推しがいるのはナイショです!

いずみ

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「先週からやってたやつ? お疲れ様。主任じゃなくて華を連れてくあたり、ホント頼りにされてるじゃん」
「うーん、実務は私だから、細かい話はきっと私の方がわかるんだよ」
「まあ、うちの主任、アレだからねえ」
 留美は言葉をにごすけれど、もう50歳に近いのにまだ主任ってあたり、言いたいことはだいたい見当はつく。

 あいまいに笑顔を返していると、テーブルの上に置きっぱなしのスマホが目に入った。
 返信……どうしよう。
 さっきからスマホを気にしている私に、留美が気づいた。

「もしかして、チケットとれたとか?」
 留美だけは、私がラグバにはまっていることを知っている。でも彼女は彼女で某女子演劇団の熱狂的なファンなので、ラグバに興味はないらしい。
「う。まだ」
 言われて思い出しちゃった。FC先行から始まって、あちこちでチケット申し込んだけど見事に全落ち。

 今年のコンサートも、アリーナでの開催だ。
 3年前にアリーナでコンサートが開催されるとなった時には人が入るのかと心配されたけど、ふたを開けてみればチケットは発売から10分で完売。去年、今年も同様にチケットの倍率はすごいことになってる。本当に、人気あるんだなあ。

「あとは、当日券が出ることを祈るのみ……」
「会えないアイドルより、目の前の課長よ?」
「本当に、課長はそんなんじゃないんだってば」
 私は、スマホを持ち上げる。

 うん。課長のことは憧れているけれど、タカヤも大事。
 私はスマホを手にとると、『了解』とだけ、返事を返した。

  ☆
 
「遅い」
 奥まって見つけにくいところに、久遠は座っていた。
 一度会っただけの人だから覚えているか不安だったけど、案外あっさりとみつけられた。

 今日はサングラスもマスクもしてないから、不機嫌そうな顔が良く見えた。
 その顔を見て、ふと、既視感を覚える。
 誰かに、似てる……ような気がする。うん? 誰に似ているんだろう。

「まだ10分前じゃない」
 すとん、と彼の前に座る。
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