わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい

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悲嘆

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 この家にも長年出入りをしていた医師の安否。
 マニエルはどんな思いであの部屋に居たのだろう?
 考えてもわからないし、俺はやはり覚えもない医師よりサフィナの方が気になってしまった。
 それに三日前……連絡があって襲撃の事実を知ってからリューラは休みなく動いているだろう。
 あいつのことだから疲れなど見せず誰よりも多くのことをこなしているはずだ。

「……情けね」

 俺には待つことしかできないのだろうか?
 イスに座ったまま机に伏せると、コツッと胸に当たるものがあって体を起こす。
 最近は暑くてジャケットを着ないことも多くて、裏地に隠さずタイにちゃんと着けているピン。
 リューラの目の色と同じこのサファイアはいつもリューラを感じられるようで身に着けるのが当たり前になっていた。
 いつだってリューラも着けている同じデザインのピン。
 あいつもこれを身に着けて俺を感じてくれているのだろうか?

「っし!」

 グッと伸びをして頬を叩く。
 あいつの誕生日が来るまでに……開発はある程度の目処をつけたい。
 持ってきたカバンから白い箱を取り出した。
 俺の誕生日に帰って来なかったことを拗ねられて渡されたピアス。
 ピンもピアスもだなんて照れくさくてこれはずっと部屋に置いて眺めているだけにしていたが……
 手に取って着け替えてみる。

「重くね?」

 宝石が大きいせいでかなりの存在感だ。
 サフィナのことは心配だが、リューラを感じていると少しホッと息が吐けた。
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