推しがいるのはナイショです!

いずみ

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 改札に着くまでには、さっきの男たちに絡まれた通路を通らなければいけない。幸いあいつらの姿は見えないけど、もしまだあいつらがいたらまた絡まれていた可能性もある。
 それを、気にしてくれたのかな。
 ……なんだ。いい奴じゃない。

「あ」
 と、何やら思い出したらしい男が振り向いた。
「くおん」
「は?」
「俺の名前。久しく遠い、で久遠」
「久遠」

 なんとなく繰り返すと、久遠は軽く手を振って人ごみに消えていった。

  ☆

「……な、華」
「え」
 は、と気づけば、留美がまじまじと前の席から見つめてる。
 今日の昼食は、食堂でそれぞれ持参のお弁当を食べていた。いつの間にか、ちょっとぼうっとしていたみたい。

「ごめん、何?」
「だから、スマホ、なんか鳴ったよ?」
 言われて、伏せておいたスマホをひっくり返す。画面に示された名を見て、ぎょ、っとした。

『久遠』

 一週間前、迷った挙句、入力したあの男の名前だ。
 いつ連絡来るかと思ってびくびくしてたけど、なんの音沙汰もなく数日が過ぎて、今度とか言ってたのは冗談だったのかな、と思い始めていたところだった。

 本名なのかな。それか、私みたいに偽名?
 スマホを開けてみると、メールが来ていた。

『今夜6時半。駅前スタバ』
 ………
 えーと。
「なに、デートのお誘い?」
 留美が前からのぞきこむ。私は、あわててスマホを隠した。
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