わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

多忙の中で

10

　サフィナを屋敷に送ってやっと自分の屋敷に戻ってきた俺はそのまま部屋に入ってベッドに倒れ込む。

「失礼致します」

　しばらくして入ってきたリックにすぐにジャケットを脱がされたが動くのも億劫だった。

「お前、何で送るなんて」

　ベッドに転がったまま睨みつけてやると、リックはジャケットを掛けながらため息を吐く。

「あそこでサフィナ様を置いて帰るつもりでしたか？」

　振り返ったリックはかなり呆れたような顔をしていた。

「別にいいだろ」
「サフィナ様はご婚約者様ですよ？」

　拗ねつつ言うと、リックはテーブルに歩いて行って俺が投げたカバンから中身を出して並べる。
　仕方なく俺も起き上がって書類を分けて引き出しにしまった。

「婚約者って……まだ正式な婚約はしてないよな？」
「そんなに結婚は嫌ですか？」

　俺が外したタイピンとリボンタイを片付けようとしたリックが動きを止める。
　じっと見られて返答に困った。
　リックにこれを嫌と言っても特に何も変わりはしない。だが……

「旦那様はもう式の日取りも決めるとおっしゃっていませんでしたか？」
「……そうだな」

　とっさにリューラの顔が浮かんで目を閉じる。

「……サライド様、旦那様にきちんとお話してみた方がよろしいんじゃないですか？」

　リックの声は驚くほど優しい声だった。