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第一章 今、天使って言った?
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自分の連絡帳を開いて差し出しながら、莉子ちゃんが言った。
「美優はともかく、萌も保健室で寝てたの?」
「いいえ、私はつきそってただけよ」
「あ、えーと、ちょっと気分が悪かっただけだから、外で風にあたってた。もう元気だよ」
「二人で? いいなっ! それなら、私もいけばよかった」
ぐりぐりと私の頭をこぶしでなでる莉子ちゃんの顔は、それでも、ほ、としたように見えた。
「莉子ちゃん、それじゃさぼりじゃない」
「まぎれもなくさぼりよ。あんたたち二人もね」
私はちらりと萌ちゃんを見る。萌ちゃんもちらりとこっちをみて、少しだけ微笑んだ。
さっき聞いた話は莉子ちゃんにも内緒だ。
「なによ、その意味深な合図は」
目ざとくそれに気付いて、莉子ちゃんは頬をふくらませた。
「あ、あの、萌ちゃんをつきあわせちゃったから、悪かったかな、と思って」
私はあわてて書き終わった連絡帳をランドセルにしまって立ち上がった。萌ちゃんも、用が済んだ莉子ちゃんの連絡帳を、莉子ちゃんが背負ったままのランドセルに入れる。
「莉子ちゃんの髪、ふわふわしていいなあ。うらやましい」
ランドセルを閉じながら、萌ちゃんが莉子ちゃんの髪を両手でポンポンとはじく。莉子ちゃんの髪は、猫っ毛で少し栗色をしている。
「私は、萌や美優みたいな黒髪がよかったなあ。美優は、また伸ばすんでしょ?」
「うーん、たぶん。私は莉子ちゃんの髪の方が、かわいらしくてうらやましいよ」
私の髪は、黒くてまっすぐの普通の髪だ。夏にプールがあって切っちゃったから、今は肩につかないくらいの長さしかないけど、それはまではかなり長かった。萌ちゃんも、今の私と同じような長さだ。
……うん。私は、ちゃんと自分の意思で美容院行ったよね。大丈夫、覚えている。
「どっちもすてきよ。さ、帰りましょう」
もう教室には、私たちしか残っていなかった。
「そうだ。美優は結局なんだったの? 貧血?」
教室から出ながら、莉子ちゃんが振り向いた。
「え? うーん……なんだろう」
「単にお腹がすいただけとか」
莉子ちゃんは、意地悪っぽく、にひひと笑って言った。
「確かにおなかはすいているけど、違うよ」
「じゃ、寝不足だ。美優はまだ子供だからお昼寝が必要なんだよ」
「莉子ちゃん!」
笑って逃げる莉子ちゃんを追いかける。
あんなこと言ってるけど、莉子ちゃんは私たちの分までランドセル持ってきてくれようとしてくれた。ふふ。あまのじゃくって、きっと莉子ちゃんのことだ。
私たちは笑いながら、誰もいなくなった廊下を走り抜けた。
「美優はともかく、萌も保健室で寝てたの?」
「いいえ、私はつきそってただけよ」
「あ、えーと、ちょっと気分が悪かっただけだから、外で風にあたってた。もう元気だよ」
「二人で? いいなっ! それなら、私もいけばよかった」
ぐりぐりと私の頭をこぶしでなでる莉子ちゃんの顔は、それでも、ほ、としたように見えた。
「莉子ちゃん、それじゃさぼりじゃない」
「まぎれもなくさぼりよ。あんたたち二人もね」
私はちらりと萌ちゃんを見る。萌ちゃんもちらりとこっちをみて、少しだけ微笑んだ。
さっき聞いた話は莉子ちゃんにも内緒だ。
「なによ、その意味深な合図は」
目ざとくそれに気付いて、莉子ちゃんは頬をふくらませた。
「あ、あの、萌ちゃんをつきあわせちゃったから、悪かったかな、と思って」
私はあわてて書き終わった連絡帳をランドセルにしまって立ち上がった。萌ちゃんも、用が済んだ莉子ちゃんの連絡帳を、莉子ちゃんが背負ったままのランドセルに入れる。
「莉子ちゃんの髪、ふわふわしていいなあ。うらやましい」
ランドセルを閉じながら、萌ちゃんが莉子ちゃんの髪を両手でポンポンとはじく。莉子ちゃんの髪は、猫っ毛で少し栗色をしている。
「私は、萌や美優みたいな黒髪がよかったなあ。美優は、また伸ばすんでしょ?」
「うーん、たぶん。私は莉子ちゃんの髪の方が、かわいらしくてうらやましいよ」
私の髪は、黒くてまっすぐの普通の髪だ。夏にプールがあって切っちゃったから、今は肩につかないくらいの長さしかないけど、それはまではかなり長かった。萌ちゃんも、今の私と同じような長さだ。
……うん。私は、ちゃんと自分の意思で美容院行ったよね。大丈夫、覚えている。
「どっちもすてきよ。さ、帰りましょう」
もう教室には、私たちしか残っていなかった。
「そうだ。美優は結局なんだったの? 貧血?」
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「え? うーん……なんだろう」
「単にお腹がすいただけとか」
莉子ちゃんは、意地悪っぽく、にひひと笑って言った。
「確かにおなかはすいているけど、違うよ」
「じゃ、寝不足だ。美優はまだ子供だからお昼寝が必要なんだよ」
「莉子ちゃん!」
笑って逃げる莉子ちゃんを追いかける。
あんなこと言ってるけど、莉子ちゃんは私たちの分までランドセル持ってきてくれようとしてくれた。ふふ。あまのじゃくって、きっと莉子ちゃんのことだ。
私たちは笑いながら、誰もいなくなった廊下を走り抜けた。
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