13 / 45
- 13 -
しおりを挟む
「らっしぇーっせー!」
私たちが店にはいると、威勢のいい声がかかった。
「お二人様、奥、どうぞー!」
夕食時で、店内はほぼ埋まっていた。私たちはカウンターの一番奥に座る。
「何?」
男は前を見たままぶっきらぼうに言った。
何? って何……あ、メニューの事?
男の視線の先には、メニュー表があった。
「えーと、とんこつ」
「おっちゃん、とんこつ二つと餃子!」
「あいよ!」
注文したあとで水を飲もうと男がマスクをはずした。
横顔は結構な男前だった。すっとした鼻筋に、きめの細かい肌。さっきはそれどころじゃなかったけど、綺麗な顔をしている。
同じ歳くらいかと思ったけど、肌艶いいところをみれば、案外と年下なのかも。
「……なんだよ?」
私がまじまじと見ていることに気づいたのか、男がこっちをむいた。
「あ、ごめん」
「さっきの」
ぼそりと呟かれて、視線だけその男性に向ける。
「さっきの?」
「パスケースに入ってたの、ラグバの会員証だろ? 好きなの?」
いきなり言われて、私は思わず飲んでいた水を吹きそうになった。
「しししってるの?」
うっかり大きな声を出してしまって、私はあわてて口もとを抑える。
「そりゃ、まあ。……そこそこ有名じゃん?」
「え、あ、うん」
私はファンクラブ入っちゃうくらいラグバ好きだけど、人気があるとはいえ、ラグバがメディアで活躍しているようなアイドルグループほどではないことはわかっている。もともとはネットから出たグループだし、まだ世間ではRAG-BAGの名前すら知らない人の方が多いだろう。
だから、こんな風に通りすがりの人がラグバのこと知っているとなると、それだけでちょっと嬉しくなっちゃう。
いやいや気を許してはいけない。
「会員番号からして、にわか?」
私は、むっとして横を向いた。
「好きになったのは最近だけど! でも、そんな風に言われたくない!」
「悪い」
男は、拍子抜けするくらいあっさりと謝った。素直な人なんだな。口が悪くて損することないのかしら。
私たちが店にはいると、威勢のいい声がかかった。
「お二人様、奥、どうぞー!」
夕食時で、店内はほぼ埋まっていた。私たちはカウンターの一番奥に座る。
「何?」
男は前を見たままぶっきらぼうに言った。
何? って何……あ、メニューの事?
男の視線の先には、メニュー表があった。
「えーと、とんこつ」
「おっちゃん、とんこつ二つと餃子!」
「あいよ!」
注文したあとで水を飲もうと男がマスクをはずした。
横顔は結構な男前だった。すっとした鼻筋に、きめの細かい肌。さっきはそれどころじゃなかったけど、綺麗な顔をしている。
同じ歳くらいかと思ったけど、肌艶いいところをみれば、案外と年下なのかも。
「……なんだよ?」
私がまじまじと見ていることに気づいたのか、男がこっちをむいた。
「あ、ごめん」
「さっきの」
ぼそりと呟かれて、視線だけその男性に向ける。
「さっきの?」
「パスケースに入ってたの、ラグバの会員証だろ? 好きなの?」
いきなり言われて、私は思わず飲んでいた水を吹きそうになった。
「しししってるの?」
うっかり大きな声を出してしまって、私はあわてて口もとを抑える。
「そりゃ、まあ。……そこそこ有名じゃん?」
「え、あ、うん」
私はファンクラブ入っちゃうくらいラグバ好きだけど、人気があるとはいえ、ラグバがメディアで活躍しているようなアイドルグループほどではないことはわかっている。もともとはネットから出たグループだし、まだ世間ではRAG-BAGの名前すら知らない人の方が多いだろう。
だから、こんな風に通りすがりの人がラグバのこと知っているとなると、それだけでちょっと嬉しくなっちゃう。
いやいや気を許してはいけない。
「会員番号からして、にわか?」
私は、むっとして横を向いた。
「好きになったのは最近だけど! でも、そんな風に言われたくない!」
「悪い」
男は、拍子抜けするくらいあっさりと謝った。素直な人なんだな。口が悪くて損することないのかしら。
3
あなたにおすすめの小説
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ベッドの隣は、昨日と違う人
月村 未来(つきむら みらい)
恋愛
朝目覚めたら、
隣に恋人じゃない男がいる──
そして、甘く囁いてきた夜とは、違う男になる。
こんな朝、何回目なんだろう。
瞬間でも優しくされると、
「大切にされてる」と勘違いしてしまう。
都合のいい関係だとわかっていても、
期待されると断れない。
これは、流されてしまう自分と、
ちゃんと立ち止まろうとする自分のあいだで揺れる、ひとりの女の子、みいな(25)の恋の話。
📖全年齢版恋愛小説です。
⏰毎日20:00に1話ずつ更新します。
しおり、いいね、お気に入り登録もよろしくお願いします。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる