わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

対面

2

　屋敷中、どこもかしこも完璧に整えられていて、飾られている花もどう見たっていつもより豪華だ。
　やたら赤が多いのは公爵の髪も赤みが掛かっているし、赤いサフィナの髪色に合わせてかもしれない。
　そうなると、俺の服も向こうの機嫌取りにしか思えなくてげんなりする。

「何て顔をしている？」

　父さんの声がして俺はパッと姿勢を正した。
　今日は無事に乗り越えなければいけない。
　リューラとか関係なく、リオッター公爵と夫人もいらっしゃるなら下手なことはできないから。

「見苦しい真似はするなよ」
「もちろんです」

　父さんにも釘を差されて素直に受け止める。
　縁談なんて自分の気持ちより家同士のご機嫌取りがメインなんだから俺がぶち壊すわけにはいかなかった。
　こうやって話が進んで、俺はサフィナと結婚して……ため息が出そうになるのを何とか堪らえる。

「そろそろかな？」

　父さんが歩き出して俺はその後に続いた。
　晴れ渡る空、小鳥が囀るのどかで穏やかな空気。
　その石畳を一台の車が走ってくる。
　降りてきたリオッター公爵と父さんが笑顔で挨拶を交わし、紹介されて俺も握手をした。

「こんな美しいご令嬢とは驚きました。ほら、サライド！見惚れていないでエスコートをしなさい」

　父さんに言われてサフィナと挨拶を交わす。

「今日が初対面ってことでいい？」
「ま、そーだよな」

　俺の腕に手を乗せたサフィナにコソッと言われて俺たちはゆっくり歩き出した。