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真摯に
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「すまない。俺は……リューラが好きだ」
頭を下げると、そっとカップを置く音がする。
「……それを言われてしまったら私は諦めるしかないじゃない」
涙を堪らえるようなその声を聞いて俺はそろりと顔を上げた。
少し上を向いて涙は流すまいとする姿。
一度さっき王太后様から渡されたハンカチで口元を覆ってからサフィナは笑みを見せた。
無理をしているのは痛いほどわかる。
でも、その笑顔は美しくて強いサフィナらしかった。
「陛下」
リューラに目を向けたサフィナが立ち上がる。
「皇太子だった頃から何でも言ったことは全て実行してきましたからね。素直に負けを認めて身を引きます」
深々と頭を下げると、リューラもイスから立ち上がった。
「なら、座れ」
「は?」
戸惑うサフィナの手を引いて優雅にエスコートする姿はさすがだ。
「朝食だけはちゃんと食べないか?」
そのままイスを引いて座らせる。
「用意してくれた者にも悪い」
見上げたサフィナに微笑んでリューラはこっちも見た。
「パンも肉も果物も……多くの者の努力によって今この目の前にある。それをムダにしたくない」
それを聞いて俺も頷く。
「出された者はしっかり食べて、その分働いて返すべきだよな?サフィナ、お前も患者にそう口にしているだろう?」
リューラも座って促すと、やっとサフィナもフォークを手にした。
「友人にならなれるか?」
「……まぁ、剣のお相手なら致しますよ」
肩を竦めて片眉を上げるサフィナはやはりカッコいい。
頭を下げると、そっとカップを置く音がする。
「……それを言われてしまったら私は諦めるしかないじゃない」
涙を堪らえるようなその声を聞いて俺はそろりと顔を上げた。
少し上を向いて涙は流すまいとする姿。
一度さっき王太后様から渡されたハンカチで口元を覆ってからサフィナは笑みを見せた。
無理をしているのは痛いほどわかる。
でも、その笑顔は美しくて強いサフィナらしかった。
「陛下」
リューラに目を向けたサフィナが立ち上がる。
「皇太子だった頃から何でも言ったことは全て実行してきましたからね。素直に負けを認めて身を引きます」
深々と頭を下げると、リューラもイスから立ち上がった。
「なら、座れ」
「は?」
戸惑うサフィナの手を引いて優雅にエスコートする姿はさすがだ。
「朝食だけはちゃんと食べないか?」
そのままイスを引いて座らせる。
「用意してくれた者にも悪い」
見上げたサフィナに微笑んでリューラはこっちも見た。
「パンも肉も果物も……多くの者の努力によって今この目の前にある。それをムダにしたくない」
それを聞いて俺も頷く。
「出された者はしっかり食べて、その分働いて返すべきだよな?サフィナ、お前も患者にそう口にしているだろう?」
リューラも座って促すと、やっとサフィナもフォークを手にした。
「友人にならなれるか?」
「……まぁ、剣のお相手なら致しますよ」
肩を竦めて片眉を上げるサフィナはやはりカッコいい。
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