから起きるまで2~3時間ほどかかる。起きた後はぼーっとしていて、いつもより多く甘えてくれるのだ。
蓮都が起きてから過ごす甘い時間を想像し、ほおが緩んだ。あの子は一緒にいるときでも、積極的に甘えてこようとはしない。ただ何か物欲しげにこちらをじっと見つめているだけで、僕がこっちにおいでというと嬉しそうに笑って駆け寄ってくる。
蓮都を寝かせた寝室に音をたてないように入ると、静かに息を立てて眠っているのが見える。
「、、、蓮都。」
ベッドの脇に座り、無垢な額に唇を落とす。
「ん、、。しゅ、う、さん、、」
「おはよ、蓮都。もう夕方だけどね。」
そう言って多少のglareを出しながら、頭を撫でてやる。蓮都はうれしそうに目を細め、あまいフェロモンの香りが部屋に漂った。
「ごめんね、、柊さん、、。また寝ちゃったみたいで、、。」
「そのことだけど、福先生がすぐに良くなるって言っていたよ。だから大丈夫、謝らなくていいんだよ。」
「そうなの、、?」
「ゆっくり直していこうね。」
まだぽやぽやして不安げな蓮都を抱きしめて背中をさする。
「あぁ、そうだ。蓮都、Sub性の欲求は大丈夫かな?今日の夜はplayをしようか。」
「ぇ、、あ」
なにやら蓮都の顔が赤くなったり青くなったりせわしない。どうしたのだろう。
「蓮都?」
「あ、、僕、先にお風呂入ってきます!」
本当にどうしてしまったのか、、。
僕の腕から逃げるように脱衣所に向かった蓮都の後姿を見つめ、僕は一人頭を悩ませていた。
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