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獣害から守るためか、窓が少なく薄暗い家。
外から見た感じは石でゴツゴツしていたが、中は木の温もりに溢れた温かみのある家だった。
狭いながらも使い込まれたキッチンはジョンとネロが共に作業をするには最適の場所らしい。
「……緊張する」
フーと息を吐いてジョンを見上げるネロにジョンがそっと微笑み掛ける。
「もうすぐ焼き上がるのを召し上がって頂くだけなのに?」
「でも……」
「大丈夫だよ。いい匂いだろ?」
二人だけのその空気が少し羨ましかった。
しばらくしてチンと音が鳴って、ジョンがそのオーブンを開く。
熱気と共に香りが強くなって長方形の型を取り出した。
「これは?」
エミリオと共に焼き上がったばかりのケーキを見つめる。
「漬けてあった山葡萄を使ったパウンドケーキです」
ネロが切り分けてくれると、それを乗せた皿を持ってジョンがキョロキョロと辺りを見回した。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ……その、フォークが……」
少し焦るようなその様子を見て、俺は皿に手を伸ばす。
「問題ない」
手でケーキを掴むのをエミリオは焦ったように目を見開いたが気にせずそのまま口にした。
「うん。美味いな」
「よかったですっ!!」
安心したように顔を綻ばせるネロの頭を撫でてジョンも緊張で上がっていた肩を下ろす。
「山葡萄も甘みが引き出されていてジュースとは違う魅力的なケーキだ」
切り分けてもらった一切れを食べ切って俺はジョンとネロを見た。
外から見た感じは石でゴツゴツしていたが、中は木の温もりに溢れた温かみのある家だった。
狭いながらも使い込まれたキッチンはジョンとネロが共に作業をするには最適の場所らしい。
「……緊張する」
フーと息を吐いてジョンを見上げるネロにジョンがそっと微笑み掛ける。
「もうすぐ焼き上がるのを召し上がって頂くだけなのに?」
「でも……」
「大丈夫だよ。いい匂いだろ?」
二人だけのその空気が少し羨ましかった。
しばらくしてチンと音が鳴って、ジョンがそのオーブンを開く。
熱気と共に香りが強くなって長方形の型を取り出した。
「これは?」
エミリオと共に焼き上がったばかりのケーキを見つめる。
「漬けてあった山葡萄を使ったパウンドケーキです」
ネロが切り分けてくれると、それを乗せた皿を持ってジョンがキョロキョロと辺りを見回した。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ……その、フォークが……」
少し焦るようなその様子を見て、俺は皿に手を伸ばす。
「問題ない」
手でケーキを掴むのをエミリオは焦ったように目を見開いたが気にせずそのまま口にした。
「うん。美味いな」
「よかったですっ!!」
安心したように顔を綻ばせるネロの頭を撫でてジョンも緊張で上がっていた肩を下ろす。
「山葡萄も甘みが引き出されていてジュースとは違う魅力的なケーキだ」
切り分けてもらった一切れを食べ切って俺はジョンとネロを見た。
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