わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい

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真摯に

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 サフィナは座り込んだまま顔を上げることはない。

「温かい紅茶はいかがですか?」

 気を遣ったロットルが声を掛けてきて、リューラが俺とサフィナにも注ぐように頼む。

「俺は何度も言ったな?お前にサラを譲るつもりはないと」

 全て注ぎ終わってロットルが下がるのを見てリューラは本題に触れた。
 ピクッと僅かに反応してやっとサフィナが顔を上げる。

「……そのことで王太后様とここ数日お話をさせて頂きました」
「それで?」
「それでも私はサライド様を諦めたくはなかった……でも……」

 こっちを見られて俺は姿勢を正してサフィナを見た。

「俺は“好き”とか“恋愛”とか、そんなものはずっと小説の中の話だと思ってきた。俺には関係ないし理解できないものだと」

 俺のありのままをサフィナは静かに聞いてくれる。

「それに、俺は縁談の話があるのなら素直に従うのみだと思っていた」
「そうして下さればよかったのに」

 思わず言葉が出たようなサフィナを見つめた。

「そもそも俺の悪評は相当だろう?」

 聞いてみるとサフィナはカップを持ち上げてゆっくりと口を付ける。

「そうね。でも、私は剣を振る姿も、頭の回転も早く堂々と交渉なさる姿も全てをこの目で見てサライド様ならと思ったけど?」

 サフィナの言葉はありがたい。
 でも、俺はもう自分の気持ちに気付いてしまった。
 サフィナに対するものとは明らかに違うこの温かい気持ちに。
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