わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

言わずにいられない

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「何でクルミなんだよ」

　置かれたパンを見て舌打ちをすると、

「おいしいよ！これ！」

　マニエルは自分の前に置かれたその焼き立てのパンを持ってふわりと笑う。
　そんなマニエルにもイラッとして少しチキンを口にしてスープだけを飲んだ俺が立とうとすると、入ってきたリックが眉を顰めた。

「サライド様、ちゃんとお召し上がり下さい」

　メガネを上げながら窘めるように言われて余計にムカつきが抑えられない。

「食っただろーが！」
「サラダとオムレツとパンが手つかずです。どこか体調でも優れませんか？」

　勢いよくテーブルを叩くとガシャンと音が鳴って近くに居たメイドがビクッと肩を揺らす。

「サラダと卵は要らねぇっていっつも言ってんだろ！それに今日はクルミの気分じゃない！」

　立ち上がって吐き捨ててもリックは顔色一つ変えなかった。

「サライド様のそんな気分は聞いておりません。今日はこのレイモンド家を代表するお仕事でもあります。しっかり食べて頂きませんと」

　その余裕そうな言い方もムカつく。

「あ、サライド様、ミルクパンとクロワッサンなら用意できますが」
「こら、サライド様の我儘を簡単に聞くな」

　メイドがカゴにパンを入れて持ってくると、リックはすぐにそれを窘めた。

「は？我儘って何だ？」

　そのカゴからミルクパンを取って齧ると、リックは呆れたようにため息を吐く。

「そう言われるのがお嫌であればもう少し言動に気をつけて下さい」